八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百七十話 ウチナンチューその十一
「そうした風だから」
「うちの部長さんも嫌いなのかな」
「そうだと思うよ」
「あの鹿は春日大社の神様の使いだったね」
「そうだよ」
ただあそこに野放しになっているんじゃなくてそうした立場でいるのだ、だから大事にもされてはいる。
「大事にされてもうね」
「偉そうなんだね」
「子供のおやつとかお弁当取るしね」
遠足に来ている子供達にもそうした態度だ。
「その辺りに落ちている雑誌とかも食べるし」
「鹿煎餅も食べるよね」
「とにかく何でも食べるよ」
お弁当の中にあるお肉までもだ。
「それこそね」
「食べさせてもらってそれなんだ」
「あそこの鹿達はね」
「酷いね」
「奈良県の人達が言うにはね」
八条荘では円香さんだ、円香さんも奈良の鹿は嫌いだ。
「奈良県の人で好きな人いないらしいよ」
「どんなのか知ってるから」
「それでみたいだよ」
「まあそうだろうね」
「大事にされ過ぎて人間慣れしてて」
「偉そうで」
「からかったらやり返すしで」
頭突きでだ、当然そこには角がある。
「もうね」
「からかうのは駄目だけれどね」
「それでもあの態度だからね」
奈良公園の中で我がもの顔で平然と居座っていてしかも人を見る目が完全に上から目線だからだ。何か家で甘やかしている猫みたいだ。
「もうね」
「奈良の人にはだね」
「好かれてないんだよ」
「ある意味凄いね」
「奈良県の象徴なのに?」
「そうした動物なのにね」
安座間君はここでこの生きものを出した。
「ヤンバルクイナとかアマミノクロウサギと違うんだね」
「ああ、そういう生きものとはね」
「全然違うよね」
「本当に人気ないね」
もうその人気のなさは折り紙付きだ。
「県民の人達には」
「あんなにメジャーで宣伝にもなってるのに」
「やっぱり態度って大事だよ」
「あんなに我がもの顔で振舞ってて何でも貪ってたら」
「そりゃ好かれないよ」
円香さんもあの鹿達を凶暴と言っている。
「あんなのだとね」
「イリオモテヤマネコよりもだね」
「草食なのにね」
「ヤマネコよりも凶暴って」
「凄いよ、あの鹿は」
「ある意味ね、そういえばね」
僕はここでこの話も思い出した。
「キョンっているよね、小さい鹿」
「ああ、八丈島の」
「漫画のギャグのネタにもなってる」
「ガキデカだった?」
「そう、あの漫画でね」
子供の頃八条家の出版社の人に貸してもらったことがあって読んだことがある、読むと凄い漫画だった。
「ネタであったけれど」
「そのキョンがどうかしたの?」
「何か千葉県を制圧しそうらしいよ」
「千葉県を?」
「そう、あそこをね」
「八丈島じゃなくて」
安座間君は首を傾げさせて言った。
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