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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica18突撃! 隣のお宅訪問!~Surprise Visit~

†††Sideフォルセティ†††

オットーやイクスの作ってくれたお昼ご飯を美味しくいただいて、「ごちそうさまでした!」をした後は、「今日はどこへお出かけするのです?」って尋ねたイクスと一緒に、新しいトレーニングウェアやシューズなどの備品を買いに行く店を決める話し合いだ。

「狙われてるヴィヴィオを、予定も立てずに連れ回すわけには行かないからな」

「ホントご迷惑をお掛けします。わたし1人の所為で大げさな会議まで開いていただきまして・・・」

そう言って長い食卓に額をコツンと当てるヴィヴィオ。最後の大隊っていう犯罪者の集団が、聖王女オリヴィエのクローンだっていうヴィヴィオを狙ってる。あと、ついでかもだけど魔神オーディンのクローンである僕や、古代ベルカ史で有名な冥府の炎王であるイクスも何気に狙われてたりする。

「そんなこと気にしなくて良いの。子供は子供らしく、大人に頼りなさい。んで、お店の事だけど、中央区アヴァロンのカーリオン・アインカオフス・ツェントルムがお勧めね。カーリオンっていうエリア内にあるショッピングセンターで、自治領内で最も大きく、買えない物は無いっていうくらいに品揃えが豊富」

「あぁ、あそこは子供の頃によく通ってたよね。結構歴史があるけれど、年代や流行に合わせて品物が入れ替わってくれるし、子供が通ってもお小遣いで買える品物も多くあるし」

「近くには本格的に魔法戦が行える施設もあるから、新しく買ったシューズや服で早速トレーニングってことも出来るよ」

シャルさんとルミナさんとセレスさんが、当時の事を思い出してか笑顔を浮かべた。それを聞いたアインハルトさんが「それは楽しみです!」って目を爛々と輝かせた。

「で? ノーヴェ。店はそこで良いかな?」

「もちろんです! シャルさん達のお墨付きなら文句は無いですよ。それであの、護衛の件なんですけど・・・」

念には念を入れて、管理世界の中でも屈指の実力を誇るシャルさん達に、ヴィヴィオの護衛をお願いすることになってる。もちろんノーヴェや僕たちだってヴィヴィオを護りたい。でもどんな相手が来たって護り切れる、なんて自惚れてない。

「あぁ、それなんだけどね。さすがに全員ってわけにはいかないから、さっきのトレーニングの時にね、ジャンケンで決めたの~♪」

シャルさんがそう言って挙手すると、ルミナさんとトリシュさんが手を上げた。えっと、つまりは「シャルさんとルミナさんとトリシュさんが来てくれる、と?」ってヴィヴィオが尋ねると、3人はグッと親指を立てて、それはもう誇らしげに胸を張って微笑んだ。

「私もヴィヴィオをお守りしたかったのですが。よもや私がグーの中でみんながパーだったなんて・・・」

「しかも1回目で決まったからね。そういう運命だったんだよ、アンジェ」

「これが・・・運命・・・!」

「アンジェ、さすがに大げさ過ぎるぞ?」

クラリスさんにそう言われたアンジェさんがテーブルに突っ伏すと、お父さんが呆れた。でもお父さんも負けたってことだよね、護衛として付いて来てくれないってことは。それにアイリお姉ちゃんも・・・。

「なんというか、すごい人たちが一緒ですね・・・」

「これなら安心してお買い物が出来ますね!」

「うんっ!」

アインハルトさんやコロナの言葉にヴィヴィオが同意。シャルさんとトリシュさんは管理世界屈指の剣騎士と弓騎士だし、ルミナさんは現役を退いたけど拳闘騎士の元パラディンだし。これなら本当に安心して外出が出来るよ。

「それで、いつから出掛ける? わたし達はいつでもOKだけど」

「まぁ早い方がいいですよね。お前ら、外出の用意だ。用意を終えたらエントランスに集合!」

「「「「「はいっ!」」」」」

防寒着を取りに行くため、僕たちはそれぞれ用意された個室に戻ろうと椅子から立ち上がったら、「こちらにご用意しております」って、メイドさん達が僕たちの防寒具を手に食堂に入ってきた。シャルさんが「だと思って、持って来ておいたよ」って言って、メイドさん達に「腕を通させてあげて」って指示を出した。

「フォルセティ様、どうぞ」

僕のコートを持ってきてくれたメイドさんが、腕を袖に通しやすいようにコートを持ってくれて、「ありがとうございます!」ってお礼を言いながら腕を通した。ヴィヴィオ達もメイドさんに防寒具を着させてもらって、準備は整った。

