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永遠の謎

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202部分:第十四話 ドイツの国の為にその二


第十四話 ドイツの国の為にその二

 パリをだ。整然とした街並みにもした。ロンドンは彼に多大な影響を与えた。
 その為彼自身はイギリスには悪感情はない。しかしなのだった。
「だがな」
「はい、フランスの為にはです」
「やはり。イギリスはですね」
「乗り越えなくてはならない」
「そういうことですね」
「そうだ。フランスは欧州の盟主にならなくてはならない」
 それは絶対だというのだった。
「何があってもな」
「だからですね」
「イギリスに専念したい」
「あの国を越える為に」
「フランスは何か」
 それも話すのだった。フランス自体のこともだ。
「欧州の盟主になるべき存在だな」
「はい、そうです」
「我がフランスこそはそうあるべきです」
「イギリスでもドイツでもなくです」
「我等こそが」
「叔父上はその為に働かれた」
 ナポレオン一世だ。コルシカに生まれそのうえで欧州を席巻した男だ。 
 皇帝は彼の甥にあたるのだ。叔父のその名声も利用して皇帝にまでなった。その叔父のことはだ。彼は常に念頭にあるのである。
「その叔父上の夢をだ」
「遂に実現しますか」
「いよいよですね」
「そうしますね」
「そうだ、だからイギリスを越える」
 また言う皇帝だった。
「叔父上ができなかったことを私はやるのだ」
「そしてその前にまずは」
「ドイツの脅威をなくしておく」
「今度の戦争を機に」
「そうしましょう」
「まずは様子を見る」
 長い戦争になる。それを確信しての言葉だった。
「そして時としてオーストリアに肩入れをしだ」
「時としてプロイセンにつく」
「そうしていってですね」
「戦いを煽りさらに長引かせ」
「ドイツそのものを疲弊させる」
「力をなくさせる」
 外交の基本である。戦争は多くの力を使う。それもまた前提になっていた。
 そしてその前提を元にだ。彼等は話していくのだった。
 フランスはこの戦いを喜んでいた。しかしであった。
 ベルリンではだ。ビスマルクがフランスのその話を耳にしてだ。嘲笑する様に言うのであった。
「確かにだ。普通に考えればだ」
「この戦争は長くなる」
「そうなるというのですね」
「普通に考えれば」
「普通に考えればだ」
 ビスマルクはこう部下達に話す。
「そうなるものだ」
「しかし普通ではないというのですね」
「この戦いは」
「そうだと」
「私は既に多くの手を打っている」
 ビスマルクは自身に満ちた声で述べた。
「だからこそだ」
「それで、なのですか」
「フランス皇帝の予想を裏切る」
「そうなりますか」
「他人の予想は何の為にあるのか」
 それも話すビスマルクだった。
「それは裏切る為にあるのだ」
「その虚を衝く」
「そういうことですね」
「孫子、清の昔の兵法家か」
 あえて軍人とは呼ばなかった。ビスマルクは清の歴史も知っているからだ。
 
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