永遠の謎
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201部分:第十四話 ドイツの国の為にその一
第十四話 ドイツの国の為にその一
第十四話 ドイツの国の為に
遂にだ。オーストリアとプロイセンの戦争がはじまった。
それを聞いてだ。ナポレオン三世はほくそ笑んでだ。皇帝の座からこう大臣達に言った。
「この戦争は数年かかる」
「はい、そうですね」
「あの両国が争えばです」
「それは避けられません」
大臣達もだ。笑みを浮かべながら話す。
「国力が拮抗しています」
「大国同士が戦えばです」
「自然とそうなりますな」
「それは避けられません」
「その通りだ」
フランス皇帝は笑みを浮かべたまままた言った。笑みでその独特な形にしている髭が普段とは違った形になっているのに気付かずにだ。
「そしてその間にだ」
「我々は勢力を伸ばしますか」
「若しくは。戦争に介入して」
「得られるものを得ますか」
「必要なことはだ」
フランス皇帝として以上にだ。己のことを考えて言う皇帝だった。
「我々がどうして利益を得るからだ」
「そうですな。近頃何かと五月蝿い輩もいます」
「あのイギリスにいるユダヤ人」
「あの男、何といいましたか」
「ユダヤ人だというのに神を信じぬというあの男」
「確か」
「マルクスといったか」
皇帝自らだ。この名前を出した。
「そういったな」
「そうでしたな、確か」
「カール=マルクスといいました」
「共産主義がどうとかいう」
「あの男です」
「山師であろう」
皇帝はこう見ていた。実際にそうしたところが多分にあると言ってもいい男だったのだろう。そうした意味で彼の見方は間違ってはいない。
「あの男はな」
「しかしその山師がです」
「我等に何かと言ってきます」
「そしてそれに知識人達が乗せられています」
「厄介なことにです」
「何とかしなければならん」
皇帝の言葉と顔が曇る。
「それについてもな」
「それと合わせてですね」
「この戦争を利用する」
「そうするとしましょう」
「是非共」
「少なくとも両国は疲弊する」
皇帝はこのことは絶対と断言した。
「オーストリアもプロイセンもな」
「かくしてドイツは混迷する」
「東に大きな脅威がなくなる」
「それだけでも有り難いことですし」
「フランスにとっては実にいいことです」
「オーストリアとプロイセンが弱まればだ」
どうなるか。それがフランスにとって問題であった。そしてだ。
皇帝はこのことはよくわかっていた。フランス皇帝としてだ。それを認識したうえでだ。今この場で己の大臣達に語るのであった。
「後は我等の相手はだ」
「イギリスです」
この国の名前が出た。言うまでもなくフランスの宿敵だ。
その国のことを言うとだ。皇帝の顔が曇った。そしてこう言うのだった。
「私自身はだ」
「ロンドンにおられましたね」
「そうですね」
「そうだ、確かにあの街はいい」
それはいいというのだ。彼はイギリスに亡命していたことがありその時はロンドンにいた。そこでその緑を見てなのである。
パリを再開発する時にその緑を取り入れたのだ。そのうえでだ。
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