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僕のヒーローアカデミア〜言霊使いはヒーロー嫌い〜

作者:瑠璃色
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決着とその後

「ちょっ、そんなのありなんですかァァァ!? オールマイト先生ぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

せっかく、確保テープで轟を無力化したというのに、なんて酷いことを。緋奈は、悲鳴にも似た大声で、オールマイトに訴えかける。

『ハッハッハ! もちろん、オーケーだとも!』

「ふざけんなよぉぉぉ!? 筋肉ダルマァァァ!!」

緋奈は、轟の仕掛けてくる氷の波と、八百万が創り出した幾つもの確保テープを避けながら、オールマイトの悪口を言う。

『筋肉ダル・・・マ。 フッ、ハッハッハ!おじさん、その程度じゃへこたれないぞ! 桜兎少年!!』

「覚えてろよ! 筋肉ハゲ・・・っ!!」

緋奈はそう言い放って、小型無線機を放り投げた。そして、個性を発動する。

「【(爆発)】からの【やr--いっ!?」

氷の波を破壊し、続けて【槍】を具現化させようとしたが、そのタイミングで緋奈の頭を痛みが襲った。 別に大した痛みではないが、一瞬、痛いと感じるのは仕方の無いことだ。

一瞬の隙。普通であれば気づくことのないような少しだけ動きが鈍る緋奈の様子。

ただ、轟と八百万はその頭痛を待っていた。たった3秒の隙。その隙をずっと待っていたのだ。

「この隙を待っていたぞ、桜兎!」

轟は氷の波を左右を塞ぐように放出させ、

「私達の勝ちですわ! 緋奈さん!」

八百万が数十本もの確保テープを放った。

シュルーと伸びた確保テープが、頭痛に意識を持っていかれた緋奈の身体へと向かい、巻きつ--かなかった。 否、その手前で止まった。

「え?」

「は?」

勝ったと思っていた轟と八百万が間抜けな声を上げた。

「だ、大丈夫だった? 緋奈ちゃん!」

と、確保テープが止まった位置から、葉隠の声がした。

「う、うん。 ありがとう、透ちゃ・・・ん。 っていたの!?」

「うん! ずっと緋奈ちゃんの後ろにいたよ!まぁ、小型無線も外したから完全に私のこと轟君たちには見えないからね!」


「という事は、つまり全裸と?」

「うん、そうだよ! ちなみに私は確保認定されてるから、頑張ってね!」

葉隠はそう言って、おそらく親指を立てて、緋奈を応援する。 ちなみに、緋奈は裸に確保テープはなんかイケナイ気がと邪な事を考えそうになったが、後で蛙吹に怒られると思い、思考を切り替える。

「ちっ。 予定が狂ったが、あとは桜兎だけだ。 八百万、もう一度行くぞ!」

「分かりましたわ! 轟さん!」

轟が再び、床につけた足を中心に氷の波を放出させ、八百万が確保テープを放つ。先ほどと同じ戦法。

「2度も同じ手は食らわないよ!」

トン、と床から足を離し、右の掌を確保テープに向け、

「【|《爆発》】&【ロープ】!」

個性を発動する。 それに伴い、両の掌から爆炎が噴出し、確保テープを燃やし尽くす。 さらに同時に出していたロープを八百万に伸ばすとともに、

「まだ終わらないよ! 【重力(止まれ)】!!」

重力の力を八百万と轟に集中させ、動きを完全に封じる。

「ぐっ、・・・動けねぇ」

「や、やられましたわ」

重力によって自由を奪われ、轟と八百万が悔しさに表情を歪める。それに対し、完全に主導権を握った緋奈は、(ヴィラン)顔負けの嘲笑を口元に刻んで、確保テープをビィーと伸ばす。

「へっへっへ。 残念だったね、ヒーロー! これで僕達の勝ちだよ。 フハハハハ!!」

勝ち誇った笑みを浮かべて、轟と八百万の身体に確保テープを巻いた。そしてそれを終えた後に、指パッチンして、二人にかけられていた重力の効果を消す。 そのタイミングで、

