夢幻水滸伝
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第五十七話 仕掛ける場所その九
「赤とか黄色とか橙色が大好きで」
「まさに宵越しの銭は持たへん」
「江戸っ子そのものなんです」
「何をしても」
「そうだ、よく知っているな」
室生は四人にこう返した。
「そういえば君達は以前東国の傭兵もしていたな」
「はい、そうしてました」
「山陽とか四国とか東海にも行ってましたけど」
「九州にも」
「あと他の国にも」
「私のところにも来たしな」
北陸にもとだ、室生は自分がかつて率いていた勢力のことも話した。
「あの時は助けてもらった」
「いえいえ、こっちこそ」
「よおさん銭貰いましたし」
「ほんま助かりました」
「ええ思いさせてもらいました」
「それは何よりだ、それでだ」
また言う室生だった。
「幸田のその性格からしてだ」
「思いきった攻め方してくるやろね」
綾乃は室生のその言葉に応えた。
「例えば関西の棟梁のうちだけを狙うとか」
「はい、そうしてくることもです」
鈴子はまさにとだ、綾乃に対して言った。
「考えられます」
「それも充分以上にやね」
「可能性として高いです」
「うちを狙って来るか」
「それなら好都合だ」
室生は鈴子の話に鋭い目で述べた。
「姫巫女殿を倒すにはあの九人でも無理だ」
「束になって攻めてもですね」
「神星でも三極のうちの一人で互角だが」
「そうでなければですね」
「神星でも二人は必要だ」
こう鈴子に話した。
「それだけの強さだ」
「だからですね」
「そうだ、あの九人でもな」
「勝てないですね」
「全力、死力を尽くしてだ」
そこまでしてというのだ。
「何とか戦える」
「そして戦う間に」
「そうだ、我々が来られる」
綾乃が九人を一度に相手をしているうちにというのだ。
「そして形成逆転だ」
「そうなりますか」
「いきなり寝込みを襲うか泥酔したところを攻めるか」
室生は東国の側になってそうして述べた。
「それも有り得るが」
「寝込みを襲うにしても」
「大蛇がいる」
八岐大蛇がというのだ、綾乃のすぐ傍にいる神具がだ。
「八つの頭のうち常に一つが起きている」
「だから寝込みを襲うことはですね」
「それは出来ない、しかもな」
「酔うこともですね」
「幸い姫巫女殿は酒に極めて強い」
俗にザルだと言われている、とかく綾乃は酒に極端に強くそれこそどんな酒を幾ら飲んでも酔うことはない。
「泥酔もない」
「ですね、姫巫女さんの強さは」
鈴子も関西に入ってからわかった、綾乃のこの特質は。
「桁が違いますね」
「間違いなく最強のだ」
まさにというのだ。
「酒飲みだ」
「うちは最強の酒飲みやったんか」
「そうだ、そして今はそれがいい」
泥酔しないことがというのだ。
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