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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第三十三話  死の預言

 
前書き
ここからは完全オリジナル展開。

死の予言について語る椎堂ツムグ。 

 
 地球防衛軍の基地の復旧には時間を要した。
 もっとも被害が大きいのはM機関であった。
 仕方がない。カヲルに操られ、初めに攻撃を加えたのがそこだったのだから。
 生き残ったミュータント兵士達や、兵士ではないミュータント達は肩身が狭かった。
 彼らの意思でないのは皆分かっている、だが攻撃を加えてしまった事実は変わらない。
 普通の人間達と、ミュータント達との間に空いてしまった溝を埋めるのも時間がかかるだろう。普通ならば。
「志水さん…、うう…。」
「碇君…。」
 運ばれていく棺桶を前に、シンジは涙し、隣にいるレイが慰める。
 他の生き残ったM機関の食堂の職員達も、志水の死を嘆いた。
 志水だけじゃなく沢山の者達が死んだ。
 遺体があるだけまだマシな方と言える者達と、いまだに遺体すら出てこない発見されていない者達も多い。志水など原形も残らず潰されててしまった。遺体を回収するというより、壁を剥がしてそこから遺体を剥がす作業と言った方がいいかもしれない。当然だが棺はキャンノットオープン。
 嘆きの声はあちらこちらで上がっていた。
 だがいつまでも嘆くことはできない。
 戦いはまだ終わっていないのだ。
 ゴジラは待ってくれない。
 かつてゴジラが南極に封印される前、ゴジラ以外の怪獣がいた頃、嘆く暇などないほどに人が死んだ。
 ゴジラが封印されて被害がかなり減ったものの、それでも死ぬ人間は死んだ。
 嘆き暇さえない激動の時代は、突如として起こったセカンドインパクトによって数え切れない犠牲と破壊によって終わった。
 怪獣達との戦いの時代が終わったことは、セカンドインパクトによる環境の激変があってもそれでも短い平穏を人々にもたらした。使徒が現れ、ゴジラが復活するまでは……。
 空いてしまった溝は嫌でも埋められるだろう。いや、あえて無視するしかないだろう。かつてすべての人種があらゆる壁を越えて手を手を取り合い、地球防衛軍を結成した時のように。
 皮肉にも共通の敵という存在がバラバラだった人間の壁を打ち破ったのである。

「てめーは、知ってて、傍観してたってわけか。」
「……他の人から見ればそーなるね。」
 基地の復旧作業を眺めながら、ゴードンとツムグが会話をしていた。
「どーやっても死は回避できなかったよ。教えなかったっけ?」
「知ってたさ。だが…。」
「納得はできないよね。目の前に“答え”があるって分かってるとなおのことさぁ。預言ってそう言う意味じゃホント損だよ。」
「そうだな。だがおまえの預言は、まだ必要だ。」
「そう、まだ終わってない。まだ先がある。」
「で? 何が見えている?」
「……もう分からないよ。」
「はっ?」
「最後の使徒が死んじゃった。ここから先の世界がどうなるか、さっぱり。グチャグチャだ。」
「奴で最後だったのか?」
「一応ね。あと残ってるのなんて、リリスぐらいでしょ?」
「アダムは、どうした?」
「大人しくしててくれてるよ。」
「…やっぱてめーの中か。」
「あっ、ばれた?」
 テヘッと笑うツムグに、ゴードンは、溜息を吐いた。
「隠すつったら、そこ以外に考えられねーよ。」
「S2機関は魅力的だからね。まだ欲しがってる人は多い。そもそもセカンドインパクトだってS2機関を手に入れようとしてなったことだし。」
「それが元凶か。それで世界が一回滅びかけちゃせわねーよ。」
「リリスは結局どうするの? 使徒はもうこないし。あれにも一応S2機関あるよ。」
「波川の奴に言え。」
「分かってる。エヴァンゲリオンだって残ってるし…、っ。」
「どーした? なにが視えた?」
「まだたくさん人が死にそうだ。」
「それはいつ頃だ?」
「遠からず、近からずかな。」
「はっきりさせろ。」
「はっきりさせても回避はできないよ?」
「厄介なものだな、預言ってのは。便利なだけに。」
「特に死についてはね。」
 ツムグは、ヘラッと笑った。
「ところでおまえ、何か隠してるんじゃないのか?」
「なにを?」
「何が目的だ?」
「……。」
「てめーの事情なんざどーでもいい。だがな周りに迷惑をかけてまですることか。」
「迷惑を掛けなきゃならいなほどのことなんだよ。俺にとっては。」
 ツムグは、笑みを消してそう吐き捨てるように言った。
「そーでもしなきゃ俺は……。」
 ツムグは、言いかけてやめた。
「自分の意思でも、そうじゃなくても死ねる奴ら全部が羨ましいよ。」
「それが答えか。」
「そうだよ。悪いけど、そのためなら何でもしようと思ってるからね。」
「ならこっちは抗うまでだ。」
「それでこそ意思を持つ者の強さだよ。」
「この野郎…。」
「俺は所詮はバケモノだからさ。」
 ツムグは笑う。
 ゴードンは、その横顔を見て、何も言わなかった。
 死ぬことができぬ者の気持ちなど、その者にしか分からぬことだからだ。





