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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第二十八話  ふぃあとアルミサエル

 
前書き
使徒アルミサエル編。

しかしアルミサエルが狙ったのは……。 

 
 地球防衛軍の空に突如として出現した、二重螺旋の光。
 まるで遺伝子の螺旋の形に似たそれ。
 それは、クルクルと回転しているだけでそこに佇んでいる。
 ついに第三新東京ではなく、地球防衛軍に直接攻めて来たかと緊張が走る。
 そんな時、使徒を観測していたオペレーターが不可解なことを言った。

「おかしいです。パターン青からオレンジに変化しては、また青に変化を繰り返しています。」
「どういうことです?」
「つまり実体があるようで、ない? ということか?」
「スーパーコンピュータの判別装置が間違っていなければ…。」

 またヘンテコなのが出た。っというのが司令部の人間達が思ったことである。
 波川を始めとした、アダムの所在を知る人間達は、まさかツムグの中に封じたアダムに魅かれたかと危惧した。


 だが使徒の狙いは、まったく違ったことが間もなく判明することになる。





***





「こりゃまた…、変なのが出やがったな。」
 熊坂が空を見上げて言った。
 使徒は、相変わらず空でクルクルと回っている。
 頭も、手足も、胴体もない。ただただ白く発光しているだけの存在がそこにいる。
 これが生き物だと言われても納得はできない。
 前に出現した使徒アラエルのこともあり、防衛軍は慎重だった。
 かなりの数の兵がまだ復帰できていないこともあり編成された軍隊は若干少なめである。
 今のところ使徒に変化はない。
 何かしてくる様子がないのが不気味だ。
 かといって下手に攻撃して、とんでもない反撃が返ってくる可能性もある。
 司令部も、攻撃の合図を出すか否か迷っていた。
 何せこの使徒。使徒の弱点であるコアが見当たらない。攻撃しようにもどの部分が有効かもさっぱりなのだ。

 しかし変化は突然起こる。

「M-1班、ただいま到着しました。」

 尾崎率いる隊が熊坂のもとに到着した時だった。

 クルクルと回っていただけだった使徒の形状が変化し、輪っかから一本の白く光る紐みたいになった。
「えっ?」
 尾崎が本能で空を見上げた時、使徒の体の先端が尾崎に迫ってきていた。
「なんだと!?」
 熊坂が叫んだ時、尾崎を含めてその場にいた者達が散開したことでそれは回避された。
 尾崎がたった今いた場所を使徒が通過する。
 先端がクルリッと、尾崎のいる方へ向けた。
「逃げろ尾崎! 野郎の狙いはおまえだ!!」
「っ!?」
 熊坂が叫ぶに驚いた尾崎は、仲間から離れて走り出した。その後ろを使徒が追って来る。
「尾崎少尉!」
「う、撃て、撃て! 尾崎を助けるんだ!」
 散開していた者達がハッと我に返って、武器を取り出し、使徒を撃った。
 だが使徒の表面は、外見に似合わず頑丈で弾かれてしまう。メーサー銃ですらも。
 尾崎は、建物の壁を登り、屋上に辿り着くと、そのまま建物から建物へ飛んだ。
 その後ろを使徒が追う。
「くっ…。」
 接触したらマズイと本能が訴えてくる。
 逃げ続けている間に、仲間が使徒に攻撃を行っているがまったくが歯が立たない。
 追い回され続けていればいずれ捕まる。
 尾崎の体力も無限ではない。だが使徒はS2機関という永久機関を持つ。体力の差など歴然。
「どうすれば…!」

「妙なことをするよ本当に。」

「!? ツムグ!?」
 尾崎の横にツムグが並行して走っていた。
 尾崎と違い息1つ切れてない。
「尾崎ちゃん。舌噛まないようにね。」
「は? なにを。って!?」
 ツムグが寄ってきたかと思ったらそのまま胴体を掴まれて、ツムグに担がれる形にされた。
 途端ツムグのスピードがアップする。
 使徒は、ツムグが現れたからか一瞬だけ止まったが、すぐに追跡を開始してきた。
「まだ追って来る!」
「あいつは、尾崎ちゃんのことが知りたいだけだよ。」
「えっ?」
 走りながら尾崎にツムグが言った。
「ただ方法がね…。使徒は、相手を理解する方法を知らないんだ。だから一つになろうってわけ。」
「ひとつに…、ってそれって!」
 使徒の目的を理解した尾崎はツムグの方の頭を見た。
「そう、融合だよ。確かに手っ取り早いけど、それでお終いだ。」
「なんでそんなことを…。」
「前の使徒の時に尾崎ちゃんだけ平気だったでしょ。多分その時に目を付けられたんだよ。使徒は、人間を知りたがっている。尾崎ちゃんを知れば人間を知ることになるって思ったのかも。」
「どうして、俺なんだ…?」
「尾崎ちゃんは特別だからだよ。」
「俺は特別なんかじゃ…!」
 尾崎は、自分自身が他のミュータントと違うことを認めたがらない。
「今は尾崎ちゃんだけだよ。いずれは……。」
 ツムグは何か言いかけてやめた。
「そろそろかな。」
「えっ?」
「舌噛まないようにね。」
「う、うわっ!」
 尾崎を担いだままのツムグが高所から飛び降りた。
 後方にいるアルミサエルが、蛇のようにうねりながら追ってきた。
 だが次の瞬間。
 ツムグ達が落下した、その下の方から極太のメーサー砲が使徒を貫いた。
 貫かれ空中でバラける使徒の体。