『・・・(ヴィラン)チーム、WIIIIIN』

勝利を報せるオールマイトのどこかテンションの低い声が響き渡り、緊張が解けた緋奈はどさりと床に尻餅をつき、

「・・・ち、ちびるかと思った」

勝者にしては情けのないセリフを吐いたのだった。



FコンビとAコンビの屋内対人戦が終わった後、先程まで緋奈達の戦闘が映し出されていたモニターがたくさん置かている待機室に戻った緋奈達が見たのは、隅の方で筋肉の塊こと、オールマイトがしゃがみこんで指で床をなぞっている姿と、それを宥める生徒達の姿だった。

「・・・どういう状況?」

緋奈はそんなおかしな光景に若干、戸惑い気味の表情で呟く。と、背後の方から、

「お前が、オールマイトに言ったことを思い出してみろ」

負けたのにすまし顔の轟がそう告げて、部屋の隅に向かう。

「・・・? なんの話してんの、あの半分君」

緋奈は、意味がわからない。と両手を広げ首を横に振った。

「緋奈ちゃん!多分、筋肉ダルマとか、筋肉ハゲの事じゃないかな?」

確保テープを解いて、手袋とブーツを履いた葉隠が、緋奈の肩をトントンと優しく叩いて、轟の言いたかった答えを教える。

「あぁ、そんなこと。 やれやれ、平和の象徴のくせにメンタルは脆いなんて情けない」

緋奈は、呆れたようにため息をついて、

「オールマイト先生〜! 次に進んでくれませんか〜? 相澤先生に、合理性に欠けるって言われますよ〜! プロヒーローなら時間守らないと〜!!」

絶賛落ち込み中のオールマイトに、早く次に進め。と催促する。その態度に更にダメージを受けてオールマイトは表情を曇らせた。

「ば、バカ! あんまオールマイトのこと弄るなって。図体の割に繊細なんだから!」

切島が緋奈の頭を叩いて、そう告げる。

「チェ。 キリ君がそう言うなら」

ふてくれされた表情で呟いて、オールマイトに謝罪する。

「う、うむ。ぜんぜん気にしなくてオーケーだ! 私は最初から傷ついていなかったからね!そう! あれは君を欺くための演技さ!」

謝ってもらえたことで、いつもの調子に戻るオールマイト。生徒達は、『言い訳おそっ!!』と胸中でツッコミを入れた。

「さて、講評といこう!! それじゃあ、今戦のベストはどっちか分かる人居るかな!?」

「緋奈じゃないんですか?」

切島がそう答えると、

「残念だが、外れだよ、切島少年。 確かに桜兎少年はヒーローから核兵器(ハリボテ)を守りきった。しかし、所々で気を緩める部分が見て取れた。実践では一瞬の気の緩みが生死を分けることもある」

オールマイトは首を振って、そして話を続ける。

「次に八百万少女は、判断力とそれを行動に移すまでの時間が遅すぎる。オマケに作戦通りに動くのはいいが、アドリブに弱い。実践では常に打開策を即座に考え行動しなければならない。逆に轟少年は、判断力やそれを行動に移すまでの時間が早い。ただその分、八百万少女との連携が取れていない。オマケに焦りすぎでもある」

その言葉に、八百万と轟は顔を俯かせた。

「最後に、葉隠少女。 君は自身の個性を上手く使い、奇襲や仲間の救出、そしてその行動に移るまでの判断力と行動力は素晴らしいものだった。初戦のMVPは葉隠少女。 君だ!!」

