夢幻水滸伝
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第六十八話 会談成功その十三
「それが出来てる、ええことや」
「兵は周辺地域の制圧と他勢力への威圧に使ってな」
「それで自分はな」
「日帰りで山賊征伐やな」
「そや、郡山からでも空を飛べな」
「すぐやな」
「もう下は桜井や」
目指す地域に入ったというのだ、飛んでまだものの十分も経っていないがそこまで着いたというのである。見れば水田が広がっていて家々もある。そしてその他には素麺を作っている工場も見られる。
「それで前にな」
「ああ、山が一杯あるな」
「あそこに三輪神社もあるわ」
「あれか?」
芥川は前に見たかなり大きな社らしきものを見て狐に問うた。
「あれが三輪大社か」
「いや、あれ天理教の教会やぞ」
「あんなでかい教会あるんか」
「そや、三輪大社はあっちや」
その教会から少し離れた場所に鳥居がありその先に社があった。
「あれが三輪大社や」
「そやったか」
「それでやが」
「ああ、あの大社の向こうの山やな」
「宇陀との境近くにあるわ」
山賊達が寝床としている山がというのだ。
「そこに行くからな」
「これからやな」
「そや、そやからな」
それでというのだ。
「あとほんの少しでや」
「そこに行くんやな」
「そうや、しかしな」
「しかし?」
「深い山が続くで」
桜井と大宇陀の境はというのだ。
「そやからな」
「その山の深さは要注意か」
「それはわかるな」
「ああ、日本の山は木々が多い」
それもかなりだ、日本の山は即ち森であると言っていい。その為そこを寝床とする者には守りやすく攻める者にとっては攻めにくくなっているのだ。
「地の利は完全にあっちにあるな」
「そやから勝ててもな」
「討ち漏らす危険があるな」
「討ち漏らすつもりはないやろ」
「賊は全員征伐や」
これが芥川の返答だった。
「太宰が決めた方や」
「悪辣な賊はな」
「全員討って魂まで消し去る」
「そうして二度と悪さをさせんことや」
「僕も同じ考えや」
芥川は強い声で狐に答えた。
「人から奪って殺してって奴等はな」
「生きる価値はないっていうんやな」
「生きてたらあかん連中や」
そうした輩共だというのだ。
「生きてたらそれだけ人が困るからな」
「そやから悪辣な賊共はやな」
「全員魂まで消し去る」
この世界は死んでも魂さえあれば寿命まで生きることが出来る、だがそれでもというのである。この辺り芥川も太宰も考えはしっかりしていた。
「それで地獄に送る」
「この世界で魂は消えてもな」
「この世界ではやな」
「魂は別の世界に行く」
「天国なり地獄なりにやな」
「善人は天国、極楽やな」
そうした世界に行くというのだ、天国や極楽は宗教によって異なる。北欧の神々を信仰していれば戦士はヴァルハラとなる。
「そこに行くがな」
「悪人は地獄やな」
「そこに行くわ」
そうなるというのだ。
「そやからこれから征伐する賊共もな」
「全員やな」
「地獄に送るんや」
この世の魂を全て消し去ってというのだ。
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