「よくやった、ふぃあちゃん。」

『エヘヘー。やったよ、やったよ、ツムグ。褒めて褒めて!』

 建物の下には、機龍フィアが仰向けになって口からメーサー砲を発射したところだった。
 尾崎を担いだツムグは、機龍フィアの胴体に着地していた。
 上を見上げると、バラけた使徒の体が元通りに治り始めていた。
「これぐらいじゃダメか。やっぱり。」
『ツムグ! 乗って乗って!』
「尾崎ちゃん。一緒に乗ろう。使徒の狙いは尾崎ちゃんなんだからこっちにいた方がいいと思うよ。」
「分かった。」
 尾崎はツムグに促されて、機龍フィアに一緒に搭乗した。
 ちょっと狭いが仕方ない。
『ツムグーツムグー、アイツの名前、アルミサエル!』
 機龍フィアを立たせているとふぃあがそう言った。
「アルミサエルか…。」

 アルミサエル。その名の意味は、“子宮”である。

 使徒アルミサエルの体が元通りなり、機龍フィアに迫った。
「怯えないのか!」
 天敵のツムグの細胞を使っている機龍フィアを前にしても、中に尾崎がいると分かっていると怯まず襲って来るアルミサエル。
 肩の砲塔からミサイルを発射し、アルミサエルを爆撃。
 その隙に、ジェットを吹かして機龍フィアは、飛んだ。
 爆風の中からアルミサエルが飛び出し、空へ飛んだ機龍フィアを追ってきた。
「どこへ行くんだ、ツムグ!」
「第三新東京。」
「なるほど、そうか、そこなら周りを気にせず戦えるな。」
「それもあるけど…。」
「?」
 ツムグは、尾崎と会話しながら機龍フィアのジェットの出力を上げて飛行速度を上げながら第三新東京を目指した。
 その後をアルミサエルが追って来る。
 やがて機龍フィアは、第三新東京に辿り着く。
 速度をそのままに着地し、地を抉る。背後から迫ってきたアルミサエルを、軽いフットワークで避ける。
 機龍フィアと、アルミサエルが面と向かって対峙した。
 その時、通信が入った。

『東京湾にG(ゴジラ)接近! 間もなく第三新東京に上陸するもよう!』

「来たね、ゴジラさん。」
「ツムグ、まさか…。」
「ゴジラさんを地球防衛軍の基地に呼ぶわけにはいかないでしょ?」
「おまえって奴は…。」
「えへへ。おっと。」
 そうこうしていると東京湾の向こうから、熱線が飛んできた。
 機龍フィアは、熱線を避け。熱線はアルミサエルに命中した。
 だがバラけるだけですぐに元通りに治り始める。
「う~ん、この使徒ゴジラさんの熱線でもダメか。」
「どうすればあの使徒を倒せるんだ?」
「ん~。」
 考え込むツムグ。
「そんな緊張感なしでいいのか!?」
 なんとも緊張感のない唸りを漏らしたツムグにたまらず尾崎が叫んだ。
「いやそんなつもりは……、あっ。」
 ツムグはいいことを思いついたと手を叩いた。
「尾崎ちゃん。」
「なんだ? 何か思いついたのか?」
「合図したら機龍フィアから降りて。と言うか飛び降りて。」
「なんでだ!?」
「いいから!」
「っ…、分かった。」
 ツムグに強く言われ、尾崎は仕方なく頷いた。
 アルミサエルはそうこうしている内に元通りに戻り、再び機龍フィア目がけて迫ってきた。
「今!」
「!!」
 次の瞬間、ツムグの合図がかかり、尾崎はハッチから機龍フィアの外に飛び出した。
 そして飛び降りながら背後を見た時、アルミサエルが機龍フィアに突き刺さったのを目撃した。
「ツムグ!!」
 地面に降りていく最中、尾崎は叫んだ。
 アルミサエルは、機龍フィアの突き刺さった部位からやがて吸い込まれるように機龍フィアの中に全部入り込んだ。
 機龍フィアの目から光が消え、首を垂れる。

