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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第二十七話  渚カヲル

 
前書き
前回のアラエルの精神干渉による攻撃で、アスカが酷いことになりました。
これは、ゼーレ側の意図したことです。
カヲルではない、銀髪の人物がいます。 

 
 使徒アラエルの精神攻撃によって、かなりの人数の患者が緊急病院に運び込まれた。
 見た目に外傷がなく、精神に大きなダメージを受けたというものなので医者も対応に困ったが心肺停止の者も多かったため、蘇生手術が行われた。
 その患者の中に、アスカもいた。
 外向きの廊下で倒れていたのを発見され、すぐに搬送されたおかげで奇跡的に心肺停止から回復できた。だが精神に負ったダメージは大きく、いまだ寝たきりだった。
 状況から見て逃げ遅れたものと見られており、アスカのように逃げ遅れた訓練校の生徒達もいた。
 比較的回復が早かったのが、ミュータント兵士達だ。恐らくは精神系の超能力に対する訓練の賜物だと思われる。多少の個人差はあれど常人よりは回復は早かった。風間などは特に回復が早くすでに復帰している。

 アスカの病室に銀髪の男が入り込んだ。

「アスカ・ラングレー。聞こえているか?」

 ベットの上にいるアスカに語り掛けるが、アスカは反応しない。酷く精神を犯されたのだから致し方ないだろう。そうでなくても精神的に不安定になっていたところにそんなことをされたのだからダメージは計り知れないだろう。
「アスカ・ラングレー。」
 アスカの耳元に口を近づけて語り掛け続ける。
「君は依代に選ばれた。依代は心が壊れている必要があった。だからあのような手酷いことをしてしまったことは謝ろう。我々には君が必要なんだ。」
 語り掛け続けていると。
「ワタシ、ヒツヨウ…?」
 弱々しい片言でアスカが言葉を発した。『君が必要なんだ』という部分に反応したらしい。
 銀髪の男は、口元を緩めた。
「ああ、必要なのだ。」
「ウフ、フフフ。」
 アスカは、口から涎を垂らしながら笑う。もはや正気ではない。
 男は、アスカから離れると。
「これで準備は整う。すべては人類補完のために。」
 銀髪の男は、口元を緩め、病室から音もなく消えた。





***





「……あの、尾崎さん。」
「なんだい?」
「その人……、ダレ?」
 シンジは、尾崎の後ろに引っ付いている銀髪の少年を指さして口元を引くつかせていた。
「…ああ。えっと、その……。」
「真一さん、彼は?」
 銀髪の少年がひょこりと顔を出して尾崎に聞いた。
 ゾッとするような美貌にシンジは、思わず目を見開いた。
「あ、彼は碇シンジ君って言うんだ。」
「初めまして。」
「シンジ君。この子の名前は渚カヲル君って言うんだ。」
「…そうですか。」
 シンジは、ジト目でカヲルという少年を見た。
 カヲルは、にっこりと微笑みを返すだけでシンジの視線にはまるで臆さない。
 シンジには、その笑い方がどこか勝ち誇っているように見えて自分の血管がピキリッとくるのを感じた。
「なんで、その…渚君?が尾崎さんの引っ付いているんですか?」
 自然と声が低くなる。
「ああ、実は…。」
 尾崎が説明した。
 カヲルは、先ごろ起こった地震で保護された被災者で、救護に搬送されたあとたいして怪我はないと分かったはいいが、意識が戻ってから自分を助けてくれた人(尾崎)に会いたいとねだり、いざ尾崎に会ったら引っ付いて離れなくなったらしい。
 カヲルが言うには、名前以外思い出せないらしく、尾崎と一緒にいたいとだけいうので、周りを困らせたが、人の良い尾崎はちょうど手も空いてるし訓練と仕事がない間だけ一緒にいてもいいと承諾してしまったのだ。
 そして今に至る。
「なんでなんですか?」
「なんでって、カヲル君も不安だろうし。」
 シンジの不機嫌に気が付かない尾崎。
「おーい、尾崎ー。」
「あ、呼んでる。じゃあね、シンジ君。」
 その時、尾崎の仲間が尾崎を呼んだので、尾崎は去っていった。カヲルもそれについていった。
「……なんなんだよ。」
 シンジは、自分でもよくわからない苛立ちに困惑していた。


