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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚

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インテグラル・ファクター編
  デュエル


なんだろうこの状況……俺がアレ使って反動で倒れたのは覚えてるんだけど、なんでこんなにミストの顔が近いんだ?つーか地面の割に頭の裏が柔らかい気がする。え……もしかしてこの状況ってもしかする!?中高生の男子が女子にしてもらいたいランキング堂々一位の……膝枕か!?

「よかった……アヤト君無事だったんだね!戦いの最中に倒れたから心配で心配で!」
「あ、ああ……そいつは悪いことしたな!まさか俺も倒れるとは思わなかったよ」
「で、さっきのアレは何?剣を使わないでグーパンとキックで戦ってたじゃん。体術スキルにしては何か違和感があったし….…」
「いや、アレは正真正銘体術スキルだ。色々特殊だけどね。名前は体術スキル《八極》。これまでの《閃打》や《弦月》とかとは違い一撃技じゃないのが特徴みたいだ。《八極》を使うと一定時間システムアシストに支配されるんだ。攻撃も回避も大体自動で動いてくれる。しかも倍速で動けるようになるからある程度の敵の攻撃は躱せるようになるんだ。そして全パラメータが二倍値になる。部位破壊がしやすくなるが、デメリットは発動中は剣を使えないこと。そして一定時間を過ぎるとさっきみたいに倒れることだ」
「パラメータの上昇にシステムアシストで動ける!?しかも倍速で動けるって……それどこで習得したの?」
「体術スキルを習得したところだよ。このスキルはある一定のパラメータ指定があって、ノルマ数値を超えていることと、《八極》を除く全ての体術スキルの熟練度を950以上まで超えてないと習得イベントが発生しない」
「そっか……」

ミストは残念そうに顔を伏せる。俺はミストの膝から頭をあげる。そしてミストの頭を撫でた。

「ミストはこんなものが無くても大丈夫だよ。さっきだってミストがいなかったら死んでいたかもしれなかったからさ。……ありがとうな」
「……うん!」

ミストはほんのり頬を染め頷く。俺は立ち上がり片手を差し出す。ミストは一瞬躊躇うが俺の手に自分の手を添える。俺はそのままミストを引っ張り上げ立たせる。

「行こうか」
「うん!」

俺はミストの手を離そうとするとミストは俺の手を強く握りしめてきた。

「ちょっ……あの、ミストさん?」
「もうちょっと……手を握っててもいい?」
「え!?……まぁ俺はいいけど」

どうしたんだろうか……まぁ確かに心配かけたしこれぐらいいいけどさ。
それから手を繋ぎながら巣を後にした。
圏内に戻ってくる頃にはミストも落ち着いたようだったので手を離した。ミストは少し寂しそうにしていたように見えたのは気のせいだろう。

「それじゃあ早速宿屋に戻って料理お願いしようと思うんだけど、ミストの宿屋には台所はついてるか?」
「え?アヤト君の宿屋で食べるんじゃないの?」
「いや、俺のとこはコイツを料理できるほど大層な器具はないし、そんなスペースはない」
「えー!私も料理スキル上げれたのはレストランでアルバイトしてたからだし、どうしよう……」

俺も顎に指を添えて考える。料理は基本レストランで食べてたし、料理の器具とかしっかり揃えてそうな知り合いは……いるな。

「ミスト」
「え?何アヤト君」
「とっておきの料理場とシェフ見つけた」
「え!?どこどこ?」

俺は一軒の宿屋に来た。ここに居るはずだ。俺の知る中でもトップクラスの台所とシェフが!
早速ノックしてみる。……反応がない。

「あれ?外出中か?」
「ここなのアヤト君?」
「ああ。ここだ」
「あ!やっほー。アヤト!」

と、タイミングよくシェフの帰還である。

「おっすコハル。早速で悪いんだけどちょっと台所を貸してもらえないか?」
「台所?別にいいけどどうしたの?」
「いやさ、道中コイツを手に入れてさ」
「コイツ?どれどれ?……『フォレスト・ダックの肉』!?これってあのS級食材だよね!?」
「そうそう。そこで偶々出会った……あ、彼女はミスト。そいつをゲットした森で出会ったんだ。ミスト、こっちはコハル。ゲーム当初からの付き合いなんだ」
「よろしくね!ミストさん」
「……よろしく」

ミストは何故か素っ気なく挨拶する。しかしコハルは気にしていないようで快く台所に迎え入れてくれた。
ミストは早速肉を出して調理し始める。

「ミストさん。もしよかったら私にも手伝わせてもらってもいいかな?」
「え……?まぁどうぞ……」

ミストはやはり素っ気なく答える。コハルは料理をしながらもミストに話掛けていくが、ミストはあまりコハルと談笑する気はなかった。しかし、ミストは一つ気になっていることがあった。

