八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百六十九話 沖縄とはその八
「保元物語と正史どっちが正しいの?」
「どちらが信憑性があるか、か」
「そう、どうなるの?」
「やはり正史だからな」
「正史が間違っている可能性があっても」
「正史の方が正しい可能性が高い」
正式な歴史書のこちらの方がというのだ。
「そして間違っているとするとだ」
「保元物語の方なの」
「軍記ものは物語だからな」
「書いた人の創作も入ってるの」
「平家物語の様にな、太平記にしてもその様だ」
室町時代勃興の時を書いたこちらの軍記ものもというのだ。
「足利兄弟の関係も史実だとだ」
「また違うの」
「高師直も入るがな」
この三人で室町幕府の初期は動いていた、そのうえ足利尊氏の弟の足利忠義と高師直が対立して高師直が殺されている。
「太平記と史実ではな」
「何か太平記の尊氏さんってあれよね」
日菜子さんが言うこの人はというと。
「忠義さんや師直さんが強いこと言って」
「それをすぐに収めてだな」
「穏健なことを言うけれど」
「それも違うかも知れない」
史実ではというのだ。
「実際違う時もあった様だ」
「そうなのね」
「それぞれの人物の死の場面もな」
「脚色入ってるのね」
「そうでもある様だ」
こう日菜子さんに話した。
「あの書にしても」
「ううん、太平記も史実とはなのね」
「また違うものだ」
「成程ね」
「歴史資料は何かを検証してだ」
資料を鵜呑みにするのではなく、というのだ。
「そうしてだ」
「読んでいくべきなのね」
「その様だ、そして私は為朝公はな」
「琉球でなのね」
「王家の始祖になったと思っている」
「じゃあ琉球王家の人達は源氏の末裔なのね」
「そうなるな」
その通りだとだ、井上さんも答えた。
「為朝公の末裔ならな」
「そうなるのね」
「源為義公の血は完全に絶えたがな」
「頼朝さんとか義仲さんの血筋はね」
「あまりにも身内で殺し合いを続け過ぎてだ」
「義経さんも死んだし」
はっきり言えば殺されている、兄の頼朝さんに。こうしたことがあって頼朝さんの不人気は日本の歴史上屈指のものになっている。
「結果ね」
「為義公から五代でだ」
「一人もいなくなったのね」
「幕府に将軍もいなくなった」
最後の実朝さんが甥の公暁に殺されてだ。
「呪われたかの様にな」
「本当にそんな感じで殺し合ってたわよね」
「史実にもある通りだ」
平家物語だけでなくだ。
「実に血生臭い家だった」
「あそこはまた特別よね」
「その為源氏の直系は絶えているが」
「若し為朝さんが生きていたら」
「残っているということになる」
「今もね」
「そうだ、そう思うとロマンもあるな」
ここでだ、井上さんは微笑んでこうも言った。
「そうだな」
「ええ、完全に絶えたと思っていたらね」
「残っているならな、そもそも当時の琉球は本土とは然程縁がなかったな」
「ええ、お互い殆ど知ってもなかったわね」
「それで為朝公の話が入っているなぞな」
後世言い出したにしてもだ。
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