ラジェンドラ戦記~シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
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番外編
その後のラジェンドラ戦記 マルヤム編
前書き
高屋奈月先生の『幻影夢想』というマンガには、最終巻末尾に『その後の幻影夢想』という項目があり、登場人物が物語終了後どの様な人生を送ったかが綴られていました。そういうのってあると結構嬉しいものだし、筆者自身もいろいろその後について妄想したりもするので、まとめて書いてみることにしました。
あと、『アルスラーン戦記読本(角川文庫)』には登場人物の人名事典があり、そこには「作者のつぶやき」という各登場人物についての作者のコメントがあったので、それも真似してみることにしました。
それでは行ってみましょう!
ラジェンドラ…ザッハーク打倒後はマルヤムに渡り、ラジェンドラ一世として、新生マルヤム王国の初代国王となる。王妃ミリッツァとの間に二男一女、側室ラクシュの間に一女を儲ける。ラジェンドラ愛妻王と自称することが多かったと言う。
※筆者のつぶやき こいつ、もうちょっと苦労するべきだよなとの筆者の思いから玉座を追われた悲劇の主人公。と言う感じにはちっとも見えない。むしろ国家の紐付きでなくなったが故に結構自由に立ち回れて好都合だったんじゃないかと思ったりもする。ラジェンドラの語り部分は気を抜くと筆者の地が出てしまいそうになるので、その都度戒めながら書いてました。
ラクシュ…ザッハーク打倒後はマルヤムに渡り、ラジェンドラ唯一の側室となった。王妃ミリッツァへの遠慮から子作りを開始したのが遅かったため、当時としてはかなりの高齢出産となり難産であったようだ。狩猟大祭に時折参加しては弓の神業を披露し、晩年まで弓の腕前は衰えることはなかったという。ただ、残念ながら弓の腕前は子孫には遺伝しなかった。
筆者のつぶやき 当初、ネットのインド人名事典的なサイトから名前をつけようとしたものの、何かしっくりこないので、インド風の名前として最も馴染みのある『天空戦記シュラト』のラクシュから命名。乳兄妹というポジションは決まれど、当初は人物像を全く考えていませんでした。途中から、乳兄妹だけにラジェンドラから多大な影響を受けてるだろうからと愛嬌美人に、今後の展開からファランギースがいなくなりそうなので、代替の弓の名手にすることに。弓の腕前に関しては、定金伸治による歴史小説『ジハード』に登場するロビン・ロクスリーがモデルですね。ただモデルの方は狙いの無造作さ(なのに当たる)が特徴だったのですが、ラクシュは早撃ちという面が強調されたという違いがあります。沖縄人っぽい語尾「~さー」は自然発生的に生まれました。ラクシュの語り部分は、最もNGワードが少なく、実に書きやすかったなあ。作中でアニメ声と描写されていますが、筆者は花澤香菜さんの声をイメージしていました。
ジャスワント…ザッハーク打倒後はマルヤムに渡り、筆頭の将軍としてラジェンドラを支えた。そのクソ真面目さ加減からなかなか結婚できず周囲から心配されていたが、実父マヘーンドラが出入りの商人の娘(シンドゥラ人女性)を紹介し、ようやくカップル成立。ちょっとバカップル寄りのおしどり夫婦になったらしい。
筆者のつぶやき 主人公リスペクトな登場人物ばかりじゃつまらないので、一人ぐらいは主人公を否定的にみる人物を置きたいと思っていました。で、当初敵側のスパイとして登場する彼ならその役回りがこなせそうだと白羽の矢が立ちました。ただ、真面目でチョロい面のある彼には大変な生き方だったかも。それでもまあ、原作よりは幸せな一生だったのでは…。
三人娘…パリザードはバハードゥルとの間に野球チームが結成できるほどの数の子供を産み落とした。ただ、子供の中には意外にも長じて文官になる者もいたらしい。レイラはグルガーンの協力を得てペニシリンなどの抗生物質を作り出したり、産婦人科・小児科の医療技術を向上させたりした。反面、成人男性の診察は適当で冷淡だった。傭兵団時代、美人女医の彼女に診てほしいからと軽傷の患者が殺到してウンザリしたためらしい。フィトナはマルヤムにおける諜者組織の確立に心血を注いだが、過労気味だったらしく、それ程長生きでは無かった。だが、本来浮気性だったはずの夫が自分一筋であったことに感謝しながら息を引き取ったという。