「ーーなんだけど、ミストさんはどうk「コハルさんってさ」ん?なになに?」

突然のミストからの切り返しにコハルは内心喜びながらも聞く体制にはいる。
何を訊いてくるのだろう。緊張しながらもコハルはミストの方に顔を向ける。

「コハルさんはアヤト君のこと好きなの?」
「……………………ふぇ?」

ミストの一言で一気に顔が赤くなっていくのを感じる。

「えっと……その……なんていうか!その……す、好きっていうか!一緒にいて安心するっていうかさ……その……ってなんで?」
「いや、二人って凄く仲がいいなーって思ってさ。……羨ましいなって」
「ああ!そういうこと!友達として好きってことね!もちろん好きだよ!ミストさんは?」

コハルは笑ってその場を温めようとする。しかしその質問の答えは温めたこの二人の場を凍らせるには十分だった。

「私は好きだよ。友達としてじゃなくて、一人の男性として」

コハルはなんて答えればいいのかわからなかった。そしてそのままミストの顔を見つめる。

「私はアヤト君の事が好き。この気持ちは本物だと思う」
「私は……アヤトのこと……」
「コハルさん。私、この気持ちだけは誰にも負けない」

それからは二人は喋ることなく料理を作りあげた。

「おう、待ってたぜ!こいつはグラタンか?」
「そうだよー。現実世界で食べたことがあるんだけどすっごく美味しかったんだよね!向こうでは普通の鴨だったけど、こっちのはS級食材の『フォレスト・ダック』だからもっと美味しくなってると思う!」
「で、こっちのはソテーか?」
「う、うん。ミストさんがグラタンを作ってたから洋風の方がいいかなーって思ってね……」
「ん?どうした?なんだか元気がないように見えるけど」
「う、ううん!そんなことないよ!」
「そうか?じゃあ二人とも席に座って食べようか」

俺たちは早速『フォレスト・ダック』料理を口に運んだ。先ずはグラタンから。中には洋梨のような香りのする果物が入っており、肉のこの感じは……

「なぁミスト。これは照り焼きか?」
「そうだよ!正確には照り焼き風だけどね!……どうかな?」
「ん?めちゃくちゃ美味いよ。ミストって本当に料理できたんだな!」
「料理ぐらい私だってするよ!」

ミストは膨れながらも嬉しそうにする。俺はそれに気付かず、料理を満喫する。
なんとも懐かしい味付けだ。照り焼きか……うーん2年ぶりだもんな……。ジーンと照り焼きが染み渡っていた。
そして、ソテーの方も手を出していく。

「(アヤト君、コハルさんのソテーには何も言わないんだ)」

ミストはそんな事を思ってると食後のコーヒーを貰って飲む。時計を見るともう10時を過ぎていた。

「あ!そろそろ帰らなきゃ!コーヒーごちそうさま。またね!」
「お、おい!待てミスト!もう遅いし、送っていくよ」
「え?いいの?」
「ああ、こんな時間に女の子を一人で返せないしな。ちょっと行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい」

コハルの宿屋から外に出て二人で歩いていく。ミストの借りている宿屋はここから2下の層にあるらしい。大した会話はせずにただただ歩く。

「アヤト君……はさ」
「ん?どうした?」
「コハルさんのことどう思ってる?」
「コハルの事?どうして?」
「いや、何となくだけど……気になって」
「そうだな……コハルはなんて言うのかな……安心ポイントっていうか、いい奴だよ。それに……」

俺は空を見上げる。が、アインクラッドには空はない為星など見えないのだが。俺は目を細める。

「最初に『はじまりの街』で思ったんだ。俺が信じらるのはコハルだけかなって。コハルを守れるぐらい強くなりたいってな」
「!!」

ミストの中で衝撃が走った。それと同時に心が締め付けられるように辛かった。なんだろう、この気持ちは。

「まぁ今じゃあ信頼できる仲間は増えたし、コハルも血盟騎士団ってSAOの中でも最強のギルドにいるから安心だけどな」

アヤトは笑ってみせる。しかしミストにはそんなアヤトの顔も何だか寂しそうに見えた。ミストはより一層強く心が締め付けられるようだった。それが原因かわからない。わからないが、頬に冷たいものを感じた。ミストは直ぐにそれが何か理解する。ああ、そうか……この二人はこんなにも……。

「で、ミストは何でいきなりそんな事をーーってミスト?どうした?」
「ごめん。私もういくね。ここまで送ってくれてありがとうアヤト君」
「え?いやいや、まだ転移門にも着いてないぞ?せめて転移門前までーー」
「ううん大丈夫。 心配してくれてありがとう。でもいいんだ。ちょっと一人になりたいから……あはは、ワガママ言ってゴメンね!それじゃ!」
「お、おいミスト!」

