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ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)

作者:蜜柑ブタ
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第二十一話  可能性への敵意

 
前書き
重傷を負った加持が、ゴードンからミサトのことを聞く。

そして、機龍フィアとゴジラの戦闘。

破壊された初号機であったが…? 

 
 加持は、ゆっくりと目を開けた。
 頭に走る痛みに顔をしかめていると。
「よう。」
「…ゴードン、大佐?」
「意識ははっきりしているようだな。」
 ゴードンがいるということは、ここは地球防衛軍の管轄にある病院だろうと加持は判断した。
「俺は、生きているんですね…?」
「これ何本に見える。」
「三本。」
 目の前に出された指の本数を加持は答えた。
 加持は、ハッとあることを思い出した。
「か、葛城は! 葛城はどこだ!?」
「落ち着け。」
「葛城は無事なんですか!?」
「意識を失っているが命に別状はない。だが…。」
 ゴードンは、ミサトの病状について説明した。
 強力な暗示がかけられていたことや精神と記憶を操作するために薬物投与も見受けられ、人間技じゃない攻撃法でミュータント兵士達と戦ったため全身がボロボロで、いまだに意識不明だった。
 しかし彼女自身の生命力が強かったため、体の傷の回復は思っていたよりも早く、だが暗示による脳や神経への負荷はどうにもならず、意識が戻らないことには対処ができない状態だった。
 最悪、このまま意識が戻らないかもしれないと医師は答えている。
「そんな…。」
 加持は愕然とした。
「いったいどこの誰があんなムチャクチャな暗示をかけたのか、医者連中が怒ってたぜ。」
「あいつら…。」
「ようやく話す気になったか?」
「……。」
 加持は、グッと口を閉じた。
 そしてやや時間をおいて口を開いた。
「ゴードン大佐…。頼みがあります。」
「なんだ?」
「俺は、連中に復讐がしたい。葛城を………、俺が惚れた女をメチャクチャにした仇を打ちたい。」
「……いいぜ。で?」
「奴らの名前は…、ゼーレ。大昔から人間社会の裏で歴史を動かしてきた秘密結社だ。」
「ゼーレ…か。」
「連中の居場所まで分かりやせん。…すみません。」
「いいや。そいつらの名前が分かっただけでも収穫だ。」
「……。」
「他に何か言いたそうな顔してんな? なんだ。」
「話したところで、到底信じられない話っすよ…。」
「いいから話せ。」
「…そうですよね。今更ですよね。