筆者のつぶやき 三人娘をセットで登場させたのは、ハーメルンで連載されていた『ロスタム戦記』の影響ですね。ただ、主人公のことを自分を拾って育ててくれた恩人とは思いこそすれ、恋愛感情は持たせないようにしました。筆者は基本ハーレム主人公は好きではないので。レイラは当初、教師にする予定だったのですが、後にエステルがストーリー展開上大怪我を負うことになり、エステルを助けるため急遽レイラを医者にしました。そんな風に人物像がブレブレだったため、原作通りにタハミーネの娘ポジションに置くことには違和感しか感じず、その為、娘ポジションには人物像が確立されすぎていたラクシュが割り振られることになりました。
ギーヴ…マルヤムに渡った当初は自分のなすべき役割に悩み、各地を放浪することが多かった。旅先でフィトナが過労で倒れたと聞いて駆けつけ、その後は後進の諜者の育成に力を注いだという。
筆者のつぶやき ファランギースがイグリーラスとくっついてしまったために割りを食ってしまったキャラですね。その上、弓の腕的にラクシュの引き立て役にされたり、エステルを変なふうに縛ったり、キシュワードを冷やかしたりと、らしくはあるもののあんまりいい役回りを与えてあげられなかったかなと反省しきりです。彼の原作での蚊に刺されての病死なんてバッドエンドを絶対に回避させたくて、虫除けや蚊帳をラジェンドラに作らせてしまいました。
ミリッツァ…同時代の人物たちの中では最も長生きし、次の世代に平和と安定が引き継がれるのを見届けた上で亡くなった。「筋肉は己を裏切らない」が持論で、子や孫にも筋トレを習慣づけさせたため、新生マルヤムの歴代の王族はほとんどの者がマッチョだったらしい。
筆者のつぶやき 荒川弘版では実に典型的な王族女性って感じでしたが、王族の生き残りがあとたった二人になる中もっとタフじゃなきゃ駄目だろう?いや、二年も籠城したぐらいだからきっとタフだ。そしてマッチョだったんでは?とイメージするようになり、えらく型破りな人物造形になりました。筆者は茅田砂胡先生の二十年来のファンでもあるので、『スカーレット・ウィザード』等に登場する女傑ジャスミン・クーアのイメージも投影されています、って言うかそのもの!?
クバード…ラジェンドラと共にマルヤムに渡った後は北部国境の砦を任された。北方異民族の血を引く娘と彼が結婚したこともあり、異民族からの信頼も勝ち得、彼が存命の間、異民族の侵攻は一切なかったという。彼を脅威に感じた宮廷貴族などからは『北部辺境の王』と揶揄され、彼の権限を剥奪するべきではとの論調が貴族の間で再三高まったものの、ラジェンドラは『クバードは獅子だ。裏切りなどという薄汚い真似をするはずがない』と言い放ち、一切取り合わず信認し続けた。ラジェンドラの言葉を耳にしたクバードはますますの忠誠を誓ったが、決して禁酒までは誓わなかったそうな。
筆者のつぶやき クバードをいつどこで登場させるかについてはかなり悩みました。ジャン・ボダンが早々に退場したことでザーブル城攻めもなくなってしまったし、サームも死んでしまうしで、どんどん出番が先送りされ、結局最終盤での登場となってしまいました。ちなみに第三十三話でギスカールがマルヤム方面との連絡が途絶えていると言っていたのは、クバードがザーブル城近辺にルシタニア兵が近づく度に鏖殺していたせいでした。「宮仕えには不向きな常在戦場タイプの武人」というのが筆者のイメージで、彼を王都で飼い殺ししておくなんて、全くアンドラゴラスも人を見る目がないと思ってました。むしろ国境とかを任せてしまうべきだと思うのですが、意外と器の小さいアンドラゴラスはそこまでクバードを信頼できなかったのでしょう。
後書き
その後のラジェンドラ戦記 パルス編は その内に…。
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