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戦国異伝供書

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第十話 朝倉攻めその四

「あの城を拠点として越前を攻めれば」
「如何に宗滴殿といえど」
「我等に勝てぬ、そして出来るだけあの御仁が率いる軍勢には近寄らず」
 そしてと言うのだった。
「弓矢や長槍、そして鉄砲でな」
「戦いまするか」
「間違ってもぶつからぬ」
 そうして戦うことはしないというのだ。
「間合いを取って戦うぞ」
「わかり申した、そのことも」
「何度も言うがやはり当家の兵は弱い」
 天下で言われている通りだ、そうだというのだ。
「だからじゃ」
「その弱い兵で戦い勝つ為には」
「そうしたもので戦うことじゃ」
 弓矢や長槍、鉄砲等でというのだ。
「だからこの度もじゃ」
「そうして戦われて勝ち」
「越前を手に入れる」
 そうすると言うのだった。
「あの国をな」
「朝倉家を降すのと同じだけ」
「わしはあの国のことを考えておる」
 越前のことをというのだ。
「あの国を手に入れてな」
「そうしてですな」
「どう治めるのかをな」
 このことをというのだ。
「それを考えておる」
「やはりそうですか」
「あの国は八十万石、手に入れればな」
「大きいですな」
「天下統一にさらに進む、そしてじゃ」
 信長はさらに言った。
「越前に確かな城を築きたい」
「そのこともお考えですか」
「そうじゃな、北ノ庄辺りに築き」
 城、それをというのだ。
「北陸の備えにしたい」
「あの地の」
「うむ、上杉家へのな」
「あの家ですか」
「あの家、もっと言えばな」
「謙信公ですな」
「まさに鬼神じゃ」
 謙信、彼の強さはというのだ。
「我等が戦えばどうじゃ」
「勝つのは難しいからこそ」
「確かな城を築いてじゃ」
 越前、そこにというのだ。
「そうしてじゃ」
「あの御仁への備えとしますか」
「そう考えておる」
 まさにと言うのだった。
「わしはな」
「もうそこまでお考えですか」
「そうじゃ、戦の前じゃが」
「ううむ、どうもです」
「どうしたのじゃ」
「それがしまことに不明でありました」
 ここでこう言った平手だった。
「殿がまだ尾張一国を治めるまでもいってなかった頃は」
「随分昔の話じゃな」
「あの時はです」
 どうにもと言うのだった。
「殿がわかっていませんでした」
「ははは、それを今言うか」
「いえ、まことに」
「わしとて安易にわかってはじゃ」
 信長自身がとだ、信長はその平手に笑って述べた。
「敵にわしの考えが見抜かれるわ」
「だからですか」
「あの時もすぐにわかっていてはな」
「よくなかったですか」
「うむ、しかし爺が一番最後にわしがわかったのう」
「その不覚忘れられませぬ」
「父上の位牌に灰を投げた後じゃったな」
 平手が信長を理解したのはまさにその時だった、それまでは信長を庇い続けていたが彼をわかっていなかったのだ。 
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