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永遠の謎

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269部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その十九


第十八話 遠く過ぎ去った過去その十九

「今このバイエルンにはおられないのだ」
「オーストリアにおられる」
「それでは」
 誰もだ。いないのではないのかというのだ。その話になってだ。
 彼等はだ。あらためて話すのだった。
「プロイセンのビスマルク殿も陛下には妙に好意的なようだ」
「止められることはしない」
「それがわからないな」
「全くだ」
「何故だ?」
 ビスマルクが王に対して好意的なことがだ。わからないというのだ。
「何故ビスマルク卿は陛下に好意的なのだ」
「水と油ではないのか」
「そうだ、まさに水と油だ」
「それ以外の何者でもないというのに」
「何故だ、一体」
「あそこまで好意的なのはだ」
「それがわからない」
 どうしてもだ。そうだというのだ。
「だが。それがだ」
「そうだな。陛下のあの挙動を助長させているのだが」
「ビスマルク卿のその陛下への態度がだ」
「それで何故だ」
「ああされているのだ」
「ドイツにとってよくないだろうに」
 ドイツ、ひいてはだ。
「プロイセンにとってな」
「あの方はプロイセンの統一を望まれている」
「陛下の挙動はそれにとってよくないだろうに」
「何故それで何もされない」
「理解できない」
「しかしだ」
 ここでだ。中心にいた者がだ。言うのだった。彼はこの場ではじめて口を開いた。
「ビスマルク卿の動きは止まらない」
「そうだと仰るのですね」
「伯爵だ」
「その通りだ」
 背が高くしっかりとした身体つきの者だった。黒髪を端整に後ろに撫で付けだ。その目は青く輝いている。まるでギリシア彫刻の様な顔立ちをしている。その顔は実に男性的である。服は絹のものだ。
 伯爵と呼ばれた彼はだ。周りの言葉に応えてさらに話す。
「我々はそれに対してどうするかだ」
「ドイツの中に入るべきですね」
「そうあるべきですね」
「歴史の流れはそこに向かっている」
 だからだというのだ。伯爵はだ。
「ドイツにだ」
「プロイセンにつく」
「それですね」
「そうだ。それが私の考えだ」
 そのギリシア彫刻を思わせる顔に不敵な笑みを浮かべてだった。彼は言うのであった。
「このホルンシュタインのな」
「ではホルンシュタイン伯爵」
「またプロイセンに行かれるのですね」
「そうされますね」
「そうする。機を見てだ」
 実際にだ。そうすると答える伯爵だった。
「またあの国に行こう」
「間も無くドイツの中のプロイセンになりますか」
「いや、この場合はどうなるのでしょうか」
「プロイセンを中心として統一されれば」
「その場合は」
「プロイセンはプロイセンだ」
 それは変わらないとだ。伯爵は周りに答えた。
「しかしだ」
「しかしですか」
「それでもですね」
「ドイツという国ができるのだ」
 そうなるというのだ。
「我々はその中に入る」
「そしてドイツ皇帝の下に集うのですか」
「プロイセン王がなるドイツ皇帝に」
「それに」
「ドイツは再び帝国になるのだ」
 伯爵の言葉に熱が入ってきていた。
 
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