***





 患者を収容した訓練場のテントでは。
「尾崎……。なぜ、殺さなかった?」
 体のあちこちに包帯を巻かれて寝かされている風間が弱い声で言った。
「…仲間だからだ。」
 尾崎はそう答えた。
「他の連中は…?」
「……すまない。」
 助けられた者もいたが、助けられなかった者もいる。尾崎は悲痛な思いでそう答えた。
「あのガキはどうした…?」
「…死んだ。自分で死んだんだ。」
「…そうか。」
 風間は、それを聞いて目を閉じた。
 カヲルに何かをされて操られたという記憶はかなり鮮明に残っている。
 自分の意思に反して周りに攻撃を加えた記憶。
 尾崎に対する嫉妬心が増長され殺す寸前までいったのも覚えている。そして圧倒的な力を目覚めさせた尾崎に敗北したことも。
 簡単に操られてしまった悔しさに、風間は拳を握りしめ、歯を食いしばった。
「志水さん…、覚えてるか? 食堂のおばちゃん。」
「ああ…。」
「死んだ。カヲル君に殺された。」
「そうか…。」
「俺がもっと早く覚醒していれば、もっと助けられたはずだったのに…。」
 尾崎は肩を抱いて俯く。
「おまえの責任じゃねぇ。」
「でも…。」
「おまえはお人好しすぎんだ。そんなんでよく生き残れたよな、まったく…。」
「すまない…。」
「だから一々謝るな、馬鹿野郎。」
「どうして俺だけが新人類なのか分からないよ。ツムグが言うには、いずれみんなそうなるって言うけどさ…。」
「気の長いこったな。」
 ツムグは、いずれはすべての人類が尾崎と同じになれると預言したが、それがいつになるかははっきりさせなかった。
 かなり気の長いことなのは間違いない。
「あのガキは、おまえを見て道を譲るって言ったんだろ?」
「ああ。」
「なら人類補完計画も挫折したってこったろ。」
「だといいんだがな…。」
「なんだ?」
「嫌な予感がするんだ…。」
「…おまえのそれはよく当たるからな。」
 尾崎の予感はよく当たる。だがツムグのように具体的になところまではいかなない。
「おまえ…、これからどうする?」
「俺は…、M機関に残る。兵士を続けるよ。」
「俺もだ。」
「風間…。」
「勘違いするなよ。俺は俺のために続けるんだ。」
「そうか。」
 まあ、風間ならそう言うだろうと思った尾崎は、そう言った。
 いつも通りな風間の様子に、尾崎は初めて笑った。