「イリスお嬢様。あの・・・」

「ん? どうかした?」

あるメイドさんがシャルさんに耳打ちすると、シャルさんは「判った。ちょっと席を外すね。みんなは先にエントランスへ行ってて」そう言って食堂を走って出て行った。

「随分な慌てようだったけど・・・」

「重大な一件なら私たちに話すだろうから、私たちは別に知らなくても良いんじゃない?」

「・・・じゃあ私たちはエントランスホールに行っていようか」

ルミナさんに続いて僕たち、それに見送りということでお父さんやアイリお姉ちゃん、アンジェさん達も一緒に来てくれることに。オットーが「ルーツィエ姉様。車を中央館エントランスまでお願いします」って、フライハイト家の使用人を束ねる2人のメイド長の1人で、シャルさん達のお義姉さんでもあるルーツィエさんに通信を入れた。

『イリスからもさっき連絡を貰ったよ。ドライバーは私がすることになったから、安心して搭乗できます、とお客様方にお伝えしておいて』

「判りました。ではお願いします」

ルーツィエさんが車を出してくれることになったみたいで、ルミナさんが「それは嬉しい話だね」って苦笑い。トリシュさんも「戦力を運転手にするのは悪手ですし」って満足げに微笑んだんだけど・・・。

「え?」

「はい?」

シャルさんが運転手じゃないってことを喜んだルミナさんとトリシュさんだけど、喜んだ理由がどうやら違ったみたい。でもトリシュさんは、ルミナさんの理由をすぐに察せられたようで、「イリスの運転技術も十分問題ないから」って苦笑した。

「君らはシャルの運転技術に少し厳しすぎないか?」

「シャルの運転、抜群に上手とは行かなくても普通なんだけど?」

お父さんとアイリお姉ちゃんがそう言うと、ルミナさんは「じゃあさ、イリスの運転で熟睡できる?」って聞いた。お父さん達が少し考えに耽って、「ない・・・かな」って首を傾げた。ルミナさんは続いて、「アンジェの場合は?」って聞くと、「出来る」って即答した。

「そ。その差が結構デカいの。まぁシャルでも良いよ、移動中は寝るつもりはないし。それでもやっぱりさ、心底安心できるプロのドライバーに運転してもらった方が良いよ」

「私はシャルの運転でも眠ることが出来ますけどね」

イクスが若干頬を膨らませながら、ルミナさんたち大人に聞こえない程度の小さな声で呟いた。イクスってシャルさんが本当に大好きだから、ちょっと不機嫌だ。そんなイクスも含めて僕たちは食堂を後にして、中央館エントランスホールへと移動。エントランスの両開き扉の前にはメイドさんが2人居て、「車が到着するまで待ちください」ってお辞儀した。

「久しぶりのお出掛け、やっぱり楽しみだよ~♪」

ヴィヴィオが小躍りしてると、プップ♪って外からクラクションが聞こえてきた。するとメイドさん2人が「階段にお気を付け下さいね」って注意してくれながらドアを開けた。外は快晴だけど、風はやっぱり冷たい。

「おお! すごい、リムジンだ!」

「なが~い!」

「リムジンなんて初めて乗るー!」

「大きいです・・・!」

リオとヴィヴィオとコロナ、それにアインハルトさんまでもが、停車してるリムジンにテンションを上げた。あ、僕も「すげー!」ってテンションが上がる。泊まり初日は、車2台での迎えだったから。あのときの期待が今日叶うなんて思わなかった。ヴィヴィオとコロナとリオが横並びで駆け出して、階段を下りようとした瞬間・・・

「「「へ? ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」

3人が同時に悲鳴を上げて、腰を抜かしたのか尻餅をついた。一番近かった僕とアインハルトさんがその異常にすぐに駆け寄ろうとしたんだけど、僕たちの後ろに居たはずのお父さん達がすでにヴィヴィオ達を護るかのように円形に立って、周囲を警戒してた。

「急に叫んでどうし――うわっ!? ビックリした!!」

尻餅をついたままのヴィヴィオ達にアイリお姉ちゃんが声を掛けた瞬間、アイリお姉ちゃんも叫んで階段から飛び退いた。みんなでなんだなんだ?って階段をよく見ると、一斉に「うわっ!」って声を上げた。階段の踏み面に、人の顔が3つ並んでた。これはさすがにビックリするんだけど・・・。ものっすごい見知った顔でもあった。

「何やってるんだ、お前は!」

「イリス、あなた・・・! 馬鹿!」

3人のうち1人はシャルさんだった。そしてもう2人はというと「もう! ルールー、リヴィ! 何やってるの!?」って、ヴィヴィオが名前を叫んだ。そう、アルピーノの双子姉妹、ルーテシアとリヴィアだった。ルミナさん達も、プライソン戦役の時にアルピーノ家とは見知っているから、「はあ・・・」って安堵とも呆れとも言える溜息を吐いた。

