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レーヴァティン

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第六十八話 女枢機卿その五

「その権威と名声は」
「そうだよな」
「ですが私はです」
 それはというのだ。
「政治とは基本的はです」
「関わっていないか」
「はい、そして」
「そして?」
「私は術と格闘で戦いました」
「格闘も出来るのか」
「そうです、実は身体も鍛えてまして」
 その決して大きくはない、ゆったりとした法衣を着ているが華奢な感じなのが伺える身体で言うのだった。
「それで、です」
「だからか」
「はい、術と格闘で」
 この二つでというのだ。
「戦ってそして」
「巨人達を一人で倒したか」
「そうです、四人いましたが」
「四人の巨人をか」
「倒しました」
「それだけのことをすれば」
 それこそとだ、順一も言ってきた。
「確かにです」
「ああ、功績を認められるよな」
「枢機卿になれるだけです」
 それだけの功績だというのだ。
「まさに」
「そうだよな、巨人はとんでもないからな」
 急に何処からか出て来て暴れる、その脅威はかなりのものだ。
「ドラゴン並にな」
「その巨人達を倒してローマを護ったのならば」
「認められない筈がないよな」
「おそらくですが」
 順一はここでこう考えた。
「ローマ市民から」
「はい、応援して頂き」
 少女もこう言った。
「そうしてです」
「枢機卿にですね」
「教会からも推挙されて」
 市民の圧倒的な支持と共にだ。
「それで、です」
「そうしてですね」
「はい、枢機卿にして頂きました」
 なったのではなかった。
「有り難いことに」
「そうか、それでだけれどな」
「これからですね」
「そこまでの地位になったけれどな」
「この聖堂を出て」
「俺達と一緒に来てくれるか?」
 久志はこう少女に言った。
「今から」
「では他の枢機卿の方々ともお話をして」
「そうしてからだな」
「ご一緒に」
「それじゃあな。ただな」
 ここでこう言った久志だった。
「問題はこのことをな」
「許してもらえるかどうか」
「それが問題だな」
 少女以外のこの寺院にいる枢機卿達にというのだ。
「何人いるかわからないけれどな」
「私を入れて二人です」
「二人か」
「はい、この大聖堂の正規の長と副の方で」
「合わせて二人か」
「私は特別に功績があったので」 
 街を巨人達から護ったそのことであるのはもう既に少女自身が話したことだ。
「それで特別に許して頂きましたが」
「枢機卿になれたのか」
「正の方がこの島での聖職者の叙任権を持っておられまして」
「それであんたもか」
「枢機卿までは叙任出来ますので」
「同じ枢機卿でもか?」
「はい、枢機卿にも階級がありまして」
 教皇の次の位にある紅の法衣を着るこの者達にもそれがあるというのだ。カトリックの聖職者の階級も複雑なのだ。 
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