***





 一方。

「どぉりゃああああ!」
 ゴジラと機龍フィアのバトルは続いていた。
 ゴジラを一本背負いするも、着地され逆に投げられ、受け身を取りまた投げる。の、繰り返し。面白いぐらい投げ技ばっかりである。
「いい加減、投げるのも飽きたな…。」
 っとツムグは、ぼやいた。
 ゴジラにもそれが伝わったのか、グルルっとゴジラが鳴いた。
「あっ、ゴジラさんもそう思う? じゃあ、殴り合おう!」
 言うが早いかゴジラとの殴り合いが始まった。
 ゴジラが尻尾を振った時、機龍フィアも尻尾を振って、尾っぽ同士がぶつかった。
「おおぅ、じ~んっときた。」
 機龍フィアの背筋を伝ってぶつかり合った時の衝撃でツムグはちょっと痺れた。
 その隙をついてゴジラが機龍フィアの頭部に尻尾攻撃を与えた。
 横に倒れる機龍フィアを、ゴジラは蹴って転がした。
 再び蹴りが入りそうになるとその足を掴み、起き上がるのと同時にゴジラをひっくり返して馬乗りになってゴジラの顔を殴打した。
 ゴジラが放射熱線を吐き、機龍フィアは、のけ反って避けるとゴジラが起き上がって機龍フィアに掴みかかり、二体は地面を転がった。
 機龍フィアは、肩のキャノンの砲塔を伸ばし、ゴジラの顔を狙って撃った。
 至近距離で撃たれたものの、前に似たようなことをされて学んだのか大した傷にはならずゴジラは顔を押さえて機龍フィアからどいた。
「久しぶりに…、リミッター解除。3つ!」
 7つあるうちの3つを解除し、機龍フィアの目が輝き機械の雄叫びをあげた。
 ゴジラも負けじと雄叫びを上げ突進してきた。
 その突進を受け止め、ゴジラとの押し合いへし合いが続き、機龍フィアの腹部が開閉した。
 ゴジラは、それを察して体内熱線を放ち、機龍フィアを吹き飛ばした。
「ヤーラーレーター。アハハハハハ!」
 目を金色に光らせたツムグは、操縦席で狂ったように笑った。リミッター解除による信号の逆流でテンションがおかしくなっているのだ。
『ツムグー、ツムグー、しっかりしてー!』
「えっなに? ヘーキヘーキ、ふふ、フハハハハハハ。」
『ウワ~ン。ゼンゼン平気じゃな~い。』
 笑いっぱなしのツムグに、ふぃあは頭を抱えた。
 笑っていても操縦はしっかりしており、むしろ正常時より操縦桿の操作が早い。リミッター解除による機能の向上は、ツムグの操縦技術もアップさせるらしい。しかもほとんど無意識で動かしてるらしく、ゴジラにも動きが伝わらないのかゴジラが翻弄される。
 ツムグの様子を観測していた司令部や科学部は、ツムグのテンションが異様に高いことを訝しんだ。なので急いで技術部と連携して原因を究明した。
 ツムグのテンションは伝わっているのか、ゴジラはかなり苛立っており、顔がどんどん歪んでいく。
「ゴジラさ~ん、ゴジラさ~ん。アハハハハ。」
『ワーン! ツムグは、ふぃあのー!』
 ゴジラ、ゴジラと連呼するツムグに、ふぃあが声を上げた。
 ふぃあの絶叫に呼応してか、ブレードが展開されゴジラの左手が切り付けられた。
 手を押さえてゴジラが呻いた。
「…ゴジラさんの内臓って何色だろ?」
『ナニ言ってるの!? ナニ言ってるの!?』
 急に表情を無にして、ヤバイことをボソッと言いだしたツムグに、ふぃあが声を上げた。
「ゴジラさ~ん、見せてほしいな~~~~。」
 歌うように言いつつ、機龍フィアを操作してジリジリと迫ると、ゴジラはツムグの異様な空気を感じたのかジリジリ同じだけ後退した。
 ゴジラがドン引きするってどんだけだ?
 その時。
「あ…?」
 ツムグの鼻から鼻血が垂れた。
『ツムグー!』
「あれ…、おっかしいなぁ。頭…、イタ…。これ、毒?」
 突然の頭痛とともに体から力が抜けるのを感じた。
 次の瞬間、機龍フィアが飛んだ。いや飛ばされた。
 ゴジラのタックルが決まったのだ。
 地面に背中から落下する機龍フィア。
 中にいるツムグは、操縦桿から手を離して白目をむいて、口から血混じりの泡を吹いていた。目からも血が垂れる。
「……。」
 しかしその目にすぐに光が戻り、操縦桿が再び握られた。グッと閉じた口から血が溢れる。
 起き上がった機龍フィアがゴジラにタックルする。ゴジラは、それを受け止め足が地面を抉った。
「………こんなんじゃ死ねない。」
 ツムグは、自虐的に笑い操縦桿を操作してゴジラと殴り合った。

 しばらく肉弾戦が続き、やがてゴジラが海に引き返して戦いは終わった。

 基地に帰還した後、ツムグは、顔を血で汚した状態で飛び降り。
「尾崎がシンクロ実験に入る前に分かってよかったよ。俺じゃなきゃ死んでる。」

 その後、間もなく脳とシンクロするための管の一部から猛毒が検出された。





***





 綾波レイへのツムグの体液を投与するための実験は、着々と進んでいる。
 一発勝負となるこの実験のため、ツムグの体液(骨髄液)濃度の念密な計算が行われなければならない。量と濃度を間違えば、レイは死ぬからだ。
 まず事前に採取したレイの細胞に、ツムグの体液を投与するとどうなるか調べる実験が行われた。
 顕微鏡のシャーレに乗せた微量のレイの細胞に、ツムグの体液(骨髄液)を当てるとどうなるか、まずその変化を調べる。

 次の瞬間、シャーレが爆発した。

 幸い調べていた研究者はひっくり返っただけで大きな怪我はなかったが、研究室が騒然となった。
 結論から言うと、ツムグの体液の量が多かったから爆発した。
 細胞のエネルギーが大きいため、使徒の要素に反応した結果そのエネルギーが暴走したのではないか。
 爆発飛散したレイの細胞は、欠片も残らず焼き尽くされていた。
「しかし、なぜ使徒の細胞にG細胞が反応するんだ?」
 そもそもその理屈自体が謎である。
 恐らくではあるが、それがゴジラが使徒を滅ぼそうとする理由なのではないか。可能性は高いだろう。
 しかし肝心のツムグは語ろうとはしない。
「せめてクローン体が残っていればな…。」
 レイに関する資料に記載されたクローンについて呟かれた。
 クローンはすべて失われ、現在いるレイただ一人だけしかいない。もしクローンがあれば科学者達は遠慮なくそちらを利用していただろう。実験が一発勝負ではなくなっていたはずだと舌打ちさえあるぐらいだ。
「ともかくやりましょう。綾波レイがゴジラに目を付けられる前に。」
 ゴジラに目を付けられたら実験どころじゃなくなる。

