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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百六十二話 夏の最後の夜その五

「天才とか言われてるし」
「医者の道も好きだからな」
「それでなんだ」
「こっちはこっちでな」
「好きだからだね」
「どっちもやってるだけだよ」
 遊ぶことも医学もというのだ。
「それだけだよ、俺は」
「親父は両方才能があるんだよ」
 遊ぶことも医学、外科のこともだ。
「だから出来るんだよ」
「それだよ、才能があることだよ」
「才能?」
「人はその分野で才能を発揮すればいいんだよ」 
 笑って僕に言ってきた、今度はお豆腐を食べつつ。このお店はお刺身だけでなくお豆腐もかなり美味しかった。
「それぞれの分野でな」
「それで親父は遊びと外科になんだ」
「神様がそっちの才能を授けてくれてな」
「しかもどちらも好きだから」
「こうして出来ているんだよ、それで人間ってのはな」
「どれか得意な分野で」
「思いきりやればいいんだよ、ただな」
 親父はここで目を真剣なものにさせて僕にこうも言った。
「人として弁えることはな」
「遊んでいてもだよね」
「弁えろよ」
 このことはというのだ。
「絶対にな」
「親父もだね」
「俺だって女の子と遊んでもな」
「人妻さんや彼氏がいる人にはだね」
「そうしたことはわかるんだよ」 
 親父にはだ。
「気配とか目の動きとかな」
「そういうのでだね」
「相手がいるとわかるんだよ、もうその相手への気持ちが完全に冷めていてもな」
 それでもというのだ。
「やっぱりわかるんだよ」
「目とかの動きで」
「相手を裏切る気持ちとかな、もうあんな奴どうでもいいとかな」
「そう思う気持ちがなんだ」
「目には出るんだよ、気配にもな」
 そうしたことにというのだ。
「だからな」
「そこを見てだね」
「そうした相手とは遊ばない」
「それが大事なんだ」
「自分から言う相手はもう最初からだよ」
「遊ばないんだね」
「そうさ、そしてどれだけ遊んで仕事をしてもな」
 その両方に全力を注いでもというのだ。
「ちゃんとな、家を持ってたらな」
「家に帰って家族の面倒を見る」
「そうしないとな」
「親父それは守ってるしね」
 今は親父がイタリアに転勤になって別々に住んでいるけれどだ。
「毎日家に帰ってたし」
「そして家事もな」
「お料理作ってくれてたしお金も入れてくれてるし」
「今もな」
「今はもういいんだけれど」
 このことは苦笑いと一緒に行った。
「別に」
「八条荘の管理人として給料も貰ってるからか」
「うん、だからいいんだけれど」
「まだ十代だろ、子供だからな」
「成人するまでは」
「ああ、いいんだよ」
 こう言うのだった。
「だから貰っておけ」
「そうしていいんだ」
「ああ、嫌ならその分は使うな」
 そうしたことは僕に任せろというのだ。 
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