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夢幻水滸伝

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第六十二話 東国平定その十

「兵はもう九割方やられたな」
「そうね」
 鈴子と闘っている麻友が応えた。
「そして私達もね」
「ああ、もうな」
「限界かしら」
「気力も体力もな」
「じゃあ一度退く?」
 麻友は術を放って鈴子を牽制しつつ幸田に提案した。
「ここは」
「馬鹿言え、退いてもな」
「もう、っていうのね」
「ああ、次はないんだよ」
 自分達にとってはとだ、幸田は麻友に返した。
「それこそな」
「それじゃあ」
「ああ、退く道はないんだよ」
 これが自分達の現実だというのだ。
「おいら達はな」
「そうよね、やっぱり」
「だからな」
 麻友にあらためて話した、室生とは今は間合いを離してそれぞれの掌を突き出したうえで術を放ってそれの応酬を行っている。
「ここはな」
「最後の最後まで戦うしかないわね」
「そうだよ、しかしな」
「もう、よね」
「限界だな」
 自分の気力体力を感じ取りつつだ、幸田は麻友に言った。
「もうな」
「そうね、あたしもね」
「そろそろ限界だろ」
「あと少しかしら」
 その限界に達するのはというのだ。
「もうすぐ動けなくなりそうよ」
「おいらもな、これじゃあな」
 それこそと言う幸田だった。
「降るのもな」
「仕方ないかしら」
「言うまでもないけれどな」
 ここでこうも言った幸田だった。
「おいら達は勝たないといけないんだよ」
「ええ、本当にね」
「けれどな」 
 大蛇が吐いた強酸の球をかわしてから言った、幸田がそこまでいた場所はドス黒い強酸によって溶けている。
「もう動けなくなったらな」
「それもね」
「出来ないからな」
 そうなってしまうからだというのだ。
「どうしようもなくなるさ」
「そうよね」
「こんな状態だとな」
 室生に氷の術を放ってそれで彼の炎の術を相殺しつつ言った。
「もうな」
「それこそよね」
「ああ」
「あと少し全力で戦えるけれど」
「それで動けなくなったらな」 
 その時はというのだ。
「達磨さんだな」
「そうなるわね」
「あと少し、全部賭けてやるか」
「動けなくなってどうしようもなくなるか」
「勝つか」
 二つに一つ、そうした言葉だった。
「いいな」
「それじゃあね」
 麻友も頷いてだ、そしてだった。
 二人も他の星の者達も必死に戦った、誰もが全力で死力を尽くして戦った。そうして朝日が昇ってきた時に。
 幸田も遂に動けなくなった、その他の星の者達も。綾乃はその彼等を見て言った。 
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