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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百七十三話 涼しさその七

「そう思うとな」
「そうしないんだ」
「そうさ、というか俺なんてな」
「なんてって?」
「いや、何でもない」
 何か直感的にお袋のことを言うんじゃないかと思ったけれど言わなかった。それで話題を変えてきた。
「とにかくな、御前は畑中さんに任せてな」
「それでなんだ」
「仕送り位はしてやるさ」
「だからいいよ」
 お金のことはとだ、僕は親父にすぐに返した。
「充分にあるから」
「大家として給料貰ってるからか」
「総帥さんからね」
「だからか」
「そう、いいよ」
「まあそう言うな、親ならな」 
 その立場にあるならというのだ。
「最低なら子供が成人、大学を出るまではな」
「こうしたことはなんだ」
「するのが当然だからな」
 義務とさえ言わなかった。
「だからな」
「それでなんだ」
「ああ、気にするな」
 仕送りのことはというのだ。
「受け取っておけよ」
「そうしていいんだ」
「それで好きなことに使え、例えばな」
「例えば?」
「女の子のいる店に行くとかな」
 笑ってこうも言ってきた。
「そうしたのに使え」
「十八歳未満でも?」
「俺は十五で行ってたぞ」
「いや、それ犯罪だから」
 まさかと思うけれどこの親父なら有り得る、何しろ小学生でそうした経験があって中一で何人もの人と同時に付き合っていたという程だから。
「十五でとか」
「曹操さんは十四でお妾さんいたぞ」
「それ小説だよね」
「柴田練三郎さんのな」
「小説は物語だから」
 三国志でもそうだ、実は多くの小説の元ネタの演義と史実はかなり違う。貂蝉にしても史実では登場しない。
「実際の曹操さんと違うから」
「じゃあ柴田さんの曹操にしておくか」
 親父はそれならとこう訂正してきた。
「吉川英治さんの方は清々しいからな」
「ダークヒーローじゃなくてだね」
 曹操といえばこの感じだがだ。
「それでもね」
「ああ、だからな」
「柴練さんにするんだ」
「そっちにな、それでな」
「十四歳でなんだ」
「お妾さんがいたんだからな」
「親父の仕送りでなんだ」
 それでというのだ。
「そうしたお店に行くとか」
「してみたらどうだ」
「しないから」
 僕は即答で返した。
「絶対に」
「おいおい、そういう遊びをしないとな」
「十七でかな」
「人生の勉強にならないんだよ」
「どういった勉強なんだよ」
 僕は思わず言い返した。
「親父のそうした遊びはね」
「だからそれこそがな」
「人生の勉強だっていうんだ」
「人間遊んでどれだけなんだよ」
 親父独特の遊び人の理屈を出してきた、この破天荒さが同級生の男子生徒から人気があるのだと思うにしても息子としてはやれやれと思う時も多い。
「遊んでそこからな」
「学んでいくんだ」
「そう言うけれど」
「そうした遊びはしないか、御前は」
「親父と違うから」
 そこはだ、幾ら親子でも。 
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