八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百六十三話 秋のはじまりその六
「ああした人なんで」
「経営にも関わっておられないですし」
「それが特になんですよね」
八条家の人間でこれは珍しい、八条家に生まれたらグループの何処かの企業で経営に携わるものだからだ。僕もそうなると言われているみたいだ。
「変わっていて」
「一医師としてですね」
「やってますからね」
「実は八条病院や医学財団の方にです」
「経営側としてね」
「入るかと言われていました」
八条家の人間としてだ。
「そうお誘いを受けていましたが」
「それを断ってですか」
「はい、全て」
「一医師として働いているんですね」
「外科手術がやるべきことだと言われて」
親父自身がというのだ。
「そうしてです」
「今もですね」
「ああして外科医としてメスを持っておられます」
病院等の経営に携わらずにというのだ。
「そうされてます」
「そうだったんですね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「あの方は一族の中では異端とされています」
「確かに今の一族で一人なんですよね」
経営側になっていない人はだ。
「親父のご兄弟の人達も皆ですから」
「経営に関わっておられますね」
「そうなっていますから」
「親父は余計に異端なんですね」
「そうしたお立場ですね、ですがそれはです」
経営者ではなく一医師という道を選んだことはというのだ。
「一つの道です」
「間違っていないですね」
「はい」
そうだと僕に話してくれた。
「経営だけが道ではないですから」
「医師としてメスを持つこともですね」
「止様は現場を選ばれたのです」
医学のそれをというのだ。
「そうなのです」
「それで多くの人の命を救っているんですね」
「そうだと思います」
「そう思うと親父は」
何かと言われていて自分でも言っている人だけれどだ。
「悪い人じゃなくて」
「はい、素晴らしいものを持っておられる」
「そうした人なんですね」
「私はそう思います、ですから」
「僕はですね」
「止様を手本にされて下さい」
自分の親父をだ。
「是非」
「そうですね、自分の親ですし」
「親御さんを尊敬出来る人は幸せです」
「それだけで、ですね」
「はい、世の中にはそれが出来ない人もいます」
親を尊敬出来ない人がいるというのだ。
「よくない親であったりしたら」
「無理ですしね、尊敬することは」
「よき親であるからこそ尊敬されます」
「いい親御さんがいればそれだけで、ですね」
「幸せなのです」
「そうなりますね」
「はい」
そうだというのだ。
「非常に」
「若し自分を尊敬しろとか言う親だったら」
「尊敬出来ませんね」
「逆ですね」
僕でもだ、そんな親は尊敬するどころかだ。
「軽蔑します」
「ですから」
「親父はですか」
「尊敬出来る方です」
こう僕に話してくれた。
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