「キャー、修羅場よ。修羅場。」
「修羅場だ修羅場だ。。」
「おい、そこの腐女子と腐男子コンビ、いい加減にしろ。」
 現場の状況を見ていた腐女子腐男子コンビとツッコミがいたりする。





***





 風間は、機龍フィアの操縦席に座っていた。
『風間少尉、シンクロ試験を始めます。意識を集中してください。』
「了解。」
 風間はツムグと同じ装備で、機龍フィアとのシンクロ実験をしていた。
 風間も尾崎と並んで機龍フィアの操縦者の候補に挙がっていた。
 周りの機器が点灯し、シンクロの数値を示す値が表示されていく。
『活性率25.5パーセント。前回より6パーセント上昇しました。』
「チッ。たった6か。」
 風間は舌打ちをして横にある計器を殴った。
『風間少尉。苛立っているのだろうが、計器をあまり強く殴らないでくれ。壊れたら元も子ともないんだ。』
「分かっている。」
『ふぃあは、何か言っているか?』
「何も。」
『まだだんまりか…。』
 機龍フィアの意思であるふぃあがいまだにだんまりを貫いていた。
『やっぱりDNAコンピュータの方が破損しているのでは?』
『いやそれはない。……と思いたいな。』
『思いたいじゃダメっすよ。』
「で…、これ以上上がらないか?」
 なんか話が脱線しているので風間が話を戻そうと喋った。
『ああ、0以下の上下はあるがこれ以上は望めそうにないな。』
「…、そうか。」
 風間は舌打ちをしかけてやめた。

『…………ねえ……。』

「!」

 子供の声。女の子のような声が聞こえた。
「…ふぃあ…か?」
『うん…。』
「なぜ今まで黙っていた?」
『だって、ツムグが……。』
「奴が嫌なら俺にしろ。」
 ツムグが嫌になったのなら自分に協力しろというと、ふぃあはまた黙った。
 風間は面倒くさそうに溜息を吐き。
「だったどうするんだ?」
『カザマこそオザキと仲悪いじゃん。』
「っ、うるせぇ!」
 尾崎のことを出されて風間は怒鳴った。
『…ツムグ、怒ってるかな?』
「野郎のことだ、別に怒ってもなんともないだろ。」
『うん!』
「……はあ…。おまえはアイツ以外に乗せる気ないだろ。」
『だって、だって、くすぐったいんだもん。』
「そんな理由か!」

『とりあえずDNAコンピュータは無事でしたね。』
『うむ。』

 とりあえずDNAコンピュータは、破損しておらず無事だったことは確認できた。





***





 一方そのころ。

「波川ちゃん、おつかれー。」
「まったく、心配して損しましたよ。」
 ツムグの調子が悪いと聞いて、様子を見に来た波川は呆れたと息を吐いた。
 ちょっとした間にツムグは元気になっていたのだ。
「もう大丈夫だよ。心配かけたね。」
「心配などしていません。」
「もう、嘘ついちゃって。」
 そっぷを向く波川に、ツムグは微笑んだ。
「そういえば、ふぃあちゃんがやっと口きいてくれたんだよね。」
「ええ、やっとよ。」
 調子が戻ったから感覚もほぼ戻ったようだった。
「ふぃあちゃんには悪いことしちゃったな。」
「そう思うのなら、ゴジラのことで我を忘れないように努めなさい。」
「それは難しいなぁ。」
 ツムグは、ヘラヘラ笑ってそう答えた。
 それを見て、波川は再度溜息を吐いた。
「ところでさ。」
「なんですか?」
「尾崎に懐いてる男の子がいるよね?」
「私は存じませんが、それがどうかしましたか?」
「いや、ちょっと面白いなって思って。」
「? 面白い?」
 何か面白い物を見つけた子供のように笑うツムグに、波川は疑問符を浮かべた。
 ツムグには、カヲルの正体が分かっていたのだがあえて口には出さなかった。
「ま、大丈夫でしょ。」
「…そうですか。」
 なんか不穏なことを言っている。だがあえてツッコミはしなかった。
「波川ちゃん。」
「なんですか?」
「俺は、万能じゃないからさ。」
「分かっているわ。」
「それならいいよ。」
 波川は、ツムグの言い方から予感した。