「え? わ、私!?」

MVPにされると思っていなかった葉隠は、嘘でしょ?、という感じで自分を指さす。

「すげぇな! 葉隠!」

「すごいね! 葉隠ちゃん!」

「おめでとう、透ちゃん」

各々感想を言うA組生徒達。 その中で、爆豪はつまらなさそうな表情で舌打ちしていた。

「この調子で次に行ってみようか!」

オールマイトはそう言って、次の二チームによる屋内対人戦が始まった。



「ふぃ〜。 疲れた〜」

「お疲れ! 緋奈ちゃん!」

「お前の個性凄いよな!!」

「桜兎も爆豪達と同じで才能マンかよ」

屋内対人戦が終わった後、緋奈達は教室で、戦闘訓練の反省や談笑をしていた。

「君達! 折角こうして反省会を開いているのだから、真面目に議論を交わし合い、次につなげるような有意義なものにするべきだ!」

と、独特な手の動きを入れながら制止しようとするのは、眼鏡優等生の飯田天哉だ。

「嫌だなぁ、メガネ君。僕達はまだお互いのこと全く知らないんだからさ、親睦を深めないと。それにヒーローは協力が大切、でしょ?」

「メガ--俺は飯田天哉だ! メガネ君じゃない! だが、緋奈君の言葉も一理あるな。確かに立派なヒーローになる為には、お互いの個性や得意な戦闘スタイル、信頼関係が大切だ。 成程、流石は成績トップ! ありがとう、緋奈君」

「あ、うん(そこまで考えてなかったんだけど、いっか)」

緋奈は若干、引きつった笑みを浮かべて頷く。

その時、遠慮気味に開かれた扉から、指と足に包帯をグルグルと巻き、松葉づえで歩行する出久の姿が皆の目に入ってきた。
 すると、席に着いていた者、立って話をしていた者問わず、一斉に彼の下へ駆け寄っていく。

「おお、緑谷来た!!! お疲れ!! 実技一位とよくやり合ったな!! あ、俺は切島鋭児郎!!」

「私、芦戸三奈! 凄かったよー、緑くん!!」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「俺、砂藤!」
 
「わわ……」
 
 突然押し寄せるクラスメイトに戸惑う出久。彼はこういった体験が皆無のため、嬉しそうに頬を緩める。

「確かに君の個性凄かったよねー」

緋奈はそう言って、みんなの輪の中に入る。彼は、家でいつも一人の為、人が集まるところに入るのが癖になっていた。

「あ、ありがとう。 え、えーと、桜兎・・・君?」

「うん、そうだよ! よろしくねー、出久君」

緋奈は笑って、出久に握手を求める。 それに対し、出久も差し伸べられた手を握り、握手を交わす。

「あ、連絡先交換しよー。 あとは、君と爆発君、半分君と、メガネ君だけなんだー」

「え? もうそんなに交換したの? 早くない!?」

「へへん! こう見えてコミュ力高いですから! って事で、OK?」

「う、うん。いいよ」

出久に携帯を借り、連絡先を交換する。

「ほい、っと。ありがとねー」

緋奈はそうお礼をして、

「連絡先交換しよー! メガ--飯田君!」

「いま、メガネ君と言いかけなかったか?」

「あはは。 気のせいだよ、メガ--飯田君」

「また言いかけなかったか!?」

「それよりも連絡先教えてよー!」

独特な手の動きでそう尋ねてくる飯田に、頼み込む。

「あぁ、構わない。 俺もクラスメイトとは仲良くしたいと思っているからな」

「ありがと〜! メガネ君!!」

「メガネ君と言ってるじゃないか!?」

緋奈は飯田から携帯を拝借して連絡先の交換のために操作する。背後の方から飯田のツッコミが聞こえてるが無視して連絡先の交換の手続きをする。

「これで終わりっと」

連絡先交換を終えて飯田に携帯を返す。

「あとは、爆発君と半分君だけだね。 明日、教えてもらおーっと!」

緋奈はそう決意する。 そして、数十分ほどクラスメイト達と談笑した後昨日と同じ女子グループと共に帰路についた。 
 

 
後書き
またね。 
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