ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
3章 穏やかな日々
24話 意外な人物からの呼び出し
前書き
どうも、白泉です!
さて、前回どうなるかわからないと言っていた今回ですが、原作がらみのオリジナルになりました!個人的に、これも結構好きな話です。
それでは早速、どうぞ!
リアとツカサが謹慎状態…いや、休暇になってから、ようやく一週間。
「ツカサ君、何体だった?」
モンスターがポップしなくなった途端リアが聞く。
「合計154体」
「え、嘘っ!負けた~!」
ツカサは飄々と言い、一方リアは剣を持ったままの手を上に上げる。単なる伸びなのか、降参の万歳だかわからない。
「やっぱり槍は広範囲攻撃のスキルが多くあるからいいよね」
「まぁな。その代わり、小回りが利かないけど」
愛槍を背につるしながら、ツカサが言う。
ここは最前線より一つ下のダンジョン。通常、ダンジョンやフィールドにはモンスターの一定のポップ数があらかじめ決められており、その数をすべて倒してしまうと、そのモンスターはポップされないという、所謂枯渇状態になる。しかし、その“一定数”というのはダンジョンごとで数が違うため、その数の格差は幅広い。そのため、ポップ数がかなり多いところはレベル上げ場所として、レベリングをするプレイヤーの人気スポットとなる。
リアとツカサがいるこのダンジョンもレベリングスポットのうちの一つなのだが、なにしろ最前線の一つ下の層のため、ハイレベルすぎて中層プレイヤーは寄り付かない。攻略組でさえ、まだ手を付けておらず、現在この場所にいるのはリアとツカサのみである。
「レベリングスポットを枯渇させたの初めてじゃない?」
「…言われてみればそうだな」
あたりに大量にいたはずの二メートル級の巨大な鼠たちの大群は、すべてポリゴン片となって消え、再度ポップすることはなくなっていた。つまり、枯渇したのだ。一定時間待っていれば再びポップは始まるのだが…
「快挙も達成したし、そろそろ帰るか?」
「そうだね。お腹すいた!」
聞き心地の良い、キン、という音を立ててリアは鞘にテンペストを収めた。すこし遅い朝から潜り、今はすでに昼を大きく過ぎていた。
「今日は手持ちないのか?」
料理スキルをすでにマスターさせているリアは、たいがいの場合、何かしらの料理をストレージに入れている。だが、今回リアは首を振った。
「作るのめんどくさかったから、何も持ってないよ。…ドロップしたねずみの肉ならあるけどね」
「そういや、こっちの世界の鼠の肉は食べたことがないな。…リアルと同じ味なら、まずくはないけど、率先しては食べたくないね」
「そう?私は結構好きだったけど」
「じゃあおひとりでどうぞ」
「ツカサ君も一緒に食べなきゃ嫌」
「断る」
「え~、わがままだな~」
「どっちがだよ」
ツカサが突っ込むと、リアはペロッと舌を出して笑う。
大量のモンスターを思う存分倒しまくったため、ご満悦のリアの機嫌はよく、足取りも軽い。ツカサの突込みがキレているのも同様の理由だ。基本的にこの二人は戦闘狂なのである。
「どこでお昼食べる?」
「プレイヤーメイドの店がいいな。調味料が入ってないNPCレストランの料理を食べる気にはもうならない」
「そうだね、そうしよう。…それにしても、調味料、随分プレイヤー間で広まったよね」
「まあ、食事はSAO内で数少ない娯楽だからな…調味料がない料理だなんて、料理じゃない。あのアルゲートそばなんて、二度と食べる気になれないね」
「醤油が入ってないからねぇ。…大方開発は終わったからよかったけど、今考えれば結構大変な作業だったなぁ…」
遠い目をするリア。ツカサは苦笑した。
「本当によくやったよな。俺だったら絶対できない」
SAOにあるNPCショップの店の料理は、正直あまりおいしくない。なぜなら、醤油や味噌、ケチャップ、マヨネーズ、ソースなどの調味料が初期設定ではないため、ひどく味気ないからだ。だが、半年ほど前から、SAO内にはウサギ印のついた様々な調味料が手ごろな値段で流通している。すでにそれらは、料理スキルを持つプレイヤーのすべての家に常備されているといっても過言ではない。
