八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百五十七話 お袋のことその十二
「マクベスやヤーゴにもなれば」
「コーデリアやロミオにもですね」
「なります」
悪人にも善人にもというのだ。
「そのどちらにも」
「そうですか」
「私は人間は最初完全な中立だと考えています」
「そして善にも悪にもなる」
「それを書いているからこそシェークスピアは素晴らしいのです」
こう僕に話してくれた。
「イギリスが生み出した偉大な戯作家です」
「だからこそ今も読まれているんですね」
「それも世界中で」
「イギリスの代表的な古典ですね」
「アーサー王と並ぶでしょう」
今度は騎士だ、この作品も確かにイギリス古典を代表していて今も世界中で読まれている作品になっている。
「シェークスピアの諸作品は」
「そうなんですね」
「そうです、そしてです」
畑中さんはさらに話してくれた。
「私はアーサー王も好きです」
「そちらもですか」
「日本では武士道ですが」
「あちらは騎士道ですね」
「騎士道もまた毅然とした誇りがありますので」
「お好きですか」
「はい」
そうだというのだ。
「読んでいて心に届きます」
「僕も読んだことがありますが」
アーサー王ロマンスという本だ、中学の時に文庫本で読んでそれが随分と面白かったのを覚えている。
「あの人は実在なんでしょうか」
「ある将軍がモデルと言われていますね」
「アーサー王のですね」
「多分に伝説が入っています」
「実在の人ではないんですね」
「モデルになった人物はいましても」
「確か五世紀位の話ですね」
「史実でアーサー王がローマ皇帝になったことはなかった筈です」
確かここでのローマ皇帝は西ローマ帝国皇帝だ、ローマ帝国は東西に分裂していて東ローマ帝国がビザンツ帝国だ。
「確か」
「じゃあやっぱり物語ですか」
「円卓につきましても」
アーサー王の話でエクスカリバーや聖杯と並ぶ象徴と言えるこれもだ。
「そうだった筈です」
「そうですか」
「はい、ですがその物語は心としてです」
「イギリス人にありますか」
「ですからイギリス人は今も。特にスポーツでは」
戦いと言っていいこの分野においてはというのだ。
「ルールを守るのでしょう」
「スポーツマンシップですね」
「その発祥の国でもありますし」
「騎士道はスポーツマンシップに入っていますか」
「そうだと思います」
「アーサー王の心が」
「あの独特の皮肉はシェークスピアでしょうが」
イギリスのジョーク等に出て来るこれはというのだ。
「スポーツマンシップはです」
「騎士道で、ですね」
「アーサー王かと」
「そちらですか」
「私が思うに。日本人もスポーツマンシップを守りますね」
「かなり強く守っているそうですね」
世界的にはそうだという、まあ少なくとも審判を買収したりとかそんな真似はすることはしないだろう。
「日本人は」
「はい、それは武士道故でしょう」
「侍ジャパンですね」
僕は野球の全日本のチーム名も出した。
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