夢幻水滸伝
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第六十一話 読んでいた夜襲その八
綾乃の術と大蛇の八つの頭から繰り出される炎や冷気といった息の攻撃は激しい、それで容易にはだった。
近寄れない、それで麻友は幸田に下から言った。
「吉君、ここはね」
「ああ、正面から攻めてもな」
「そうそう勝てる相手じゃないわよ」
「わかってるんだよ、しかしな」
それでもとだ、幸田は麻友に返した。
「相手の頭の数がな」
「八つね」
「何処から攻めてもな」
見れば遠藤は今は真上、有島は真下から攻めようとしている。だがどちらの方角にも向いている頭があった。
「反撃されるしな」
「頭も八つあるとね」
「その分見えるところも多いだろ」
「ええ、そして攻撃出来る方向もね」
「だからな」
「もうここはなの」
「一気にな」
今の様にというのだ。
「攻めながら突っ込んでるんだがな」
「弾幕みたいに攻撃が来るから」
「しかもな」
それに加えてとだ、幸田は麻友に話した。
「綾乃ちゃん自身の護りもな」
「凄いわね」
「三種の神器の防御力は尋常じゃないんだよ」
それでというのだ。
「だからな」
「この通りなのね」
「ああ、どうもな」
「攻めきれないのね」
「この通りな、何とか近寄りたいが」
「それでも」
「まずいな」
苦い顔で出した、この言葉を。
「誰か一人でも綾乃ちゃんの懐に飛び込むことが出来れば」
「その時は」
「勝機が見えるんだけれどな」
「そうよね、けれど」
「気候を操ってもな、千歳ちゃんの風水術でもな」
これも使っている、千歳も始終攻撃を仕掛けている。だが大蛇の並のドラゴンとは比較にならないまでの巨体の前にはだ。
千歳の術も思ったよりそれも遥かに効果がない、それで言うのだった。
「あまり効果がないしな」
「不意打ちならまだしも」
「起きて事前に用意されてたらこの通りか」
「流石の強さね」
「ああ、しかしな」
目の前に来た大蛇が口から放った巨大な火球を虎徹を上から下に一閃させて真っ二つにして消してからの言葉だ。
「だからといって諦められるか」
「そういうことよね」
「こっちだって勝つつもりなんだよ」
そう思うが故にというのだ。
「だからな」
「ここはね」
「まだ攻めるぞ、最後の最後まで諦めるか」
「そうしてね」
「戦ってのは最後の最後なんだよ」
まさにその時だというのだ。
「その時に笑っているかどうか」
「笑っていれば勝ちね」
「そうだよ」
こう麻友に言うのだった。
「その時にな」
「それじゃあ」
「とことんまで、もう立てなくなるまでな」
九人全員がそうなるまでというのだ。
「戦ってやるさ」
「最後の最後まで」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
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