夢幻水滸伝
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第六十話 兵達の慢心その十一
「水戸に行く、そしてだ」
「武者小路君や有島君も」
「水戸に来てもらう」
彼等も転移の術を使ってというのだ。
「そうしてもらう、ではな」
「それではなのね」
「ああ、仕掛けるのは明日の夜だ」
その時にというのだ。
「敵も出陣した、それならな」
「もう今こそ仕掛けて」
「そしてな」
「紫先輩を一気に攻めて」
「勝つからな」
「わかったわ」
麻友は幸田の言葉に確かな顔で応えた。
「それじゃあ明日の夜ね」
「やるからな」
「いよいよこの時が来たのね」
「そうだ、もう相当やられてるけれどな」
それでもと言う幸田だった。
「それも明日までよ、明日になれば」
「形勢がうって変わって」
「おいら達のものになるのよ」
戦局、それがとだ。幸田は笑って話した。
「それで後は攻めて攻めてな」
「都まで攻めるか」
「綾乃ちゃんを捕らえてその場で降らせることも出来る」
勢力ごとだ、それも可能だというのだ。
「それだけ総大将をやっつけるってことは大きいからな」
「本当に大勝負ですね」
千歳は緊張した顔で言った、今は麻友の掌の上にいる。そうして話す様子はまさにコロボックルである。
「今回は」
「ああ、しかしな」
「それをですね」
「あえてしてな」
「勝つんですよ」
「そうよ、確実に勝つ博打をな」
「やるんですね」
「博打ってのは賭けるんじゃないんだ」
幸田はその持論も話した。
「武者小路も言ってるだろ」
「どうしたら勝てるか、勉強してからですね」
「挑んで遊んでな」
「勝つものですね」
「そうよ、丁半だって花札だってそうだ」
この世界にもあるそうした日本古来の賭場で行われるものもというのだ。
「賭場の丁半なんて大抵あれだろ」
「イカサマしてますよね」
「賽子の中に鉛入れたり軒下に細工してる奴が隠れてたりな」
「そこを見抜いてですね」
「逆手に取ってな」
そのいかさまをというのだ。
「勝つんだよ、もっともいかさまを見抜いたらな」
「それを言うこともですね」
「ありだした」
「よく時代劇でもある場面ですね」
「それをしてもいいしな」
「とかく博打はですね」
「ああ、何も用意しないで勉強しないで向かってもな」
よくあることだ、これで身を滅ぼした者も多い。
「負けるだけなんだよ」
「だからですね」
「ああ、そうだよ」
それ故にというのだ。
「博打だってな」
「事前にですか」
「勉強してやるものだよ」
「だから一か八かはですね」
「やるものじゃないんだよ」
千歳に真面目な顔で話す幸田だった。
「奇襲だってな」
「そうですね、言われてみますと」
「成功する奇襲はちゃんとわかってやってるだろ」
「北条氏康さんにしろ」
東国なのでだ、千歳はこの戦国大名の名前を出した。戦国時代を彩った重要な大名の一人と言っていい。
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