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夢幻水滸伝

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第六十一話 読んでいた夜襲その二

「やってみる?」
「ちょっと。そこまでは」
「考えてなかったですが」
「準備体操もいいんですか」
「こうした時は」
「そうよ、緊張をほぐすにはね」
 まさにと言う麻友だった。
「準備体操もいいの。何でもはじめる前はね」
「あっ、先輩いつも準備体操してますね」
「本当に何かされる前に」
「そうしてね」
 麻友は二人にさらに話した、千歳は今は宮子の頭の上に乗せてもらっていてちょこんとした感じで座っている。
「身体をほぐして暖めておくの」
「そうすれば怪我をしないからですか」
「だからですか」
「そうよ、金田正一さんだってね」
 あの四〇〇勝を達成した伝説のピッチャーだ、短気だが豪快で人情のある性格でも人気を博していた。
「いつも準備体操をしてたのよ」
「何かをする前に」
「だからですか」
「緊張してる時はね」
 今の二人の様にというのだ。
「そうしてね」
「身体をほぐして」
「心もですね」
「そうしてね」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 二人は麻友の言葉通りにその場で準備体操をはじめた、幸田はその二人を見つつあらためて一同に話した。
「緊張し過ぎないのはいいことだよ」
「そうよね、今は」
「それで失敗したら元も子もないしな」
「ええ、相手に気付かれたりしてね」
「綾乃ちゃんは強い」 
 この現実を言う幸田だった。
「もう気付かれて事前に備えられたらな」
「あたし達九人で攻めても」
「一気に勝つのは難しい」
 麻友に真剣な顔で話した。
「それこそな」
「だからだ、緊張はほぐしておけ」
 日毬も言った。
「動けなくなるよりいい」
「はい、それじゃあ」
「体操もしています」
 二人共頷き実際にその場で軽く準備体操をはじめた、千歳は宮子の頭の上でそうしている。今はそこが活動の場所だった。
 その二人を見つつだ、幸田はさらに話した。
「それじゃあな」
「はい、今から」
「船に乗ってですね」
「行くか」
 戦、それにというのだ。
「そうするか」
「狙うは姫巫女さんの首一つ」
「我等で」
 遠藤と有島が応え他の面々もだった。
 用意が全て整うと空船に乗った、空船は彼等と三千の精兵を乗せてそうして低空で一気に綾乃がいる関西の軍勢の本陣に向かった。
 この頃綾乃はその本陣で寝ていた、その傍には大蛇がとぐろを巻いて寝ている。だが八つの頭のうち一つはだった。
 起きていた、それでその頭がぴくりと鎌首をもたげて言った。
「遂に来たで」
「来たか」
「こっちに向かってるか」
 他の七つの頭も目を開いてそれぞれ言った。
「そうやねんな」
「この本陣に」
「そや、感じるやろ」
 起きていた頭は他の頭に問うた。
「自分等も」
「ああ、感じるわ」
「空船に乗って来てるな」
「数は三千か」
「強い気が九つあるな」
「間違いない、連中は来てる」
 起きていた頭はまた言った。 
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