レーヴァティン
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第七十四話 マルセイユからその十一
「あるでしょう」
「それを全部か」
「はい、統一するとなりますと」
「まとめないといけないか」
「はい」
その通りだとだ、夕子は久志に答えた。
「現実として」
「滅茶苦茶複雑だな」
「ですがそれがです」
「この島だってことだな」
「どういった国も地域も統一しようと思えば」
「そんな勢力を全部一つにしないといけないか」
「そうなのです」
「そうか、しかしな」
「それならばですね」
「結局それしかないからな」
統一しようと思うとなると、とだ。久志も観念したというかやるしかないという顔になって応えた。
「やるさ、その何千もの勢力をな」
「全てですね」
「ああ、統一してやるさ」
強い決意と共に述べたのだった。
「それならな」
「では」
「ああ、ロンドンに行くまでもパリに寄ってな」
そしてとだ、久志は今度は生ハムを食べつつ話した。
「そこでも情報収集をして」
「そしてですね」
「いよいよロンドンだ」
「そしてそのロンドンで」
「最後の一人、十二人目と会ってな」
そうしてというのだ。
「仲間にして」
「そうしてですね」
「ローマまで戻って」
「旗揚げですね」
「いよいよな、こっちのロンドンも霧の都かどうか」
久志は笑ってこうも言った。
「確かめてやるか」
「霧ね、詩的ではあるけれど」
清音はバードという職業から述べた、歌うだけでななく詩を吟じることも多いこの職業であることから。
「実際はいいものじゃないわね」
「視界は曇るし湿るしな」
「いいものじゃないわ」
「ああ、どうしてもな」
久志もこう言った。
「いいものじゃないさ、けれどな」
「そのこともなのね」
「見てやるか、あと幽霊もな」
「ロンドン塔の?」
「こっちのロンドンにあるかどうか知らないが」
それでもと言うのだった。
「そのこともな」
「観るのね」
「楽しみにして行くな」
久志は冗談半分本気半分でロンドン自体のことも話した、そうしてそのうえでその街に行くことを考えるのだった。それまでの道のことも。
第七十四話 完
2018・7・15
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