――ケレリタース・ルーキス――

「いぇーい! 大成功~!」

「「大成功~!」」

階段からニュッと出てきたシャルさん達がハイタッチして、ヴィヴィオとコロナとリオの3人をビックリさせた事を喜び合ってた。でもそんなシャルさんの頭に、お父さんの鉄拳が振り下ろされちゃった。

「あいたっ!? むぅ、ちょっとしたサプライズじゃんか~。ルーテシアとリヴィアが訪ねて来るって昨日、連絡を貰ってさ。だったら退屈してるヴィヴィオ達を驚かせて、買い物前にテンションをさらに上げてもらおうかな~って、計画してたんだよ」

「あの、ごめんなさい。私たち、ちょっと浮かれてて・・・」

「ヴィヴィオが狙われてるの知ってたんだけど、喜んでもらえるなら・・・って」

ルーテシアとリヴィアがしょんぼりして、大人の人たちに頭を下げた。そんな2人にヴィヴィオが「もう、驚いたな~♪ ていうか、久しぶり~♪」って笑顔でハグした。するとコロナも「久しぶり~♪」って歩み寄って、リオも続いて「今日はどうしたの~?」って駆け寄った。僕とアインハルトさんは顔を見合わせて、頷き合った後にルーテシアとリヴィアの側に駆け寄った。

†††Sideフォルセティ⇒ヴィヴィオ†††

外出前にシャルさんとルールーとリヴィからのドッキリサプライズに引っ掛かって、割りと本気で怖がらされたわたしは、親友のフォルセティとコロナとリオとアインハルトさん、それにノーヴェは今、ベルカ自治領ザンクト・オルフェンで一番品揃えがいいって言うショッピングセンターへと・・・ふふ、なんとリムジンで移動中なのです!

「ふかふか~♪」

「テレビもあるし冷蔵庫もあるよ!?」

リオはふっかふかな椅子ではしゃいで、コロナは車内をきょろきょろ見回してる。アインハルトさんは「なんか緊張しますね」ってそわそわ。フォルセティは「ここで暮らせそう!」ってニッコニコ。わたしだってリムジンに乗れるなんて思いもしなかったから、「どうしよう、すごいわくわくしてる!」って興奮気味。

「あの、私たちも一緒しても良かったの・・・かな?」

「まさか、ヴィヴィオ達も買い物だったなんて。嬉しい偶然のような、いやしい偶然のような・・・」

わたし達を驚かせた張本人のルールーとリヴィーが、ちょっと居心地が悪そうに座ってる。2人が突然ミッドにやって来たのは、2人ともわたし達のようにインターミドルに出場するための準備として、本格的なトレーニングウェアなどの身の回りの備品を買うためだった。

「それで、ノーヴェやヴィヴィオ達ならその辺のこと詳しいかな、って考えて・・・」

「来たんだけど、シャルさんがどうせなら、面白おかしく再会しようって・・・」

シャルさんをチラッと見るルールーとリヴィー。シャルさんは「いやぁまぁ、もういいじゃん」って苦笑。ルシルさんやアンジェさんに割りと本気で怒られたから・・・。

「そのお詫びとして、今日買った物のお代は全部わたしが持つからさ。遠慮なく、気に入った物があったら買っていいからね~♪」

「あの、良いんすか? まだ正式なスポンサーじゃないのに」

ノーヴェの口から出たある言葉にわたしは「スポンサー?」って小首を傾げて聞いた。

「ん? ああ、シャルさんが今後のチームナカジマのスポンサー・・・の予定」

「「「予定?」」」

「そ。チームナカジマの活動における費用の出資を、フライハイト家が賄おうと思ってね。今日みたく備品の代金や他世界への遠征費用とか、ね。でも・・・」

「あたしが保留にしてもらえるように頼んだ」

シャルさんからのお誘いをノーヴェが何かしらの理由で断った、っていうか保留したとのことで、リオが「えー? なんで~?」って膨れっ面になった。シャルさん家はすっごいお金持ちの超有名な家柄。そんな家がスポンサーになってくれたら、それこそ貧乏活動の心配は無いんだけど・・・。

「遠征の移動費用とか結構かかると思うし、その・・・お金を出してもらえるのは嬉しい事じゃ・・・?」

「まぁヴィヴィオの言うとおり、他のスポーツ同様に格闘技も金が掛かる。が、だからと言って何の実績も積んでない中で、そんな甘い現実を受け入れていいのかって考えた。知り合いだから出してあげようじゃなく、出すに値する選手だから出そう、ってシャルさんに思ってもらえるようなあたし達になりたい」

