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結城友奈は勇者である ー勇者部の章ー

作者:あさりん
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新生勇者部、開始!
  風先輩のいない?勇者部

 
前書き
新しい勇者部には、もう風はいないのよね。
樹じゃ頼りないってわけじゃないけど…
やっぱり、なんか落ち着かないのよね。


勇者部御記 神世紀三〇一年
三好夏凜記 

 
「結城友奈、入りまーす!」
「東郷美森、入室致します」
ここは讃州中学の勇者部部室。そこには扉を開いたらすぐ右に長机があって、その机と直線上に重なるように、壁に設置された棚から少しロッカーが伸びている。そして奥についている黒板は、このロッカーで遮られて入口からは見ることが出来ない。
「あ、友奈、東郷、遅かったわね」
「夏凛ちゃん!早いねー!」
この子は三好夏凜。大赦から勇者部に送り込まれた()()()勇者。正式な訓練を受けた勇者としての自負を持ちつつ、勇者部に加入した。煮干しとサプリをいつも持ち歩いている。あだ名は『にぼっしー』人付き合いが苦手で訓練一辺倒な彼女は、最初は勇者部のゆるい雰囲気に馴染めなかったものの、友奈たちと絆を深めていくうち、ただのツンデレとなった。
「誰がツンデレだ!」
「誰に言ってるんですか…夏凛さん」
この子は犬吠埼樹。勇者部唯一の二年生。姉の犬吠埼風が卒業し、後任の新部長として頑張っている。小動物のようで、いつも姉のそばに居ることが多かったが、姉に心配をかけたくないという健気な思いを胸に、たくましさを身につけた。
(ガラガラ…)
「おはおは〜!園子さんちの乃木だぜー!」
乃木園子様。大赦で絶大な権力を誇る乃木家のお嬢様。友達を必ずあだ名で呼ぶ、不思議な雰囲気の美少女。ネット小説を書くのが趣味で、ものすごい支持を得ている。
「今はもう3時過ぎよ、そのっち」
彼女は東郷美森。複雑な過去を持つ。かつてお役目で両足の機能と一部の記憶を失ったが、バーテックスを倒し、その両方を取り戻した。園子様とはかつてのお役目で戦線を共にした親友で、おたがいを『わっしー』『そのっち』と呼び合う。
「そのちゃん!やっほー!」
そして、この子が結城友奈。元気いっぱいで、いつも前向き。東郷美森が隣に越してきて以来、二人はいつも一緒にいる。思いやりがあり、自分をないがしろにしてしまう面がよく見られる。
五人は、黒板の前で集まった。
「これでみんな揃ったね〜」
「あ…そっか、もう風は…」
「入り浸るとか言ってましたけど、なんだかんだ忙しいみたいですからね、お姉ちゃん」
「寂しくなるわね…」
少し落ち込んだ雰囲気になった。元部長の犬吠埼風は、部員をぐいぐい引っ張るのが得意で、みんなもそれに甘えていたのだ。失うには大きすぎる存在だった。
「あ!そうだ!風先輩の高校に行ってみない?」
「だめよ、友奈ちゃん、いきなり押し掛けるなんて…」
「それに、お姉ちゃんに心配かけたくないです…」
樹は、黒板を見つめた。
『讃州中学勇者部は永久に不滅』
『風先輩卒業おめでとうございます!』
『樹ちゃん、新部長就任おめでとう!』
消せる者など誰もいなかった、この黒板のメッセージ。しかし、消さなければ、前に進み出すことは出来ない。
「でも…風先輩はずっと勇者部の一員なんだよ…このまま会えないなんて、私…」
「友奈さん、お姉ちゃんはもう卒業したんです。いつまでもお姉ちゃんに頼ってちゃ、だめなんです」
「樹ちゃん…」
友奈が自分の頬をパチンと叩いた。
「だめだね、私、勇者部員失格だ…もっとしっかりしないと!勇者部ふぁいとー!」
「私も一緒に頑張るわ、友奈ちゃん。ふぁいとー!」
友奈と一緒に、東郷は小さく拳を振り上げた。
「イッつん…カッコイイね〜!輝いてるよ〜!メタルいっつんだね〜!」
「私までメタル化しないでください!」
一方、沸き立つみんなを尻目に夏凛は拳を口に当て、思考を巡らせていた。
(樹…あなたが一番寂しいだろうに…よし!)
「私に考えがあるわ!」  
 

 
後書き
三人称視点の時、サンチョがナレーターを務めてくれています。 
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