 レイの実験まで、準備を進める研究者達を尻目に、別のことをしている研究者達もいた。

「せめてもっと増やせればな…。」
 焼けた初号機から回収された微量の細胞を調べていた。
 体長80メートルもあったのに、散々潰されたうえに、放射熱線も受けているため細胞のイキが悪い。このまま死滅しないのが不思議なくらいだ。
 せめてもう少し増やせれば色々と実験に使えるのだが…っと、その研究者が肘をついて唸っていると。ふと、試験管に入ったツムグの骨髄液が目に留まった。
 その瞬間、ピコーンとその研究者の頭に電球が光った。
 微量の初号機の細胞の一部を切り取り、シャーレに移す。そこにものすご~く薄めたツムグの骨髄液を投与した。

 すると細胞のイキが良くなった。
 初号機の細胞に対し、骨髄細胞が少なかったため骨髄細胞は燃え尽きるように消滅して、初号機の細胞だけが残された。

 うまくいったとその研究者は心の中で小躍りし、ツムグの細胞を増量すれば初号機の細胞も増やせると思って増やそうとして、ふと手を止めた。
「……ゴジラのメルトダウンの時のデータってあるか?」
「なんで?」
「メルトダウンが鎮静化されたのは、椎堂ツムグが関わっているんだろう?」
「なるほど…。」
 そう言って、デストロイヤの事件の時の資料が引き出された。

 ゴジラのメルトダウン。
 ゴジラの住処であるバース島の消滅の際に、その原因となった地下の天然ウランの影響で体内炉心の核エネルギーが不安定になったために起こったことである。
 圧倒的な怪物と化したデストロイヤを圧倒するほどの力を発揮したが、体内から溶けて行くほどのエネルギーを暴走させあと一歩で核爆発か、メルトダウンによって地球が灼熱の星になるかもしれない危機が迫った。
 これを防ぐために冷却兵器が使用されたが、防ぎきれずメルトダウンが始まってしまう。
 ところが突然メルトダウンの症状は徐々に収まっていき、約数十時間で赤々とした熱を帯びていたゴジラの体は熱を失い、大量の放射能を吐きだしたものの核エネルギーの暴走は収まった。
 その放射能もゴジラの再起動により再びゴジラに吸い込まれ当時の東京は放射能の汚染を逃れたのだった。
 そしてゴジラが何かを吐きだし、ヨロヨロの状態で海へ帰還した後、ゴジラのその嘔吐物からドロドロに溶けかけた椎堂ツムグが発見された。
 持ち前の再生能力がほとんど機能しておらず、ツムグの回復には年単位で時間を要したものの、ツムグは全快。
 ゴジラは、数年間もの月日も姿を現すことはなかった。
 これがメルトダウン寸前のゴジラが元通りになるまでのことである。

 メルトダウンというもうどうしようもない現象を抑えたツムグの偉業については当時の情報操作により隠ぺいされた。そうでなくてもツムグの存在が隠されている以上公にはできなかったのだ。
 どうやってツムグがゴジラのメルトダウンを防いだのか、当時の科学者達が調べたり、ツムグ本人から聞き出そうとした。
 結論としては、ツムグがゴジラの核エネルギーの炉心である心臓に直接取りつき、自らの細胞を劇薬としてゴジラの細胞の回復力をアップ。炉心の回復によって暴走した核エネルギーは鎮静化され、メルトダウンは治まったということらしい。
 ツムグは、ツムグで炉心の心臓にとりついて細胞を与えるため半融合状態になってしまい、その結果ドロドロに溶けてしまったが、完全に溶ける前にゴジラに吐きだされて今に至るらしい。もし吐きだされなかったらツムグはゴジラに溶けて死んでいたとされる。
『ゴジラさんのいけず…。』
 喋れるようなった時のツムグの第一声がこれだったとか。