 その時、ゴジラが雄叫びを上げながら上陸してきて、機龍フィアの前に立った。

 すると機龍フィアの首が上がり、光のない目がゴジラを見据えた。
 足を一歩踏み出し、機龍フィアが身構えた。
 使徒イロウルの時とは明らかに違う。
 ゴジラが雄叫びを上げながら突撃してきたと同時に、機龍フィアがジェットを吹いて突撃した。





***





『ここどこー?』

 -----ココドコー?

『ダレー?』

 ----ダレー?

『もう、ダレなの? マネしないでよ。』

 キミコソダレ?

『? ふぃあはふぃあだよ。キミこそダレ?』

 フィア? フィアは、フィア?

『フィアじゃないよ。ふぃあだよ。』

 ふぃ…あ、ふぃあ!

『うん! 合ってる合ってる!』

 ふぃあ、モット、オハナシシタイ

『いいよー。』

 ボクは、キミノコトを知リタイナ

『ふぃあもキミのこと知りたいな。だからお話しよう。』

 オハナシ、しよう





***





「尾崎少尉より通信!」
「繋げなさい。」
 ゴジラと機龍フィアの戦いが始まった時、尾崎から司令部へ通信が入った。
 通信は司令部に繋がりスピーカーに繋がれた。
『こちら尾崎! 機龍フィアに使徒が入り込みました!』
「それは映像で確認しました。」
「貴様は一体何をしていたのだ! またしても使徒に機龍フィアを奪われおって!」
『申し訳ありません…。』
「謝って済む問題じゃ…!」
「そこまでです。尾崎少尉に責はありません。」
「しかし波川司令!」
「あの使徒は尾崎少尉を狙っていたと聞いています。恐らくはツムグの判断で尾崎少尉を使徒から守るためにわざとしたことでしょう。」
「おのれ、椎堂ツムグめ! 一体奴は何を考えているのだ! ただのミュータント兵士のために!」
 機龍フィアと尾崎一人とでは価値が違うと司令官の一人が机を叩いて叫んだ。
「ツムグは、何も考えず行動するほど馬鹿ではありません。彼なりの考えがあっての行動でしょう。」
「ですが、波川司令…。」
「機龍フィアの動きが…。」
 ツムグのことを信じる波川に、司令部の人間達が困惑する中、オペレーターの一人が機龍フィアの動きに不信を持った。
 イロウルに乗っ取られた時とは違う。
 動きが滑らかだ。かと言ってオートパイロットプログラムとも違う。
「もしかして…。」
「科学部からの報告! DNAコンピュータが停止状態! G細胞完全適応者が手動でゴジラと応戦しているとのこと!」
「手動操作でしたか。」
 とりあえずツムグは無事だと分かった。
 だがDNAコンピュータの方が停止状態にあるのだという。
「もしや使徒は、DNAコンピュータの方に取りついたのでは!?」
「ならばなぜ椎堂ツムグは対処しないのだ!」
「奴に通信を繋げろ!」
「ダメです! 通信がブロックされています!」
「DNAコンピュータが停止しているからか!?」
「DNAコンピュータは、機龍フィアのすべての機能を司っているのに、そこをやられたらお終いだぞ!」
「ですが、機体は止まっていません。ということはまだ機龍フィアは…。」
「いったい何が起こっているのだ!?」
 司令部は不可解な今の状況に騒然となっていた。
「ツムグ…。」
 いまだ返事のないツムグに向かって波川が呟いた。





***





 ネエ、キミ尾崎ノコト知ッテル?

『知ってるよー。尾崎がどうしたの?』

 ボク、尾崎ノコト知リタイ

『知ってどうするの?』

 尾崎ノコト知ッテ……。………

『アレ? 黙っちゃった…。』

 …君と一つになれば分かるのかな?

『えっ?』

 ボクが君を知れば、尾崎のこと知れるかも

『ふぃあは、尾崎を知ってるよ。でも、キミとひとつにはなれないよ。』

 ボクと一つになろうよ

『ふぃあは、ふぃあだよ。キミはキミでしょ? ひとつになったら…、キミはどこへ行くの?』

 それは………それ…は……

『一つになっちゃったら、もうキミとお話しできないよ。それ、ヤダ。』

 その気持ち、知りたいな

『どうするの?』

 君と一つに

『ダメ。ダメだよ。それじゃお話しできない。』

 ………………

『アレ? また黙っちゃった……。ねえ、ツムグー。ツムグー、どこー?』

 ……ツムグって、誰?

