ベル・クラネルが魔剣使いなのは間違っているだろうか
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8話
ここ最近、街が賑やかに思えてきた。
「ああ、それはきっと怪物祭が近いからだよ」
「怪物祭…ですか?」
「ベルくんはまだオラリオに来て間もないから知らなくてもしょうがないね。まあ、お祭りなんだけどその中で行われるモンスターの調教が目玉なのよ」
モンスターの調教と聞いてベルはとても驚いたような表情を見せた。
「モンスターって調教できるんですか?」
「まあ、ステイタスにそういうスキルがあれば出来るわよ。特にガネーシャ・ファミリアとかは有名よ」
エイナからそんな話を聞いてヘスティアに当日一緒に行かないかと誘ってみた。
「ごめんよ、ベルくん。ちょっと、明日から神会の方に出てそのあと神友のヘファイトスの話とか聞かないといけないから当日は行けないんだ」
「そうですか……」
「まさか、ベルくんがデートに誘ってくれたのに…」
「あっ、いえデートじゃないんですけど。ちょっと気になったので」
ベルにデートではないとはっきり言われたためヘスティアは見るからに落ち込んでいた。
そして、祭当日の日。ベルは一人で歩いていた。
「おーい、そこの白髪頭止まるにゃ」
「……」
白髪頭と呼ばれて周囲を見渡すベル。
(僕のことじゃないよね?)
周りには自分以外の白い髪の人物はおらず、自分ではないと言い聞かせる。
「止まれにゃ、魔剣」
「な、なんでしょうか!?」
やっとの思いで魔剣使いの噂が消えたのにまた噂がたっては困るためベルは自身のスピードをうまく使い、呼ばれた方向へと走った。
「お前、シルが連れてきた魔剣使いだにゃ?」
「あまり、大きな声でその言葉を口にしないでください!」
「まあいいにゃ。ほれ、受けとれにゃ」
渡されたのはどこかの商業系ファミリアの刺繍が入った袋だった。
「これは?」
「シルのやつのにゃ」
「はぁ?それで何でこれを僕に?」
「それをシルに届けてほしいのですよ、クラネルさん」
現れたのは緑の髪に青い瞳を持つエルフの女性だった。ベルは咄嗟に身構えてしまった。
「安心してください。別に私は貴方のことを恨んではいませんし、勿論、憎んでもいません」
「貴女は…」
「私はシルの同僚のリュー・リオンと言います」
リオンと言う姓にベルは驚いた。
「姉の手紙には貴方の事が良く書かれていましたから」
「……そうですか」
(本当に恨んでも憎んでもいないのかな?僕は……)
深く考え込んでいるベルにリューは声かけて話の続きをした。
「アーニャ、それではクラネルさんがどうしたらいいのか分かりませんよ」
「何でにゃ、折角有給とってお祭りに行ったのに財布を忘れていったシルに届けるだけのことにゃ」
「と言うことなんです」
なるほど、でもなんで自分なんだと不思議に思っていると。
「私たちは有給をとっていませんし、お店を離れるとミア母さんに迷惑がかかりますから」
「なるほど、分かりました。これは責任をもって僕が届けます」
「頼むにゃ」
こうしてベルは人波へと消えていった。
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