 それは、誰かが死ぬ時である。
 それもたくさん死ぬ時だ。

 どれほど正確に予言しても、死だけは回避できないのだとこれまでの経験から知っていた。
 そうでなければ使徒レリエルの時だって犠牲になった者達が出ずにすんだはずだ。
「できれば私の時は教えてほしいわね。」
「教えてもらってどうするの?」
「引継ぎとか、色々とあるからよ。きちんとできてなければ後の者が困るじゃないですか。」
「そっか。」
 波川の冷静な言葉にツムグは笑った。





***





 風間の次は、尾崎が機龍フィアの操縦席に座った。
『尾崎少尉。シンクロ試験を始めます。意識を集中してください。』
「了解。」
 尾崎は息を大きく吸ってはいて、意識を集中した。
 ツムグと同じ装備を身にまとって、同じ状況で実験にあたっていた。
 周りの計器が数値を表示し始める。
『活性率29.4パーセント。前回より8パーセント上昇です。』
「やった。」
 前回よりいい結果が出て、尾崎は素直に喜んだ。
『あと少しで30パーセントだな。惜しかった。』
「でも8パーセントも上がった。」
『尾崎少尉は前向きでいいなぁ。』
「?」
『いえ、こっちの話ですよ。』
 苛立っていた風間と比較して言われたことなのだが、尾崎には気づかれなかった。
『しかし約3割弱の活性率では、まともに戦闘はできませんよ?』
『そこなんだよな……。』
 風間も尾崎も操縦者候補なのだが、二人合わせてもシンクロ実験の結果はツムグの半分にも満たないのだ。
 ちなみにツムグのシンクロでの活性率は、約150パーセントである。100がDNAコンピュータの活性率の標準値として、それ以上を叩き出せるということは、より性能を引き出せるということだ。負荷がかかって壊れたりはしない。もともとリミッター解除の分を含めてるので基準値の倍以上の出力を出すことは想定の範囲内だ。
 3割、つまり約30パーセント前後では、オートパイロットプログラムの方がマシだということになるのだ。
 この問題を解決させないとツムグ以外の操縦者を選べないし、本来の機龍フィアの設計である、誰でも操作が可能というスタイルが実現できていないことになる。(訓練は必要ではあるが)
 尾崎より前に実験にあたった風間とふぃあとの会話から、ふぃあ…つまりDNAコンピュータが非協力的なのは、ツムグ以外だと単にくすぐったいからだということが分かった。だがこればかりは、ふぃあが譲歩するしかない。幼い子供のような人格を持つふぃあに譲歩してもらうのは難しいことかもしれないが、やらないと何も解決しない。
『あの、少し気になったのですが…。』
『なんだ?』
 技術者の一人が手を上げて言ったので聞いた。
『先ほどの風間少尉の実験の時のふぃあの声なんですが…、少し変わっていたように聞こえたのですが…。』
『変わっていた? どういう風に?』
『なんと言いましょうか、少し成長したような…、子供の、それも女の子の声に近くなったような気がしまして…。』
『おんなのこ? ふむ…。尾崎少尉。ふぃあに喋らせてもらえないか。』
「了解。ふぃあ、聞こえているなら返事をしてくれ。」
『……。』
「聞こえているのにどうして黙っているんだ?」
 尾崎の周りにある計器はしっかり正常に動いている。つまりDNAコンピュータであるふぃあに聞こえているはずなのだ。
『……ずかしい。』
「ん?」
『だって、恥ずかしいだもん。』
「だもんって…。そんな恥かしいことなんてないぞ?」
『…ふうむ。少し成長したのだろうか?』
 ふぃあの声が、確かに少々変わっていたことに、技術部の責任者はそう捉えた。
 ふぃあの性別は、どうやら女の子らしい。まあ機械(生体入り)なので性別も何もないのだが。
『ま、分かったところで活性率が上がるわけじゃないからな…。』
 それを言ったらお終いだというツッコミを現場にいた者達は思った。
『ねえ、ツムグじゃダメなの?』
 ふぃあが言った。
 この言い方だと、ツムグ以外を乗せるのを嫌がっているように聞こえる。
「俺じゃダメなのかい?」
 尾崎が聞く。
『ダメじゃないけど…。やっぱツムグがイイ。』
「ツムグのこと好きなんだな。」
『ウン! 大好き!』
 元気に無邪気にそう言うふぃあの声に、外にいた技術部と科学部の面々はなんだか居心地が悪く感じた。彼らとしてはふぃあに譲歩してもらってツムグ以外の操縦者を選びたいのであるが…。
『かと言って、DNAコンピュータをアンインストールできませんしね…。』
『アンインストールなんてしてみろ、今までのデータもクソもパーだ。それだけはやめろ。』
『オートパイロットプログラムがパーになりますって!』
『そんな地獄はみたくないーーー!』
 オートパイロットプログラムの制作に苦心していた技術部の魂の叫びだった。
『外、ウルサーイ。』
 元凶になっているふぃあが完全に他人事のように言った。