『ツムグは、ツムグだよ。椎堂ツムグ。ふぃあの…、お兄ちゃん! かな?』

 椎堂ツムグ…、知りたいな……

『ツムグ、ふぃあの中にいるよ。』

 中にいるの? じゃあツムグのところに行ってみる

『いってらっしゃーい。』





***





 第三新東京では、機龍フィアとゴジラの戦いが繰り広げられていた。
 DNAコンピュータが停止しているためほとんどの武装が使えないため、肉弾戦が主となっている。
「くっ、ふぃあちゃんいないとこんなに大変なんだな…。」
 DNAコンピュータのサポート無しでの手動操作の難しさに、ツムグは、そうぼやいた。
 さっき尾崎と並行して走ったり、尾崎を担いで走っていた時よりも遥かに疲れるのだ。そりゃ戦闘なんだから神経を尖らせているので精神に来る負担も大きいのである。
 その時。
「うん?」
 シュルリと白く光る紐状の物が天井から降りて来た。
「ふぃ、ふぃあちゃん、こっちに誘導したか…。」
 それが使徒アルミサエルだと一目で見抜いた。
「ま、いっか。」
 しかしすぐに持ち直し。
 左の操縦桿から手を離し、アルミサエルに触れる。

「おいで。」

 すると待ってましたと言わんばかりに、アルミサエルが、ツムグの体に入り込んだ。


 そして、2秒後。
 機龍フィアの機体の装甲の隙間から、アルミサエルが物凄い勢いで飛び出し、目の前のゴジラに入りこもうと接近した。

「えっ、そっち(ゴジラさん)に行くの? そっち(ゴジラさん)行っちゃうの? あっ。」

 ツムグは、思い出して自分の腹に触れた。
「あっぶなかったー。忘れてた…。」
 アルミサエルは、ツムグの精神から情報を得てゴジラに向かったのである。精神を司る脳の方を重点的においていたので、腹の方には行っていない。本当にギリギリである。
 ツムグのゴジラに対する好意的な意思を理解しようとして、ゴジラに向かって行ってしまったのだ。
 機龍フィアの前にいたゴジラは、接触しようと接近してきたアルミサエルを引っ掴んだ。
 グルルッと唸り声を上げながら、アルミサエルを睨みつける。
 アルミサエルは、ジタバタ、ピチピチと暴れている。
 アルミサエルの能力は、相手と融合することであるのだが、ゴジラにはなぜかそれができない。本当なら掴まれている端から融合できるはずなのに何かに阻まれている。
 分厚くて、圧倒的な何かにゴジラとの接触が阻まれている。

 -----ひとつになりたい

 そう意思を伝えようと思念を飛ばしてみるがうまくいくわけがない。それどころか、ゴジラの機嫌がますます悪くなる。
 ゴジラに掴まれている先から、何かが逆にアルミサエルの中に入り込んでくるのを感じた。
 それはアルミサエルが知る限り、今まで感じたことのない狂暴な何か。
 それがアルミサエルを蹂躙するように入り込んでくる。
 アルミサエルの体に亀裂が入り始めた。
 入り込んできた狂暴な何かは、“ひとつ”ではない。幾つもの…、ナニカがアルミサセルを蹂躙する。

 ------やめ、て、や……め…て……

 このままでは自分が砕け散ると感じたアルミサエルは悲鳴を上げる。
 本来なら自分が相手を浸食し融合する側のはずが、逆のことをされている。

 いやだ!!!!

 アルミサエルは、強力なATフィールドを張り、ゴジラの手から強引に逃れた。
 しかし、それで最後だった。
 渾身のATフィールドは、脆くなってしまった自身の体にとどめを刺すに十分だった。

 砕け散る直後。
 白い発光体のアルミサエルの体から、これまで出現してきた使徒と思われる形が出現した。
 キラキラと散らばり落ちていくアルミサエルを、機龍フィアの手がすくい上げるように両手を差し出す。すると粉々になっていたアルミサエルは、機龍フィアの手の中に吸い込まれるように消えた。

「ふぃあちゃん?」
『…お話、もうできないね……。』

 ふぃあの残念がる声に、アルミサエルは、もう何も答えなかった。

「ふぃあちゃん。悲しむのは後にしよう。まずは戦おう。」
『…うん。』

 そして、前にいるゴジラとの戦いが再開される。 
 

 
後書き
椎堂ツムグによって、アルミサエル撃破は、ふぃあとの対話でさせようとしましたが、最後はゴジラに殺されました。
あと、椎堂ツムグは、腹の中にアダムがいたことを素で忘れてました。 
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