空に星が輝く様に
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457部分:第三十五話 プラネタリウムその十
第三十五話 プラネタリウムその十
「その中で本当に数少なく」
「終わりまでまっとうできたから」
「違いがそういうところからも出ているんだね」
「そう」
その通りだというのである。
「作風もまた違ってる」
「確かにね。太宰は」
赤瀬も太宰は知っていた。何作も読んできているのだ。
「独特の作風だからね」
「わかりやすい」
「うん。それと比べたら石川は」
どうかというのである。
「やっぱりね。違うね」
「そう。同じ新戯作派といっても」
同じ派閥の作家と言ってもだというのだった。
「そこが違う」
「そうだね、全然違うね」
「そうしたところを読むのもまた楽しい」
それもまた文学の楽しみ方だというのである。
「だから」
「うん、これからそういうところも読んでいくよ」
赤瀬もまた椎名のその言葉に頷く。
「今からね」
「そうして。それで」
椎名はここまで話したところで話題を変えてきた。
「次は屋上」
「プラネタリウムだね」
「そこに行こう。そこは」
「お星様を見るところだね」
「そう。そして」
そこが彼女にとってどういうところなのかもだ。椎名は赤瀬に話した。
「そこに一緒に行くのは赤瀬で二人目」
「僕でなんだ」
「最初はつきぴー」
月美だった。彼女がそうだというのだ。
「それで二人目。私の大事な人と」
「一緒に行く場所なのかな」
「それがそこ」
こう赤瀬に話すのである。
「プラネタリウム」
「そんな場所だったんだね」
「そこに行こう」
その大切な場所にだ。赤瀬を誘うのだった。
「そうしよう」
「うん、それじゃあね」
こうしてであった。二人もまたそのプラネタリウムに向かうのだった。その時陽太郎と月美は。彼等もまた二人の時間を楽しんでいた。
二人は今月美の家にいた。そこでだった。
陽太郎は月美の作ったお菓子を食べていた。それは。
「いいなあ、このお菓子」
「美味しいですか?」
「うん、かなり美味しいよ」
実際にそうだと話す陽太郎だった。
「っていうかさ」
「っていうか?」
「月美って料理の才能あるよな」
そのお菓子は見事なオレンジのケーキである。オレンジと生クリーム双方の味わいを楽しみながらだ。陽太郎は月美に話すのであった。
「凄くさ」
「い、いえ私はそんな」
「だって美味いから」
「美味しいからですか」
「美味しいものを作られる人ってさ」
そのこと自体がどうかというのである。
「そのまま。料理の才能があるってことじゃないか」
「そうなりますか?」
「なるって。じゃあ聞くけれどさ」
「はい」
「まずいもの作る人って料理の才能あるって言える?」
かなり率直にだ。こう月美に問うた。
「そういう人って。月美はどう思うんだよ」
「やっぱりそれは」
そう問われると返答は僅かしかなかった。それでだ。
月美はその返答を選んだ。まさにそれしかなかった。
「やっぱり」
「だろ?そういうことだよ」
陽太郎はケーキを食べ続けながら話す。オレンジの甘酸っぱさと生クリームの優しい甘さがだ。絶妙のハーモニーを醸し出している。
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