大阪のつらら女
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第四章
「おかしくないでしょ」
「そうなのね」
「そう、それでね」
「それで?」
「別に悪い人じゃないなら」
それならとだ、真奈は晶子に話した。
「お隣にいてもね」
「妖怪でも」
「いいじゃない?」
これが真奈の意見だった。
「別にね」
「それもそうね。だったら」
「ええ、このままね」
「普通にお付き合いしていくわ」
晶子は真奈にこう答えた。
「そうしていくわ」
「そうしていくといいと思うわ」
「お隣のご主人も悪い人じゃないし」
「ご主人も悪い人じゃないんでしょ」
「何かあの人もかしらって思えてきたけれど」
人間でなく妖怪でないかとだ。
「それでもね」
「もうそれでいいのね」
「ええ、いいわ」
晶子もこう返した、そしてだった。
晶子は氷上さんとそのまま交流を続けていった、そして氷上さんの方からだ。ぽつりと漏らしてしまったのだ。
「今の夏はクーラーがあって溶けなくて助かります」
「あの、溶けなくてって」
「あっ、何でもないです」
「いえ、今のは」
「内緒ですが」
「あっ、私八条大学出身なんで」
晶子は氷上さんにこのことを話した。
「あの妖怪や幽霊の話が凄く多い」
「だからですか」
「こうしたお話は慣れていますし否定もしないですし」
「私が妖怪でもですか」
「人に危害を加えないなら」
「そんなこととんでもないですよ」
危害と聞いてだ、氷上さんは驚いて返した。
「人に何かするなんて」
「それなら別に」
「内緒にしてくれますか」
「はい、それで」
「それなら。ご一緒の方はひょっとして」
「もう気付いてます」
「じゃあ三人だけの秘密ですよ」
こう言ってだ、氷上さんは真奈も呼んでもらってだった。
自分のことを話した、その正体はやはりつらら女で真奈はその話を聞いて頷いた。
「やっぱりそうでしたか」
「それだけですか」
「はい、私も人に危害加えないなら別にいいですよ。私も晶子と同じ大学にいて」
八条大学、そこにだ。
「妖怪や幽霊は信じていますし否定もしないです」
「そのことが本当によかったです。ではこれからも」
「宜しくお願いします」
二人で氷上さんつまりつらら女に笑顔で応えた、ここから三人は親友同士として付き合っていくことになるがそれはまた別の物語である。
大阪のつらら女 完
2018・7・29
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