ミストは小走りで去っていった。アヤトはミストの去って見えなくなるまでは見送ろうと思い、去っていくのを見ていた。

「一人になりたい……か」

アヤトはそう呟くと、Uターンしてコハルの宿屋に戻った。















「『フォレスト・ダックの肉』を食った!?」
「『ラグー・ラビットの肉』を食った!?」

場所は50層のエギルの店の中。その中で俺とキリトの声がこだまする。

「ちょっ!?《ラグー・ラビット》ってS級食材の一つだよな?なんで教えてくれなかったんだよ!」
「それはこっちのセリフだ!《フォレスト・ダック》だってS級食材だろ!?教えてくれても良かったんじゃないか?」

むむむ、とお互い睨み合う。店主のエギルとしてはどちらも食べられなかったので羨ましそうな、悲しそうな顔をしている。

「もういい!こうなったら決闘で勝負だ!この怒りは決闘でじゃないと治らない!」
「おう!望むところだぜ!決闘でぶっ倒してやるよ!」

それを見ていた女性陣は冷めた目で戦闘狂二人を見ていた。それもそのはずである。羨ましすぎる→じゃあ決闘だ!(???)
まるで意味がわからんぞ!と突っ込みたくなるのは当たり前か。
アヤトとキリトは外に飛び出した。コハルとアスナはその後をついていく。

「……いいなぁ」

エギルは4人が去っていった先を見つめながら呟いた。



「ここでいいか!」
「ああ!方法は初撃決着モードで……さぁ送ったぞ!承認してくれ」
「おっし!承認っと……さぁカウントが始まったぜ!」

試合開始までのカウントダウンが始まる。するとコハルとアスナが到着する。

「あ!カウントダウンがはじまってる!……アスナはどっちが勝つと思う?」
「うーん……わからないな。これまでキリト君とアヤト君ってデュエルしたことあったっけ?」
「ううん。私も見たことないよ。初めてじゃないかな?」
「そうだよね。どっちが勝つかなぁ。でも、やっぱりキリト君じゃないかな?」
「アスナはキリトさんか……」
「コハルはやっぱりアヤト君?」
「え!?うーん……そうだね。私はアヤトが勝つと思う!アヤト!頑張れー!」
「キリト君も頑張れー!」

カウントダウンが残り5秒になる。4、3、2、1
俺とキリトは肩の剣のグリップを強く握る。そして、カウントは0となった。
その瞬間俺たちは全力で斬り込む。パワー、スピードはほぼ互角。キリトは横薙ぎに、俺は縦斬りに攻撃する。二人の剣がぶつかり合う。二人の剣戟は徐々にヒートアップしていく。
「(アヤトのやつ、本当に強くなったな……一緒に戦い続けて薄々感じてたけど、こうやって面と向かい合うと分かる。凄まじい威圧感と重い一撃。アヤトがどんな気持ちで戦ってきたのかがわかるみたいだ)」

二人の剣は一歩も譲らず、針の穴に糸を通すかのごとく一瞬の隙を見つけてはそこを突くように戦っている。

「二人はなんでソードスキルを使わないのかしら?」
「ソードスキルはどうしても使うときに一瞬のタメが必要だし、使った後の行動不能状態が二人にとって格好の餌食になってしまうからじゃないかな」

その通り、デュエルにおいてソードスキルは奥の手だ。しかし、デュエル初心者ではよくある間違いは開始早々のソードスキルの発動だったりする。これが通用するのは防御力が高い相手で、俺やキリトのような攻撃特化には躱され反撃でやられてしまうのだ。

「(キリトのやつ本当に強いな。俺もキリトに負けないぐらい強くなったつもりだったがそれでもまだあいつの方が強いとか。……でも、俺は負けないぜ!)」

俺はキリトの剣を弾き距離を取る。そして腰を落としてタメる。キリトは驚く。まさかここでソードスキルが来るとは思わなかったのだ。しかし、すぐさま構え直し躱す準備をーーってあれ?
なんとキリトもソードスキルのタメに入ったのだ。
なるほど、キリトもこの一撃に全てを賭けるってことか。いくぞ!

「キリトオオオオオ!」
「アヤトオオオオオ!」

同時に発動した《ヴォーパル・ストライク》はぶつかり合う。そして試合終了のブザーが鳴るとお互いのデュエルメニュー欄を確認した。
結果はDRAW、引き分けだ。結果を見た瞬間俺たちは膝から崩れ落ち、そのまま仰向けに倒れた。

「はあはあ……あはは」
「あはは……はあはあ」

不意に笑いがこみ上げて来る。

「あははははは!!」
「あははははははっ!!」

俺たちは声を上げて笑い合いあう。何が可笑しいとかじゃない。だけど、笑いが止まらないのだ。
コハルとアスナは不思議そうな顔をしていたが、直ぐに笑顔になり

「いいわよね。男の子って」
「ホントにね」

二人は倒れてる俺たちの元に向かった。 
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