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本当の顔

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第五章

「やってくよ」
「そこまでするか」
「どれだけなんだよ」
「というか本当にクールじゃないな」
「今の弓削はな」
「いや、それは違うから」
 クールじゃないと言われると必死に否定する自由だった。
「僕はね」
「クールっていうんだな」
「その状況で」
「そうだっていうんだな」
「うん」 
 その通りだと返す彼だった。
「僕はね」
「だから全然違うからな」
「今の御前クールじゃないぞ」
「かなり挙動不審だしな」
「もう何がなにかな」
「わからない位だぞ」
「そうじゃない筈だから、けれどあの娘はね」
 久子はというのだ。
「本当にだよ」
「告白するんだな」
「何度も何度も」
「そしてそのうえでか」
「交際していく」
「そうしていくんだな」
「そのつもりだよ、僕は絶対にやるよ」
 強い声での言葉だった。
「ストーカーって言われたらそれまでだけれど」
「それでもだな」
「やっていくんだな」
「うん、本当にね」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 自由は熱い調子で久子のところに言ってラブレターを両手に持って差し出してそうしてから彼女に話をした。
「今日の放課後校舎裏に来てくれるかな」
「あっ、告白ね」
 久子は自由のラブレターを受け取って笑顔で応えた。
「それのことね」
「僕君のことが好きだから」
「いや、今告白したけれど」
「駄目かな」
「駄目じゃなくて」
「じゃあ」
「ずっと私のこと見てたわよね」
 久子はにこりとして自由にこうも言った。
「わかってたわよ」
「えっ、そうだったんだ」
「わかるわよ、毎日喫茶店まで来てくれて」
 バイト先のというのだ。
「それで友達にも凄く聞いたから」
「それでだったんだ」
「わかってたわよ。それで今か今かってね」
 久子は自分がどう思っていたのかもを自由に話した。
「待ってたのよ」
「僕の告白を」
「ええ、返事は今からでいいかしら」
「お願い出来るかな」
 是非にという返事だった。
「是非」
「もう言ってるけれどね」
 こう前置きしてから言う久子だった、今二人がいるのは校舎の廊下だが幸い周りには誰もいない。熱くなっている自由もそれを見てラブレターを手渡したのだ。 
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