ノーヴェの考えを聞いたわたし達は「それで良いと思います!」って賛成した。みんなももしかしたら考えてると思うけど、わたし達は正直に言ってまだ始まってもない。今はスタートラインに向かってる最中で、来年のインターミドルで本当のスタート。そこからの活動と活躍で、わたし達はノーヴェの考える実績を積み重ねて、シャルさんから出資をしてもらえるようになる。時間は掛かるけど、たぶんそれが健全な成長だと思う、わたし達チームナカジマにとって。

「よしっ! そういうわけでシャルさん、スポンサーの件はインターミドルの後でまたじっくりと・・・」

「ま、当事者のあなた達がそれで良いと言うなら、わたしはその条件に頷くよ。でも今日はわたしが持つ! で、未来のスポンサーとして、今後とも合宿でお世話になるアルピーノ家の人間である、ルーテシアとリヴィアの今日の買い物の代金も、わたしが払う! チームナカジマと同様、遠慮せずに買いなさい!」

「良いんですか!?」

「おお、太っ腹!」

「もちろん!」

それから、自分が狙われてるって事を忘れちゃうほどみんなと楽しいお喋りが出来て、「カーリオン・アインカオフス・ツェントルムに到着しました」って、運転をしてくれてるルーツィエさんから知らせが入った。

「判った。入り口前にちょこっと車停めて、先にわたし達を降ろしてくれる?」

「了解。買い物が終わる頃にまた連絡をください」

ルーツィエさんは養子だけどフライハイト家の次女(長女はルーツィアさん)だ。だから妹になるシャルさんには普段、砕けた口調で話す。でも今のように使用人としている間は、シャルさんには敬語を使う。メイドさんとしてプロだな~って、すごく感心した。
こうしてリムジンはお店の前の中央エントランス前の通りで一旦停車して、わたし達は他の車が来ないことを確認して、わたし達チームナカジマはルーツィエさんに「ありがとうございました!」ってお礼を述べてから車を降りた。

「それじゃあ案内するから付いてきてね~」

シャルさんを先頭に、わたしを囲うようにノーヴェやフォルセティ達が続いて、後ろにルミナさんとトリシュさんが付いてきてくれる。ストライクアーツはここザンクト・オルフェンでも根強い人気があって、これから行く専門店はフロアの半分を占めてるみたい。

「店は4階にあるんだけど、エレベータ? エスカレータ? それとも・・・」

シャルさんからの提案にわたし達は「階段!」って答えた。格闘家は日々鍛錬の積み重ねなのです。だから上り下りは楽なエレベータとか使わずに、しっかり階段を使って足腰を少しでも鍛えるのがベスト。

「だろうね~♪」

そういうわけで階段を上って4階へと向かう中、「イクス、平気? 疲れたらルミナかトリシュの護衛させるから、エレベータに変える?」ってシャルさんがイクスを気遣った。イクスもチームナカジマの一員だけど、フォルセティと一緒にサポートしてくれる側。ランニングは付き合ってくれるけど、本格的なトレーニングには参加しない。もちろん、それで良いよ。それがイクスの決めた事だから。それもあってイクスは体力が比較的ないから、お姉さんのシャルさんが気遣った。

「平気です。ありがとう、シャル。ヴィヴィオ達も、そんな顔をしないでください。何せ学院はもちろん、家でも長距離歩いて移動しますから」

イクスの言葉には納得するしかない。シャルさんのお家はすごい広いし。普通に暮らすだけでもかなりのトレーニングになるかも。みんなでそう話してたらイクスが「ですね。食堂は中央館にしかありませんし♪」って笑った。

「それに、私もプールでちょくちょく泳いで鍛えてるんですよ? ね、シャル?」

「うんっ。50mなら問題なく泳ぎきれるよね。24秒ちょいだっけ?」

「「「すごっ!」」」

わたしとコロナとリオは口を揃えて驚いた。スタミナもそうだけどタイムもかなり速い。イクスの隠れた努力に驚きながら目指してた4階、ストライクアーツ専門店へと到着。いろんな商品がズラッと並んでいて、ホントにもう目移りしちゃう。

「じゃあルミナはヴィヴィオに、わたしはイクス、トリシュはフォルセティに付いていて。もちろん、アインハルト達にも注意を払う事」

「「了解!」」

鳥肌が立った。シャルさんとルミナさんとトリシュさんの纏う空気がガラリと変わったから。でも、ちょっと浮くかなって失礼な事を考えてもしまう。だけどそんなのは杞憂で、すぐにさっきまでのようにフランクな空気を纏って、「ほらほら、何を買うの~?」って、わたし達をお店に招いた。
 
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