空に星が輝く様に
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75部分:第六話 次第にその十三
第六話 次第にその十三
「部長が用意してくれてるじゃない。あれ食べたら元気が出るから」
「あれ大きいと思わない?」
「あれ美味しいしね」
星華もそのレモンについて話した。
「食べたら凄い元気が出るし」
「あれのせいよね、やっぱり」
「そうよね」
そして皆ここで話すのだった。
「あれのおかげね」
「甘いくて栄養もあるし」
「そういうことまでちゃんとしてくれてるのっていいわよね」
「本当にね」
そんな話をしていたのだった。厳しい練習の中にもそうした温かいものもある部活だった。そして星華もそんな部活を楽しんでいた。
しかしである。帰るとだ。両親がすぐに声をかけてきた。
「お風呂入れよ」
「あんたが最後よ」
「私が最後なの」
星華は玄関で靴を脱ぎながら家の奥からの両親の言葉に応えた。
「それじゃあ」
「ああ、ゆっくりしろよ」
「それから晩御飯にしなさい」
「晩御飯もう食べたの?」
靴を脱いでそれをなおしながらだ。そのうえで問うたのである。
「もう皆」
「いや、まだだ」
「まだよ」
「何でなの?」
それも問う。そのこともだ。
「何でまだなの?」
「まあ先に風呂に入れ」
「いいから」
「わかったわ。じゃあ」
両親の言葉に従い鞄を玄関のところに置いてそのうえで制服のまま脱衣場に向かった。そしてその制服を脱ぎピンクの清潔な下着も脱いでだ。風呂に入った。すぐに風呂を出てだ。そのうえでちゃぶ台のある部屋に来た。
するとだ。ジーンズ姿の星子がすぐに彼女に言ってきた。
「おかえり、お姉」
「ああ、只今」
「待ってたから」
こう言うのである。
「さあ、食べよう。一緒にね」
「一緒にって」
妹のその言葉に応える。そうして自分の席に座る。おかずは海老フライにキャベツとレタスとトマトのサラダに茄子の漬物、それと豆腐と若布の味噌汁だった。当然そこには白米もある。いただきますをしてから食べはじめる。
その中でだ。星華は両親に対して尋ねた。少し怪訝な顔になっている。
「ねえ」
「んっ、何だ?」
「どうしたの?」
「何で晩御飯待ってくれたの?」
そのことを問うたのである。
「それはどうしてなの?」
「ああ、それな」
「星子が言ったからなの」
だからだというのである。
「それで待つことにした」
「一家全員で食べようってことになってね」
「あんたが」
親のその言葉を聞いてだ。星華は今度は妹に顔を向けた。そうしてそのうえで言うのであった。
「そんなことを」
「だって家族じゃない」
星華はにこりと笑ってこう姉に返した。
「そうじゃない、やっぱり」
「だからなの」
「お姉だってその方が美味しく食べられるじゃない」
そしてこうも言ってきた。
「だからね。食べよう」
「有り難う」
妹への言葉だった。
「おかげで美味しく食べられるわ」
「そう。じゃあ御飯おかわり三杯までね」
「ちょっと待ちなさいよ」
今の言葉にはすぐに突っ込みを返した。
「何で三杯までなのよ。私は四杯でしょ」
「だってお姉食べ過ぎだから。ダイエットしたら?」
「そんなのする必要ないから」
「必要ないっていうの」
「そうよ、ないわよ」
星華はあくまで言う。
「だって今までずっと動いてたんだし」
「けれど油断したらすぐに」
「だからその心配は無用なの」
むっとした顔になっての言葉になっていた。
「本当に今まで部活でへとへとなんだから」
「そうなの」
「そうよ。うちの学校って部活も厳しいんだから」
「勉強だけじゃなかったんだ」
星子はそれを聞いて目をしばたかせながら述べた。
「そうだったんだ」
「そうよ。うちの学校は勉強もスポーツも大真面目なんだから」
「凄い学校なのね」
「そうよ。厳しいわよ」
これを妹に言うのだった。
「あんたも受けるつもりよね」
「うん、そうだけれど」
「じゃあ気をつけなさい。うちは文武両道よ」
既にその八条学園の学生になっている言葉だった。
「凄いんだから」
「私も頑張らないといけないのね」
星子はこのことを実感するのだった。
「じゃあ。勉強だけじゃなくて」
「そうよ、身体も鍛えておかないとね」
「おいおい、二人共八条か」
「また同じ学校なの」
二人の話を横で聞いている両親が笑いながら言ってきた。
「これは本当にトンビが鷹を産んだな」
「そうね。私達の娘とは思えないよ」
「けれど顔そっくりじゃない」
「ねえ」
娘達は笑って両親に返す。
「髪の色はお父さんで」
「顔はお母さんで」
「けれど胸は星子にいったな」
「それと背は星華にね」
「ま、まあそれはね」
「言わない約束で」
それぞれ胸や背の話にはコンプレックスがあるらしい。見れば確かに星華は胸がないし星子は背が低い。確かにそれぞれ分かれている。
「とにかく。お姉」
「ええ」
「私も八条行くから」
これを言うのであった。
「楽しみに待っていてね」
「そうさせてもらうわ。じゃあこれを食べたら」
「勉強?」
「その前にドラマ観るわ」
まずはそれだった。何につけてもそれであった。
「それからね」
「まずはドラマなの」
「それ観ないと。せめてドラマ位いいじゃない」
そんな話をしながら今は一家団欒の時を過ごす星華だった。とりあえず今は平和であった。だがそれがどうなるかは誰にもわからないものだった。
第六話 完
2010・4・6
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