「この一件でツムグの監視体制がより厳しくなったんだったな。」
「ああ、ゴジラを助けたからな。隙さえあらばゴジラに味方する気満々だってことを主張したようなもんだし。」
 ナノマシンと爆薬を体内に仕込まれたのもこの時期からだ。
 研究者は、なんとかして初号機の細胞の培養をしたかった。
 初号機の構造が分かれば何かヒントが得られるかもと思い、ゴジラに破壊されている時の映像を閲覧した。
 その時、ゴロリと転がり出て来た球体を見て、使徒の体にあるコアと酷似していることに気付き、もしかしたらと思った。
 そこで保存されているザトウムシ型の使徒マトリエルから回収されたコアの一部を切り取り、クローニングを行う。
 クローン復元された使徒のコアに初号機の細胞を当ててみる。
 しかしコアの方はクローン復元されたにも関わらずほとんど機能していない。なので初号機の細胞に対して何の意味もない。
 なにかコアの代わりとなるものがあればと考えた時、あるモノの存在が頭に浮かんだ。

 改造巨人フランケンシュタイン。

 太平洋戦争末期にドイツから日本へ運ばれたとされる、“フランケンシュタインの心臓”と呼ばれる不死身の心臓なるものから生まれた巨人である。
 怪獣バラゴンとの戦いで絶命。
 その後、ガイラとサンダと名付けられた分身が戦うという事件が起き、両者ともに海底火山に巻き込まれて絶命。
 ガイラの方であるが、ガイラは、サンダの細胞の一部が海底で成長した者で、フランケンシュタインの不死身の心臓の凄さが分かる一例として資料に残っている。
 国際放射線医学研究所にフランケンシュタインが保護されていた時に採収されていたフランケンシュタインの血液が、後に地球防衛軍に回収されて厳重に保管されたわけだが……。

「不死身の心臓か…。」

 もしかしたらという思い付きで、引っ張り出されたフランケンシュタインの血液の一部を、機能を停止しているマトリエルのコアに注入する。
 しかし長らく保管庫にあったことや、微量であったため、変化は見られない。
 そこで更に、ツムグの骨髄液を注入してみる。
 するとコアが活性化し、初号機の細胞もそれに触発されて増えた。しかし活性化は急に下り坂になった。
 そこから活性化状態は微々たる状態で停滞。完全に活動が停止しないのは、フランケンシュタインの不死身の細胞の影響であろうか。
 使徒の細胞は非常に吸引率がいいというか、適応能力が高い。この現象からすると使徒の細胞がG細胞完全適応者の細胞を吸収し、細胞が活性化しすぎて、結果、細胞が焼けて火傷となってしまうのではないかという答えが得られた。人間(orミュータント)に注入した場合は、全身が超健康体になる代わりに即死してしまい、体内に残らないというデータがある。
 使徒の細胞の場合だとそのずば抜けた適応能力によって吸収したG細胞完全適応者の細胞を自らの方に変質させようとする力が発生し、持ち主の遺伝子に依存しているG細胞特有の性質と大喧嘩になるのではないか。
 その結果、反発しあうエネルギーが行き場を失い細胞が焼けてしまうのでは?
 ツムグがもたらしたレイを人間にするための一定量のツムグの細胞というのも他の使徒にも当てはめることができるならば、火傷せずに死者蘇生のごとく死んだ使徒の細胞を活性化させる最適な量があるのではないか。
 その反発しあうモノ同士をくっつける接着効果が、フランケンシュタインの心臓から出たフランケンシュタインの血液で叶うのではないか。
 現に機能を停止していたマトリエルのクローンのコアが微妙な状態であるが復活したではないか。
「よっしゃ!」
 成果に研究者はガッツポーズを取った。
 恐らくこれがうまくいけば、エヴァンゲリオンだけじゃなく使徒の構造も解き明かすことができると考えて研究者は実験を続けた。

 こうして徐々に増えて行く初号機の細胞。

 増えて行く細胞と共に復活していく、意思の存在に気付くことはなく…。






***





『死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたく死にたくない死にたくない死にたく死にたくない死にたくない死にたくない死にたく死にたくない死にたくない死にたくない死にたく死にたくない死にたくない死にたくない死にたく』


