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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚

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インテグラル・ファクター編
  第74層の前日譚


「ありがとうアヤト。またインゴット探しに付き合ってくれて」
「いいさ、俺も時間あったし新しい武器も見て見たかったしな」

現在55層の雪山。ここの主である白竜が持つとされているインゴットを俺とサチは取りに来たのだ。

「寒くないか?」
「ううん。大丈……きゃっ」

強い風が吹く。よく見るとサチは震えていた。我慢してたな……まぁミニスカートなんて履いてたら寒くてしょうがないだろう。俺は着ていたコートをサチに羽織らせる。

「ありがとう……アヤト」
「ん?別にいいよ。俺のこの装備はある程度防寒能力もあるみたいだしな。そんな事よりそろそろ縄張りだ。敵が出てきたら物陰に隠れてろよ」
「うん……」

雪山を登りきると、無数の結晶が広がる所にたどり着いた。
俺は辺りを見渡す。近くには居なさそうだな……

「アヤト。白竜は確か夜行性だったと思う。今は寝てるんじゃないかな?」
「だとしたら巣だな。よし、巣を探そう」

少し歩くと大きな穴があった。これが恐らく白竜の巣だな。下を覗いてみるが暗くてよく見えない。暗視スキルを使ってみるもどうやら深すぎるようだ。

「サチはここで待っててくれ。俺は少しずつ降りてみる。何かあったらメッセージ飛ばしてくれ」
「わかった。気をつけてね」

俺はストレージからナイフを取り出して降りていった。ある程度降りたらナイフを壁に突き刺して勢いを殺す。下を暗視スキルを全開にして見てみるもまだまだ奥まで見えない。
ん!?おっと、危ない危ない。足場が崩れた。バランスを崩して落ちでもしたら生きてられるかわかったもんじゃないからな。

「もう一度落ちてみるか?……よし」

俺はナイフを引き抜き降りる。底が見えてくると、再び

「いた。やっぱし寝てたか。サチに報告っと……よし。んじゃ、悪いけど殺らせてもらうぜ。おりゃ!」

俺は白竜向かって《ヴォーパル・ストライク》を使って一気に突撃した。落下の威力もあり、かなりの大ダメージを与えれたと思うのだがどうだろう?
白竜は休眠から突然の攻撃に驚き喚く。俺の剣は白竜の背中に刺さったままだ。というか、深く刺さりすぎて抜けない!白竜は翼を広げて飛び上がる。
しょうがない。このまま刺し続けてこいつのHPが全損するまで攻撃してやる!

「どうしたの!?アヤト!なんだか大きな音が聞こえるけーーってきゃー!!」

サチが再び穴を覗き込むと、白竜が穴から飛び出して来た。その背中には

「アヤト!?」

が乗っていた。白竜はアヤトを振り落とそうと右へ左へ、上へ下へと飛び回っていた。

「VR酔いはこの二年で克服してるから、そんな事しても無駄だぜ!おりゃあ!」

剣を後ろに引く。傷口エフェクトが広がっていく。すると白竜は上昇を始めた。
ん?
俺は今度は剣を前に押してみた。傷口エフェクトは前に広がると、白竜は滑降を始めた。
これ、もしかして……
試しに左に剣を倒すと、白竜は左に飛び、右に倒すと右に飛んでいた。

「あはは!これは面白い!まるで飛行機だな!」

俺は白竜をサチの方に飛ぶように操作する。

「おーい!サチ!!見てみろよ!俺、コイツを操作してるんだ!」
「え!?凄いね……」
「サチも乗るかーーってうわぁ!」

白竜はガラス片となって砕けた。あ、そう言えば操作してるとはいえこれはダメージ判定が入ってるからこいつのHPは減ってるんだった……ってそんなこと言ってる場合じゃなかった!ヤバい落ちる!

俺はどうにか態勢を整えて防御バフを積めるだけ積み、《八極》で受け身の態勢をとる。
これでなんとかなるか?
俺はそのまま地面に落ちた。

「アヤト!」

サチが俺の着地地点に走ってきていた。

「アヤト!大丈夫!?」
「おう、どうにかダメージを最小限に抑えられたよ」

俺は《八極》を解除して立ち上がる。ストレージを確認すると、アイテムが追加されていた。

《コバルトインゴット》

「これ、かなりレアなインゴットだよ!前にリズさんが取り損ねたって言ってたんだ」
「そんなに凄いのか?」

俺は《コバルトインゴット》を取り出して見てみる。確かに藍色に輝いており、レアそうだった。

「早速、工房に戻って作ってみなくちゃ!」
「おう!頼むよ」














「行くよ……」
「頼む」

サチは緊張気味にハンマーを下ろす。

ガキン!!

金属と金属がぶつかったような音が響く。

ガキン!!

無音の空間に再び音が響く。耳に残りそう。

ガキン!!

無音の空(ry

すると、《コバルトインゴット》は形を変えて一本の槍になった。

「《ライト・コンダクター》。『光を導く者』かぁ。なんだかアヤトにピッタリな名前だね。性能は……何よ、これ?筋力値は《クラレット》や《エリュシデータ》よりも少し低めだけど敏捷値がこんなに飛び抜けてるなんて……」
「どれどれ……うわ!なんだよこれ、敏捷値が『?』で、使用者の1.5倍の数値になるって……」

俺は《ライト・コンダクター》を持ってみる。重量は普通……いや、少し軽めか?バランスも悪くないし、取っ手が持ちにくいなんて事もないか、寧ろ手に馴染んでるし。両手槍も熟練度を上げてたし、何かあれば使えるだろうからあって困らないかな。

「ア、アヤトは……剣が良かったよね?ごめんね……剣に出来なかった……」
「ん?いや、せっかくサチが一生懸命に作ってくれたんだしありがたく使わせてもらうよ。これはいくらかな?」
「ううん。お金はいいの。いつもアヤトにはお世話になってるし、これは御礼。どうぞ」
「え!?いいのか?本当に貰っちゃって」
「うん。アヤトへの御礼だから受け取って」
「ありがとう。サチ」

俺は早速《クイックチェンジ》で変えられる武器を変更する。もともとセットしていた槍をストレージに戻し、《ライト・コンダクター》をセットする。そして《クイックチェンジ》で《ライト・コンダクター》を出現させる。

「敏捷値が1.5倍はやりすぎだろ……ん?」
「どうしたのアヤト。……え?《無限槍》?」
 
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