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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百六十二話 夏の最後の夜その六

「いいな」
「じゃあ寄付しようかな」
「御前の好きにしろ、とにかくな」
「家のこともだね」
「それも忘れないでな」
 そうしてというのだ。
「やっていかないとな」
「駄目だよね」
「一人ならいいさ」
 一人暮らしならというのだ。
「別にな」
「家族のことを気にしなくても」
「何しろ一人だからな」
 自分だけだからだというのだ。
「だからな」
「もう一人で好き勝手にだね」
「暮らせばいいさ、しかしな」
「家族がいればだね」
「その時はな」
「家族のこともだね」
「忘れたらいけないんだよ」
 こう僕に言ってきた。
「絶対にな」
「そうだよね、やっぱり」
「ああ、本当にな」
「それで僕のこともだね」
「家族、息子だからな」
 それでというのだ。
「やっぱり面倒を見ないとな」
「駄目だって思うから」
「これは絶対だろ」
 もう当然のことだというのだ。
「何があっても忘れちゃいけない」
「そうしたものなんだね」
「家族がいたらな、家族と友達はな」
 この二つはというのだ。
「何があっても見捨てたらいけないんだよ」
「自分がまずくなって切り捨てるのは」
「そんな奴は家族でも友達でもないさ」
 どちらでもないというのだ。
「それこそな」
「そうだよね、やっぱり」
「御前だって裏切られたくないだろ」
 お刺身を食べつつ僕に聞いてきた。
「そうだろ」
「それは誰でもじゃない」
「そうだよな、だったらな」
「自分も裏切るな」
「自分がやられて嫌だったらな」
 そう思うならというのだ。
「もうな」
「最初からするな」
「そうだよ、そうしないとな」
「駄目だね」
「俺だって嫌さ」
 親父にしてもというのだ。
「それに家族と一緒にいると温かいんだよ」
「温かいんだ」
「だからな」
 それでというのだ。
「俺は家庭のことは忘れない様にしてるんだよ」
「温かいんだ」
「御前がいるとな」
「それでだよね」
 ここでだ、僕は。 
 天麩羅を少し食べた、烏賊のそれを。そうしてから一呼吸置いてからお酒も飲んでそうして親父に聞いた。
「いいかな」
「ああ、何でも言えよ」
「何を言うかわかってるよね」
「母さんのことだよな」
 親父は落ち着いた顔と目で僕に言ってきた。
「そうだよな」
「うん、お袋はどうして家を出たのかな」
「俺が浮気性だからって思ってるな」
「今まではね」
「今まではか」
「何か聞いたんだよ」
 本当に今までそう思っていた、どうせお袋も親父のこの破天荒な遊び人ぶりが嫌になって逃げたんだとだ。 
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