戦国異伝供書
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第七話 長可の修行その八
「ですから」
「そうか、ではな」
「はい、それも一人で向かわず」
「多くでか」
「入れ替わり立ち代わりです」
「攻めてか」
「そうしてです」
秀長はさらに話した。
「絶え間なく攻めていけば」
「あの御仁も倒せるか」
「あの御仁も人ですから」
だからだというのだ。
「何時か必ず疲れます、そしてあの御仁が戦えても」
「兵達がな」
「やがて疲れます、あの御仁一人になれば」
「戦えるものではないな」
「左様です、ですから」
「数で攻めるべきか」
「それも絶え間なく」
これが秀長の考えだった。
「おそらく他には戦えませぬ」
「宗滴殿は倒せぬか」
「あまりにも強いので」
その為だというのだ。
「他には」
「兵の数を使ってか」
「それも槍や鉄砲を使い」
「攻めていくことか」
「幸い武具はこちらの方が上です」
秀長はこのことは間違いないとした。
「当家は足軽も具足がよいですな」
「手も脛もしかと守ってな」
「陣笠も丈夫です、しかも槍は長く弓矢も鉄砲も多いです」
「特に鉄砲に力を入れておるな」
信長がそうさせているのだ、彼は槍を桁外れに長くしてそのうえで鉄砲も実に多くしているのだ。無論弓矢も揃えている。
「そこも朝倉家と違うか」
「あの家はおそらく具足は古いもので」
織田家と違ってというのだ。
「大きく重いですが」
「守りは当家のもの程ではないか」
「特に足軽の具足は」
「そこが大きいか」
「そして槍は短く」
「鉄砲も少ないのう」
「弓矢も。そうした風なので」
それでというのだ。
「尚且つ二万、当家はあちらに普通に十万の兵を向けられます」
「装備のいい軍勢をな」
「これで攻めますと」
「如何に宗滴殿でもか」
「勝てまする、ただ朝倉家は倒せても」
それでもとだ、秀長は兄に話した。
「兄上ならおわかりかと」
「うむ、織田家の敵は朝倉よりもな」
羽柴もそこはしかと答えた、彼もわかっているのだ。
「武田、上杉、毛利とな」
「この三つの家です」
「それが恐ろしいのう」
「この三つの家はそれぞれ相当に強いです」
「それじゃ、当家とて三つ同時に戦えばな」
「兵の数は三つの家合わせたよりも上ですが」
織田家の軍勢はそこまで多い、このことも事実だ。
だがそれでもとだ、秀長は話すのだった。
「どの家もあまりにも強いので」
「一つずつ相手にして降していかねばな」
「なりませぬ、この三つの家を何とかせねば」
「天下統一なぞ出来んな」
「到底」
「そうであるな」
羽柴も弟のその言葉に頷いて応えた。
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