***





 アラエルを撃破するために使用されたロンギヌスの槍は、その後も宇宙空間を飛行し、やがて月の引力に引かれて月に到達した。
 使徒を一撃で撃破した武器ということで回収をという意見が寄せられたが、調べたところ月に到達したロンギヌスの槍は、とてもじゃないが地球には戻せない質量になっていたらしく、回収は不可能という結論が出た。
 だったらなぜ投げる前に確認しなかったという非難があったが、精神干渉を攻撃手段とする宇宙空間を飛行する使徒を撃破するには仕方がなかった、そしてこれ以上の犠牲者を出すわけにはいかなかったのだという反論の意見が飛び、非難の声を上げた者達はぐぬぬっと黙るしかなかった。
 しかしここで疑問の声があがる。

 なぜ、椎堂ツムグは、ロンギヌスの槍の存在を知っていたのか。ということだ。
 もっと早くロンギヌスの槍の存在を明かしていれば、これまでの使徒との戦いも変わっていたはずだということだ。

「邪魔だったんだよ。」

 あっさりとツムグは、そう答えた。

「ロンギヌスの槍は、誰が用意したのかは分かんないけど、元々はアダムとリリスの活動を止めるための保安措置だよ。それ自体が一種の自律稼働する生命体。なんか強い意思に反応するみたいだから尾崎の意思にも反応した。そもそもロンギヌスの槍は、使徒を殺すための武器ではないんだよ。ATフィールドを無効化するって効果はあるけどそれが元々の使い道じゃないし。だいたいアレがセカンドインパクトを起こした元凶でもあるんだし…、多用するのは……。だから手っ取り早く安全に、かつ地上から処分するには、あそこで(※使徒アラエルに投擲)使っちゃおうってことで。」

 そもそも南極にいたアダムに干渉するために、ロンギヌスの槍を使ったことがセカンドインパクトの事の発端らしい。
 そして目覚めたアダムを抑えるために更にロンギヌスの槍を使った結果、アダムは卵に還元されたものの、地球は酷い有様になったというわけだ。
 要約すると、ロンギヌスの槍自体がセカンドインパクトに続くサードインパクトの引き金の一つであるということが問題なのだ。
 もし早々に存在が露見して使徒迎撃のために利用され続けていたら……。もしかしたら……。
 最悪の結末を想像した者達は、よくやったツムグ!っと、グッと親指立てたという。逆に最悪の結末を想像できなかった者達は不満を隠しきれない様子ではあった。

「えっ? それだったら尾崎にやらせたのはなぜかって? あの時点であの使徒の精神干渉に耐性があったのって尾崎ちゃんだけじゃん。他の人達は“まだ”だったしね。えっ? どういう意味かって? それはそのうち分かるよ。」