***





 両親についての記憶はほとんどない。
 それがシンジの実の両親に対して想うことだった。
 母親の面影はなんとなく覚えている。父親のゲンドウについては、最後に見た背中を泣きながら見送るしかなかった。父親については最近になって急に呼び出されて親子の再会とも言えない状態で再会となったので酷い目にあった。
 ゲンドウに対する恐怖心にも似たトラウマは、地球防衛軍で過ごすうちにいつの間にか忘れ去られていた。(一時風間にたいして苦手意識はあったものの)
 ただただ空虚な日々を送っていた頃が嘘だったかのように、楽しい毎日を送っていた。
 レイという大切な相手に出会えて想いを伝えて、触れ合って。
 毎日が本当に楽しかった。明日が来ることが楽しいと思える日が来るなどと、あの頃の自分は想像もしなかっただろう。
 けれど今の時代が激動の時代だということを忘れていた。
 ゴジラがいて、使徒がいて。
 渚カヲルと名乗っていた人型の使徒によって、基地は破壊され、見知った人達が操られ、たくさんの人々が死んでいった。
 目の前でお世話になっていた人が死んだ。
 死が常に隣り合わせだということを完全に忘れるほど、シンジは確かに幸せだったのだ。
「あのね、碇君…。」
「……。」
 テントの横で体操座りをして顔を伏せているシンジに、隣に座っているレイが話しかけ続けていた。
「エヴァ初号機のコアには、碇ユイ…、碇君のお母さんがいたの。」
 はっきり言って今話すことじゃない。だがレイは、いまいち話題選びができてなかった。
「だから私と碇君だけが、初号機とシンクロできた。でももう初号機はない。碇君のお母さん、完全に死んじゃった。」
「…それ、今話すこと?」
「違った?」
「違うよ。」
 顔を伏せたままツッコミを入れる。レイなりに頑張って場の空気をなんとかしようとしていたのは、一緒に過ごしていてシンジは理解している。
「どうでもいいよ。そんなこと。」
「でも…。」
「母さんのことなんてほとんど覚えてないし、今はそんなこと考えてる余裕ない。」
 人との繋がりに飢えていた頃のシンジが見たら、きっと信じられないだろう。シンジは、自分の親にけっこう無関心になっていた。
 ある意味で精神面で強靭になったといえるかもしれない。
「綾波…、本当に人間になれたの?」
「うん。」
「そうか…。うん…、そうか…。」
 シンジの片手が、隣にいるレイの片手に重ねられた。
「おめでとう。」
「ありがとう。」
 二人は肩を寄せ合った。
 ようやく、レイが人間になれたことを喜ぶことができた。





***





 シンジとレイが肩を寄せ合っているのを遠くから見ていたツムグは、一人悶絶していた。
「かわいい~~~! あ~、これだからやめらんないんだ。」
 やめられないとは、覗きのことだ。
「何やってるのよ…。まあ、いつものことだけれど。」
 音無が呆れ返った顔で言った。
 音無達、科学者達一同は、破壊された基地の科学部研究所からデータや、研究物の復旧を行っていた。
「思ったよりも被害が少なくて済んだけれど…。」
「まあ、もともと怪獣が来ても大丈夫なように特に頑丈にしてるからね~、研究部は。バイオハザードの心配はないんでしょ?」
「ええ、今の所はね。」
「そこらへんもさすがだよね。生物化学系統は、怪獣がいた頃からずっとすごかったし。」
「怪獣と戦うための研究が、二次被害、三次被害を出す原因になったらシャレにならないわよ。」
「それでもビオランテとか、デストロイアは出たけどね。メガギラスの時もだよ。」
 どれも人間の手で起こった怪獣の事件だった。
 デストロイアなどは、特に、一代目のゴジラを倒した代償に発生したものだったのでゴジラを倒すうえで次の怪獣の発生という大きな教訓を残した。
 メガギラスは、ゴジラを倒すための実験の最中に起こった結果で、結果的にゴジラに掃討してもらったという皮肉を残した。
 ゴジラを滅ぼそうとすると何がかが起こる。まるで呪いのように……。
「二度とそんなことが起こらないようにするのが、それを継ぐ私達の役目よ。」
「ところで村神さんは?」
「なによ急に。」
「村神さんはどうしたのかなって思って。」
「…まだ発見されてないわ。」
「生存は絶望的か。生きてたらいいけど、死んでたら…、記録残ってるのかな?」
「…どういうこと?」
「あれ? 村神さんの研究知らないの?」
「部署が違うから知らないわ。それで何があったの?」
「ちょっとね~。あの人の研究内容が…。」
「勿体ぶらずにはっきり言いなさい。」
「とりあえず村神さんのいた部署の辺りを徹底的に探してみてよ。ひょっとしたら逃げてるかも。」
「だから何なのよ!」
 勿体ぶって言わないツムグに、音無はキレた。
 その後、ツムグの言う通りに村神がいた部署の研究室(倒壊してる)を重点的に掘り起こしてみると…。
「音無博士!」
「なに? 何か出たの?」
「いえ…、それが……。恐らく村神博士だと思われる遺体が…。」
「…そう。」
「それが変なんです。」
「なにが?」
「何かに齧られた形跡があります。恐らく死因はそれかと…。」
「えっ…。」
「あと近くに何かが入っていたと思われる巨大な試験管がありました。内部から破壊されたと思われます。」
「…村神が何か記録を残していたはずよ。それを探し出して!」
「分かりました!」
 作業員達に指示を出し、村神が残しているであろう記録を探させた。
 そして。
「出ました!」
「解析するからこっちに回して!」
「はい!」
 掘り出された記憶媒体の解析を行った。
 何重にも掛けられたプロテクトを解いて、内容を閲覧すると…。
「なによ…、これ…。」
 そのマッドな内容に音無は、言葉を失いかけた。
 エヴァンゲリオン初号機の細胞、フランケンシュタインの血液、ツムグの細胞、ザトウムシ型の使徒のコアのコピー……その他諸々(※沢山あるので割愛)。
 その中で目が行ったのは、初号機の細胞という項目だ。
 初号機とは、先ごろゴジラに破壊されたエヴァンゲリオンのことだ。バラバラにされたあげく、とどめに焼かれて炭になったはずだ。
 村神は、その残骸から採取された微量の細胞を増やすために試行錯誤していたらしい。
 ツムグの細胞を使ったレイを人間にする実験の派生として死滅しかけた細胞の活性化のために、ツムグの細胞を利用したようだが増やすには至らなかったらしい。
 そこでツムグの細胞との橋渡しのため、地球防衛軍に保存されていた改造巨人フランケンシュタインの血液を、無断(!)で拝借し、初号機の細胞に使ったのだ。
 その結果、ツムグの細胞による活性化が円滑になり、初号機の細胞は増えるようなったのだ。
 その後、それほど時を置かずして膜につつまれた胎児のような形態に変化し、眼球が生じして村神を認識しているような動きを見せるなど確かな意思を宿していたと記されている。
 なんとか解剖したいところだが、ATフィールドと思われるエネルギーで弾かれてしまうため失敗。
 その物体をもっと調べねばというところで記録は終わっている。
「あの部署、前々からヤバいって聞いてたけど、まさかこんなことしてたなんて…。村神は初号機を蘇生させたというの!? じゃあ、初号機は今どこにいるのよ!」
「逃げられてたか…。村神さんのことだからこの騒ぎでバレないように初号機を隠そうとして逆に食べられちゃったって感じかな。」
「初号機の居場所は把握できないの?」
「……ごめん。」
「あ~~~、もうこんな時に使えないわね!」
 音無はガシガシと頭をかきむしった。
「あんた隠してたの!? このことを!」
「隠してたわけじゃないけど、聞かれなかったからね。」
「あーもうああ言えばこう言う! ともかく脱走した初号機を探し出さないと。基地の中で見つかればいいんだけれどね…。」
「見つからないよ。」
「…せめて嘘ついてよ……。」
「労働力が分散するし、無駄な労力だから面倒でしょ?」
「あんたってやつはーーー!!」
 音無の怒鳴り声が木霊した。
 ツムグの証言により、基地にはすでに初号機はいないと分かり、初号機捜索のため周辺に捜索隊が行くことになった。
 研究部の研究の産物が外に出てしまったとなっては一大事。
 バイオハザードや新たな怪獣の誕生に繋がる可能性があるということで、すぐに受理された。





