八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百七十二話 ワーウルフの話その三
「狂犬病になった人が正体ともね」
「言われているでござるか」
「ええ、この病気にね」
「それは危険でござるよ」
狂犬病は感染したら確実に死ぬ、非常に恐ろしい伝染病だ。マルヤムさんも名前を聞いただけで顔を顰めさせた。
「むしろでござる」
「そちらの方がよね」
「魔物よりも危険でござる」
むしろというのだ。
「それも遥かに」
「そうではないかとも言われているのよ」
「そうでござるか」
「あとフランスにね」
この国の話も出た。
「ジェヴォダンの野獣というのが出たけれど」
「ジェヴォダンのでござるか」
「沢山の人を食い殺した」
「狼でござるか」
「これが狼とはね」
到底という口調だった、友奈さんの今のそれは。
「思えないのよ」
「人を襲うからでござるか」
「狼とは思えない行動が多くて」
「それでは」
「この野獣の正体は人狼ではという説もあるわ」
「人が正体でござるか」
「狼憑きか遺伝かわからないけれど」
僕もこの野獣のことは知っているけれどフランスでは今も多くの学者さん達が研究しているという。
「人にしか思えない習性が多いのよ」
「では」
「狼男だったかも知れないわ」
「狂犬病の人ではなくでござるか」
「まさに魔物としてのね」
その類でのというのだ。
「さっき狼男の正体は諸説あると言ったけれど」
「狂犬病以外にでござるか」
「憑きものか遺伝かわからないけれど」
「本物もいたのでござるか」
「その可能性もあるの」
ジェヴォダンの野獣こそそうだったかも知れないというのだ。
「もっともこの野獣はお昼にも行動していたけれど」
「ううむ、恐ろしい話でござるな」
「狼は人を襲わないけれど」
それでもなのだ。
「狼男は襲うわね」
「それは狼ではないからでござるな」
「人、それも身体は人でもね」
「人の心をなくした」
「文字通りの魔物になっているからよ」
それでというのだ。
「人を襲うのよ」
「そうでござるか」
「うちの学園にも出るというけれど」
「ああ、怪談のうちにでござるな」
「そうだけれど」
それでもなのだ、うちの学園の狼男ひいては妖怪達は。
「人は襲わないわ」
「絶対にでござるな」
「この学園の妖怪達だから」
この学園は怪談話がこれでもかとかる、学園全体でそれこそ百はあるだろう。けれどそれでも妖怪や幽霊達が人を襲うという話はない。驚かせるだけだ。
「ないわ」
「確か夕方にでござるな」
「ドラキュラ伯爵やフランケンシュタイン達とね」
「お茶を飲んでいるでござるな」
「それだけよ」
これがこの学園の狼男の怪談話だ。
「平和でしょ」
「いいことにでござるな」
「ええ、この学園の狼男はね」
「そのジャヴォダンの野獣とは違うでござるな」
「全くね」
友奈さんはマルヤムさんに断言で返した。
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