 精神干渉の波長に対する、尾崎の耐性の理由について語られることはなかった。





***





「…---であるから。」
「……。」
 一方、レイは、完全な人間になるための実験についての説明を受けていた。
 椅子に座る彼女の周りには何人もの科学者や医者がいる。
「現段階では、成功率は約68パーセントだ。」
「68…。」
 半分以上ではあるが、決して高くはない数値である。
「初期の成功率10パーセント以下に比べれば遥かに上がったのだが…。」
「しかしそれでも確実に成功するわけではない。何事にも成功と失敗を問われるものだ。」
「だがこの実験は一発勝負ですぞ。失敗すれば彼女は…。」
「椎堂ツムグの言うように、量と濃度を間違えば即死なのは、先の彼女の細胞を使った実験で明白。そこで…。」

 レイを人間にするための一発勝負の実験は、以下の進められることになりそうだった。
 極々薄めたツムグの骨髄細胞を少しずつ、絶え間なく注入していく方式である。
 だがこの方法……、体細胞の急激な変化のために全身に凄まじい苦痛を強いられる可能性が高く、レイが耐えられなくなる可能性が高いのだ。
 なぜ絶えずなのか。それは先に採取したレイの細胞に行った実験で少しずつ時間をおいてツムグの細胞を与えて馴染ませようとしたところ、時間を置いたらレイの細胞が死んでしまったのだ。
 濃かったり多ければ爆発。少なすぎると死滅。
 ツムグが言っていたのはこういうことだったのだ。
 もう一つの問題が脳細胞などの神経細胞への負担である。ここにダメージが残ってしまえばレイは日常生活を送ることが困難になるのは明白。だがツムグの細胞の再生力が負担で負ったダメージを回復させる可能性もある。絶え間なく注入することで壊れる細胞と同時に再生する細胞を作るエネルギーを与えるのだ。だがそのサイクルでとてつもない苦痛が発生するのである。そのショックで記憶の方が消える可能性も否定はできないのだが……。

「全身の細胞を少しずつ変化させる…。だが細胞を変化させるということは……。」
「…えます。」
「ん?」
「私、耐えます。」
 レイは、きっぱりと言った。
 その表情には強い決意が見て取れた。
「……ひとつ聞かせてはくれないか?」
「はい。」
「君はどうして人間になりたいんだい?」
 彼らのリーダーである老いた科学者鰐渕(わにぶち)のその質問に、レイ以外の周りが眼を見開いた。
「死ぬかもしれないのに、どうしてそこまでして人間になりたいんだ? 確かに君がゴジラを呼びせる可能性を持っているのは知っている。それを抜きにしても意地でも人間になりたいその理由を。」
 なんてことを聞くんだと周りが声に出さずそんな雰囲気を醸し出していると。
 レイが口を開いた。
「碇君といっしょに生きたいから。」
 そうはっきりと言った。
 その顔には生きることへの希望さえ見て取れる優しい微笑みがあった。
「碇君というと、君が今いるM機関にいる黒髪の少年のことかい? 君は彼と共に生きることを望むから人間になりたいというのかい?」
「はい。」
 レイは、しっかりと返事をした。
 それを見た周りがざわつく。
 保護された当初の人形のような、生気のない雰囲気だった少女がずいぶんとあまりにも人間らしく成長していたことに驚かされたのだ。
「これが愛が成せる業ですかね?」
「シッ!」
 ヒソッと喋った医者に、隣にいた科学者が人差し指を立てた。
「………そうか。分かった。決心は固いようだね。」
「はい。」
 こくりっと頷くレイ。
 鰐渕は立ち上がり。
「聞け! 我々はこの少女を全力で人間にするために務める! 異論がある者は去れ!」
 腹の底からの声に、一瞬びくんとなった周りだったが、すぐに背筋を正した。
「大丈夫じゃ。君は人間になれる。」
「はい。」
 レイにそう微笑み返し、ついでにウィンクまでした鰐渕に、レイも微笑んだ。





***





 その後まもなく、使徒が出現したという警報音が鳴り響く。

 遺伝子の二重螺旋に似た白く光る輪っかが、地球防衛軍の上空に出現していた。 
 

 
後書き
このネタでは、シンジは、カヲルに友好的ではありません。そういうのが書きたかったんです。
お兄ちゃん取られた弟状態です。

レイを人間にする実験は、もうすぐ決行されます。 
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