「っ……! ハッ!」

 尾崎は飛び起きた。
 額を抑えるとびっしょり汗をかいていた。
 尾崎が見た夢は、真っ暗な中、聞き覚えがある幼い子供の声が、死にたくないと叫んでいた。
「しょごうき?」
 あんな破壊のされ方をしたら、黙って成仏などできるわけがないだろう。だが尾崎にはどうするこもできない。
 残留思念をサイコメトリーで読み取ることはあるが、あくまで物体に残る過去の情報でしかないため死者を成仏させるようなことができるわけじゃない。せいぜい祈りを捧げることぐらいであろう。
「俺には、どうすることもできないよ…。」
 夢の中で死にたくないと叫んでいた初号機(たぶん)に向けて、尾崎はそう言った。
「そういえば…。」
 ふと尾崎は思った。
 なぜゴジラは、使徒を滅ぼうそうとしているのか。
 前に倒れた時に、ゴジラがセカンドインパクトの真っ只中、消えた南極のど真ん中の赤い海で怒りの咆哮を上げた映像は視た。
 その時にゴジラは、セカンドインパクトが人為的に起こされたことと、これから先何かが起こることを知ったらしい。
 使徒を放っておけばサードインパクトで世界が滅ぶとされている。なぜ第三新東京を目指すのかは分からないが、何かがあるのは間違いない。(※まだリリスの存在は知られていない)
 ゴジラは、世界が滅ぶのを阻止したいのではないのだと、ツムグっぽい声(※本人とは断定されていない)が語っていた。
 ただ許せないのだと言っていた。
 何をそこまで許せなかったのか。人間を許せないのなら使徒を狙う理由にはならない。
 確か、使徒と人間は、ほとんど同じであるらしい。あんなにも姿形が違うのにだ。
 人間は人間で、使徒であることは初号機の口から語られている。
「……同じだから?」
 まさかそういうことかと尾崎は額を押さえた。
 ゴジラにとって人間が許せない存在で滅ぼしたいと考えているように、それに近い存在である使徒もまた人間と同じく許せないから滅ぼそうとしている?
 南極の消滅は、南極で眠っていた使徒アダムを人間がバラバラにしてしまったことが原因であるが、南極が消えて世界が滅びかける原因の力の大本たる使徒アダムを憎悪しているのだとしたら?
 それともゴジラは、南極で眠らされている間にアダムの存在を感じるなどして使徒を敵として認識するきっかけを作ってしまったのだろうか?
「ううう…、分からない。」
 考えれば考えるほど分からなくなってきて、頭痛がしだしてきた。
「ツムグは何もしゃべらないからな…。」
 ゴジラの思考が読めるはずなのに詳しいところは喋ってくれない。
 ツムグは、結局のところ味方なのか敵なのか…。その気になれば人類の敵になっても不思議じゃない存在だとは聞かされているが今のところこちら側(人類側)の味方でいてくれている。だが正直なにを企んでいるのか分からない。
 未来予知すらしているらしいが、ツムグは未来に何を視たのか…。
 少なくともサードインパクトが起こることはよくないと思っているっぽいのは間違いないが…。
「……こーいうときには来ないんだな。」
 神出鬼没のくせにこういう時には来ない。本当に何を考えているのかさっぱりである。
 まだ時間も早いので、尾崎は寝なおすことにした。





***





「……。」
 ツムグは自室で、ベットに寝っ転がりながらテレビを見ていた。
 テレビでは、ちょうど赤ちゃん特集をしていた。幸せそうな家族が次々に映されている。
 それを見てツムグは、苦笑した。
「俺には永遠に見れない光景だな…。」

 ツムグには、子供を作る能力がない。

 G細胞の力を持つ人類などツムグ以外に発見されていないため、発見された当初、ツムグのクローン、あるいは子供を作ろうとする動きはあった。
 しかしなぜかそれはできなかった。
 健康診断では普通の人間よりもミュータントよりも健康なはずなのにだ。
 保管はできてもクローンなどで培養し新たな命を作るには至らない。ツムグの形にすらならないのだ。
 機龍フィアの素体を作るにあたり、あの大きさまでツムグから搾っては注入し、搾っては注入しを繰り返して素体を作ったのだ。そこに機械が加わることで“ふぃあ”という自我意識が誕生したがあくまでふぃあは、コンピュータの意思でしかない。ツムグの体から生まれた命とは言えないだろう。現にふぃあには、ツムグの能力は受け継がれていない。
 ツムグは、ベッドの上で寝返りを打ち、目を閉じた。
 すると脳裏を過る、小さな光の粒の映像。
 ツムグは、フフッと笑った。
 
 

 
後書き
初号機復活の伏線。
人間の科学への探究心によるものです。

椎堂ツムグには、子供を作ること出来ません。クローンも作れない。
『ふぃあ』は、あくまでツムグのDNAを動力源としたコンピュータです。 
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