八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百七十三話 涼しさその八
「というか親父十五歳の時にはなんだ」
「ああ、そうした店にも行ってたぜ」
「そんなこともしていたんだ」
「人生の勉強になったぜ」
携帯の向こうで明るく笑っているのがわかった、実に親父らしい。
「貴重なな」
「そこまでなんだ」
「女の子は人生の最高の教科書なんだよ」
「それとお酒もだよね」
「そうさ、その二つはな」
まさにという返事だった。
「人生の最高の教科書なんだよ」
「それで十八歳未満でも遊んで」
「今もなんだよ、いいぜイタリアのお姉ちゃん達も」
「イタリアだけじゃないよね」
親父は今は欧州全土を飛び回っていると聞いている、それならだった。
「もうあちこちでだよね」
「スペインのお姉ちゃんもよかったしな」
「他の国の人達もだよね」
「この前やっと欧州全部の国の女の子達成したぜ」
コンプリートと言うべきか、これも。
「やっとな」
「もう、って言いたいよ」
親父が欧州に行ってまだ数ヶ月なのにだ。
「全部の国達成したんだ」
「ああ、こっちに来てからな」
「俺の大空みたいだね」
「これで百三十国か」
「お付き合いした女の人の出身国は」
「それだけだな」
「もう記録だね」
何と言うかこうとしか言い様がなかった。
「どういう人生なんだよ」
「だからこれが俺の人生だ」
悪びれるどころか大笑いしての返事だった。
「お姉ちゃんと酒でな」
「遊んでだよね」
「太く長く暮らすのがな」
ここで短くと言わないのも親父ならではだ。
「俺の人生なんだよ」
「そういうことだね、まあ遊び過ぎて身体壊さない様にね」
「どっちも控えろっていうのか?それはな」
「だから。日本にいた時よりは寝てね」
「毎日最低三時間は寝てるぜ」
「それも少ないから」
僕的には相当にだ。
「ちゃんと寝てそしてね」
「長く遊べっていうんだな」
「そう、あと僕はそうした遊びはしないから」
このことは強く言った。
「お金はね、そう言われるとね」
「いいから貰っておけよ」
その出す本人の言葉だ。
「いいな」
「じゃあ貯金しておくよ」
「そうしろ、俺は貯金はしないがな」
遊んでちゃんと家にお金を入れてくれてだ、そうしているけれど親父にとって貯金は確かに縁がないことだ。
「御前には送るし残してやるからな」
「遺産?」
「まあそんなところだ、遺産は遠慮なく使えよ」
「縁起でもないこと言うね」
「人間正直明日の命もわからないからな」
親父は時々こんなことも言う、正直言ってその通りだからこの言葉は効かない訳にはいかないものだった。
「朝ベッドの中で死んでたってあるしな」
「昨日まで元気だったのに」
「そんな人もいるからな」
だからだというのだ。
「俺もな、御前にな」
「残しておいてくれるんだ」
「遊んでも報酬の高い仕事はしてきたんだ」
まさにブラックジャックみたいにだ、億単位の仕事を年に数回はしている。だから親父にはお金があるのだ。
ページ上へ戻る