実はというと、元々それらのレシピはリアがすべて開発したものであり、ある人物にそのレシピを譲って大量生産してもらっているのだ。このことを知っているのは、リアとツカサ、そしてそのある人物周辺の人間のみで、リアのリアルの従妹であるキリトでさえも知らない。
「…でも、それがなくても、もうほとんど自殺者はいなくなったよね」
「ああ…そうだな。SAOが正式サービス開始されてから、もうすぐ二年たつ。もう、慣れたんだ、この世界に。…人間の適応力は、高いから」
ツカサの言葉には、どこか悲しげな響きがあった。リアにはわかっていた。ツカサにそうさせるわけが。
「そうだね」
だからこそ、リアは静かに相槌を打つだけだった。
―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
73層主街区“ラデッサー”。すべての古風なヨーロッパ調の建物は坂の斜面に建てられており、開拓されてきたSAOの街の中で一番高低差の激しい街でもある。こういう時、ここにある身体が実際のものではなく、バーチャルなことにひどく感謝する。でなければ、この街を歩くたびに筋肉痛になっているだろうから。
ただ、この街にレストランは多いのだが、解放されたばかりなのでプレイヤー経営のレストランはまだない。リアが頭の中でレストランを物色し始めたその時だった。
不意に、目の前に新着メッセージが届いたという通知。あと十歩歩けば転移門というところだったが、リアは足を止めた。
「あ、ごめんツカサ君、今メッセ来た」
「ん?ああ、わかった」
道のわきに植わっている樹に寄って、通行人の邪魔にならないようにしてから、リアはメッセージを開いた。
「…ん?」
なんと差出人は少々意外な人物…アスナだった。
あのボス攻略会議からすっかり柔らかくなったアスナは、随分リアに懐き、今ではかなり親しい仲である。人間関係、いつどこで変わるのかよくわからないものだ、なんて思いながら、リアはメッセージをタップして開いた。
From:Asuna
Main:
相談したいことがあるんだけど、今いいかな?
「……」
リアは頭をひねるが、一向にアスナが相談したそうな内容が出てこない。なにしろ、現在リアたちは気分的に今の状況を“休暇”としているが、他から見ればただの“謹慎”、しかも攻略組との接触も禁止されている。あの委員長気質のアスナがそれを破ってまで相談したいことというのが、リアには想像がつかなかった。
「…あ、俺もメッセ来た」
不意にツカサがそう言い、ウィンドウを操作する。そしてツカサはリアには見えない画面をたっぷり十秒は凝視した。その内容は非常に気になったが、
「…悪い、野暮用ができた」
「奇遇だね、私もだよ」
ツカサは例によってかなりの人見知りのため、仕事依頼の連絡はこない。そんなツカサとメッセージをやり取りし、しかもツカサを呼び出せるほどの人物はただ一人。リアの従妹であるキリトのみである。
それにしても、タイミングが良すぎやしないか。
そんなことをを一瞬考えたが、ま、いっか、とリアは首を振った。
「どれぐらい時間かかりそう?」
「うーん…あまり時間は予想できないな」
「同じく。じゃあ、終わり次第そのまま家に帰ろうかな」
「わかった。気をつけろよ」
「うん。ツカサ君もね」
リアはそう言うと、転移門の奥に消えるツカサの背中を追ってつぶやく。
「転移、アラガンド」
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一人の少女のもとに、さっきメッセージを送ったばかりの人物から返信が返ってきた。
From:Rear
Main:了解。今から36層、アラガンドの“踊り狂う雌鶏亭”で待ち合わせしよう。
後書き
はい、いかがでしたか?いかにも序章といった感じでしたね。ちなみに、現在の最前線は74層(グリームアイズのいる層)です。そのことを踏まえ、次の展開を予想していただけると嬉しいです!
では、次回もお楽しみ!
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