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夢幻水滸伝

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第六十三話 現実世界に戻りその十五

「これ女の子もわかっとかなな」
「男子寮はやね」
「そんなイギリスやドイツの寄宿舎の世界みたいなな」
「美少年の友情と青春の日々はやね」
「夢や」
 はっきりとだ、芥川は言い切った。
「十五少年漂流記が精々や、風と木のとかはな」
「おい、後のそれは出すなや」
 中里は芥川が後に出した作品については顔を顰めさせて突っ込みを入れた。その作品を知っているが故に。
「危ない作品やぞ」
「それでもな」
「夢ってことでか」
「言うたんや」
 そうだとだ、芥川はその中里に返した。
「夢やってな」
「そういうことか」
「そんな奇麗な世界やない」
 男子寮もというのだ。
「小山田いくさんの世界でもない」
「週刊少年チャンピオンやな」
「チャンピオンに描いてた人やとどおくまんや」
 この漫画家の世界だというのだ。
「花の応援団とか他には右向け左や」
「右向けは自衛隊やな」
「そや。もうな」
「そうした世界やってか」
「綾乃ちゃんというか女の子にはわかって欲しい」
「うちが今出て来た漫画や人でわかったのは十五少年漂流記だけやけど」
 ジュール=ヴェルヌの名作だけだというのだ、この作品は元々は小説であるがアニメにもなっている。
「とりあえず華やかで爽やかではないんやね」
「全くちゃうで。同人誌の世界ともちゃうで」
「そうやの」
「もうどうしようもない位にな」
 濃縮された、とだ。芥川は綾乃に言葉の中にこの言葉も含めて話した。
「汗臭くて下品で濃いな」
「それが男子寮の世界やね」
「そや。中東部の時からよお寮に遊びに行ってるけど」
「そうした世界なんやね」
「そや」
 その通りだという返事だった。
「若しボーイズラブとかが好きな女の子が入ったら」
「幻想が打ち砕かれるんやね」
「そうした世界や」
「幻想が打ち砕かれるのは女子寮と一緒やね」
「ほんまにな。まあ異性は好きでもな」
 これは生物の自然な感情なので問題はない。
「幻想は持たんことやな」
「現実は現実やね」
「そや、それを見ない方がええわ」
 芥川はこの結論を出した、そうして綾乃と中里の三人で今度は一年の校舎の中に入ったのだった。こちらの世界での星の者達に会う為に。


第六十三話   完


                  2018・4・23 
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