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永遠の謎

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147部分:第十話 心の波その五


第十話 心の波その五

 そして政府もだ。首相に警視総監がその先頭にいた。
 彼等はだ。騒ぐ市民達を官邸から見てだ。満足していた。
「いい感じですな」
「はい、このままですとやがては」
「彼は陛下の御前から去ることになります」
「必ず」
「して総監」
 首相は満足している顔で総監に告げてきた。
「ここで、です」
「ここで?」
「策を仕掛けましょう」
 こう総監に話すのだった。
「男爵ともお話して」
「男爵ともですか」
「はい、そうです」
 こう述べるのだった。
「そうしましょう」
「ふむ、策ですか」
「ここで策を仕掛ければです」
 どうかというのである。
「そうしましょう」
「それではですが」
「それでは?」
「どうした策ですか?」
 総監が問うのはこのことだった。
「その策とは」
「はい、陛下と彼の仲に亀裂を生じさせる策です」
「ふむ、彼をさらに追い詰めるのではなく」
「それはこのまま進めていけばいいのです」
 それはもう充分だというのだ。
「しかしそれだけではなくです」
「肝心の陛下ともですか」
「はい、亀裂を生じさせましょう」
 そうするというのである。首相はだ。
「それで如何でしょうか」
「確かに。ここで肝心の陛下との仲を裂けば」
 総監もだ。話を聞いて述べた。
「彼はさらに苦境に追いやられますな」
「確かにワーグナー氏は知識と教養があります」
 それはあるというのだ。間違いなくだ。
「ですが政治はです」
「弱いですな」
「政治の駆け引きを知りません」
 芸術家だから当然である。彼は政治の世界には生きてはいない。だからこそ今も次第に追い詰められてきているのだった。
 それでだ。首相は笑みを浮かべながら言うのだった。
「追い詰め裂くのは実に楽です」
「そしてやがては」
「はい、ミュンヘンからです」
 この国からだというのだった。
「いられなくします」
「それが目的ですね」
「別に命を取ろうとは思っていません」
 首相もそこまでは考えていなかった。
「私はそうしたことはです」
「御嫌いですね」
「はい、第一に陛下が悲しまれます」
 だからだというのである。
「陛下はあの御仁の芸術を愛しておられますから」
「ですからそれはですね」
「陛下を悲しませてはなりませんね」
「その通りです」
 総監もそのことにはすぐに頷いて返す。
「陛下の悲しみはこのバイエルンの悲しみでもありますから」
「ですからそれはしません」
 また言う首相だった。
「絶対に。しかしです」
「浪費家であるあの御仁はバイエルンにはですね」
「いてもらっては困るのです。そういうことです」
 単純に言えばそうだった。それが彼等の考えだった。
「ですから」
「そうですね。だからこそですね」
「追い詰めます」
 首相はまた言った。
「このままです」
「それは楽ですね」
 総監から見てもだった。ワーグナーを追い詰めることはたやすかった。しかしだった。彼等は決して楽観せずにだ。こうも話すのだった。
 
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