空に星が輝く様に
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
19部分:第二話 受験の場でその七
第二話 受験の場でその七
「安心していい」
「僕もいるよ」
赤瀬も上から言ってきた。
「だから安心していいから」
「そうなの。安心していいの」
「不安に思ったら負けだから」
そしてこうしたことも言うのであった。
「つきぴーはきっと幸せになれる」
「わかったわ。それで」
「それで?」
「恋人もできればいい」
次に言ったのは恋人であった。学生生活を華やかにするものの一つだった。そうしてそのうえでまた言ってきたのであった。
「つきぴーはお友達じゃなくて彼氏も必要かも」
「けれど」
「けれどは言わない」
今度は少し厳しい言葉だった。
「引っ込み思案が一番よくない」
「そうなの」
「わかったら今から行こう」
「何処になの?」
「ケーキを食べに」
それをだというのである。
「あとは家に帰って二人で」
「二人で?」
「飲もう」
今度言うのはこれだった。
「二人で。合格祝いに」
「お酒なの?」
「お酒は十五歳からだから」
強引にそういうことにしていたがこの八条町は酒に対しては非常に寛容である為にそれでいいのであった。それで椎名も言うのだった。
「だから一緒に」
「飲むのね」
「それじゃあ僕はね」
赤瀬はここで別れるというのだった。手を振って応える。
「これで帰るから」
「そうなの」
「またね」
こう言って実際に足を校門の方にやる。足もまた巨大なものだった。それこそ足一本が小柄な椎名程もあるような圧倒的な質量であった。
そうしてだ。椎名はさらに月美に言ってきたのだった。
「じゃあつきぴー」
「うん、愛ちゃん」
「行こう」
また彼女を誘っていた。
「それじゃあ」
「ええ、じゃあ」
「これで」
こうしてであった。二人は椎名主導で去る。その時だった。
「あっ」
「どうしたの?」
「あの人」
陽太郎に気付いたのである。まだ掲示板を星華と見ている彼にだ。
「あの人も受かったみたい」
「確か」
椎名は彼を見てまた言うのであった。
「隣の席の」
「私の」
「その人だったわね」
「ええ、あの人だったわ」
まさにその彼だというのだった。
「あの人も受かったのね」
「そうみたいね。表情が明るいから」
不合格ならそれで表情は沈みきってしまう。これは簡単にわかることだった。
そうしてだ。さらに言うのであった。
「受かったわね」
「ええ。じゃあ同じ学校になるかも」
「そうかも。それだったらね」
「それだったら?」
「仲良くなれたらいいね」
こう月美に話す椎名だった。
ページ上へ戻る