八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百六十七話 破傷風その六
「これがなんだ」
「風に乗せてなのね」
「そうして打った結果なのね」
「だからもうね」
阪神の方もだ。
「わかってるのかな」
「少なくともバースはわかってたのね」
「あの人は」
「だからあそこまで打てたんだろうね」
阪神を日本一にするまでにだ。
「そうなんだろうね」
「じゃあね」
香織さんは僕の話をここまで聞いてこう言ってきた。
「もうこれ以上はね」
「秋はだね」
「勝てないとか」
既に勝てるだけに甲子園の気候つまり地の利を頭に入れて戦っていると仮定するならだ。嫌な仮定だけれど。
「そうなる?」
「そうは考えたくないけれどね」
「それでもよね」
「そうなるね」
「やっぱり阪神秋は駄目なんじゃ」
「ばてるだけ?」
詩織さんは飲みながら首を傾げさせて僕に言ってきた。
「最近は京セラドームも使えるでしょ」
「うん、高校野球の時はね」
「それでばてるって」
「今は交通手段も発達してるしね」
それこそ数十年前と比べると全然違う、だから移動もすぐだし電車の中で寝ることも出来るし遠征先で休める時間も多い、確かにホームの方が落ち着くけれど昔とは状況は全く違うのは事実だと思う。
「昔に比べて疲れてない筈だよ」
「秋もね」
「けれど毎年秋になるとね」
本当に不思議なことにだ。
「阪神の成績は落ちるんだよね」
「優勝した時も」
「それで優勝逃した時も多いし」
これまで何回そうしたことがあっただろうか、秋に逆転優勝とかそうした記憶は少なくとも僕の中にはない。
「そう思うとね」
「疲れてるだけ?魔物がいるっていうし」
甲子園のそれだ。
「高校野球のままね」
「阪神に憑いてるんだね」
「あとさっきバースさんの名前出たけれど」
詩織さんは僕にさらに話してきた。
「日本一になった時にケンタッキーのおじさんの人形道頓堀に入れたのよね」
「そう、バースに似てるって誰かが言ってね」
「それでだったわよね」
「あそこに入れてずっと浮かんでこなかったんだ」
二十一世紀になってからやっと見付け出した、その時の汚れた上下が分かれた姿もネットで話題になった。
「それそのおじさんの呪いでね」
「阪神ずっと優勝出来なかったのよね」
「優勝どころか」
八十五年の日本一から二十世紀の間殆どだった。
「暗黒時代だったよ」
「それってもうね」
「呪いのせいっていうんだね」
「それない?」
「否定する人少ないよ」
阪神ファンの間ではだ、僕は飲みながら詩織さんに答えた。
「実際ね」
「否定出来ないからよね」
「本当に秋弱いし」
それにだ。
「ずっと暗黒時代だったし」
「そう思うとよね」
「もうね」
「魔物にケンタッキーのおじさんね」
「二つの呪いが阪神にはかかっていて」
まさにそのせいでだ。
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