八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百六十八話 ノーヒットノーランその七
「秋の空は違うよ」
「高くて濃くて澄んだ」
「そんな風ね、じゃあね」
「うん、そのお空を見ながら」
「今から食べましょう」
お弁当を屋上でだ。
「そうしましょう」
「それじゃあね」
こうしてだった、僕達は屋上に出てそこで三人でお弁当箱を開いた。今日のお弁当は豚カツ弁当だった。
そのお弁当を食べつつだ、僕は二人に話した。
「今日の豚カツも美味しいね」
「ええ、流石小野さんよね」
香織さんは僕の今の言葉に真剣な顔で頷いて答えた。
「そうよね」
「どんなお料理も美味しく」
「まさに天才よ」
「本当にね」
「小野さんは確かに凄いね」
僕もこう二人に答えた。
「どんなお料理もだからね」
「ジャンルにこだわらずね」
「完璧に美味しくだから」
「うん、ただ小野さんが言われるには」
僕は二人に僕が小野さんに直接言われたことを話した。
「お寿司は握れないらしいよ」
「ああ、お寿司はね」
「あれはね」
「仕方ないでしょ」
「専門職のお話だから」
「それで握れないって言っておられたよ」
本当にお寿司は駄目だと言われていた。
「あれは独特の世界だって」
「それは当然でしょ」
「ことお寿司については」
「お茶、御飯、握りでそれぞれ三年かかるって」
「そう言われてるじゃない」
「そうしたのだからね」
本当にそれだけ専門の修行が必要で修業してからもまさにお寿司だけで生きていかない様なものだからだ。
「お寿司は無理だって言ってたよ」
「それはわかるわよ」
「お寿司は別よ」
二人もこう言って僕の話に頷いた。
「あれだけはね」
「全く別のお料理よ」
「そうだよね、まあ一族にはね」
「八条家にはなのね」
「義和の一族では」
「専属の寿司職人さん雇ってる人もおられるよ」
それもかなりの高給でだ。
「寿司好きが高じてね」
「何かそれって」
僕の今の話を聞いてだ、詩織さんは豚カツでお弁当を食べながらそのうえで首を傾げさせてこんなことを言った。
「北の将軍様みたいね」
「前の将軍様よね」
「あの人もそうだったじゃない」
「専属の寿司職人雇って」
「それでお寿司楽しんでたんでしょ」
「それはね」
僕も否定しないで詩織さんに答えた。
「実際にそうだったみたいだね」
「それで思ったけれど」
「そこは同じだけれど」
「何かあるの?」
「あの将軍様は国民皆が餓えている中でそれだよ」
今も酷いものだ、餓死者が百万出たとかいう話は本当だろうか。
「自分一人だけね」
「寿司職人を雇って」
「お寿司を楽しんでるじゃない」
「それと比べてその人は」
「そんなことないから」
「日本じゃね」
「それにお金もあって色々な人にも振舞ってくれるし」
その人が握ってくれたお寿司をだ、色々な人との商談の時にも握ってもらってそのうえで話をしている。
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