***





 ガリゴリガリゴリと、クチャクチャクチャクチャという不快な音が鳴る。
『もう少し…、もう少し……。』
 不快なその音の中に、幼い男の子のような声が混じる。
 ソレの周りには、赤黒い血がまき散らされており、肉片と、辛うじて形のある人間の、部位が散乱している。
『美味しくない…。でも…たりない…、足りない…。』
 ゲプッと口から息を吐いたソレは、まだ物足りないと口にする。
『足りないよ、お兄ちゃん…。足りないよォ。』

「う、うわあああ! なんだこれは!?」

『あ、いいところに…。』
 たまたま通りかかった人間を見つけ、ソレは、目にも留まらぬ速さで飛び掛かった。
 その人間が暴れるのを無視して、喰らいつき、悲鳴も無視して貪る。
『!!』
 半分食し終えたところで、変化が起こった。
 未完成な胎児のような体が一回り大きくなったのである。
『あは、あはははははははははははははははははははははははははは。』
 ソレは、笑う。
『もっともっと食べれば大きくなれるぅ! そしたらそしたら…。全部、変えられる。変えちゃえるよ、お兄ちゃん! ああ、でも人間不味いからもう食べたくないなぁ…。じゃあ、何食べたらいいんだろう…。あ……。』
 ソレは、思いつく。
『食べる物あるじゃない…。』
 ソレは、先ほど襲った人間の半分を残したまま移動を開始した。
『第三新東京に行けば、あるじゃない。』

 もう誰も乗り手のいない、神の模造品と、魂を失った白い巨人が。

『おいしいかな? 美味しいかな? あはははははははははははははははははははははははははは。』

 その言葉と笑い声を聞く者はいない。
 
 

 
後書き
初号機が復活するまであと少し…。

死の予言は、絶対に回避できません。何かしらの形で成就されてしまいます。 
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