夢幻水滸伝

「そう考えますと」
「そや、それだけおるんや」
「それならですね」
「九人でいっぺんに綾乃ちゃんに攻めかかかる、けれどな」
「一瞬で倒せないとですね」
「すぐに他のモンが来る」
　綾乃を助けにというのだ。
「そうなる、そやからな」
「安心ですか」
「綾乃ちゃんを一瞬でやっつけよう思うたらあの九人でも相当工夫せんと出来ん」
　東国の星の者達が集まって攻めてもというのだ。
「若し少しでもな」
「姫巫女様が見抜かれれば」
「大蛇でも他の星のモンでもな」
「そうすればですね」
「もうそれで終わりや」
　それこそという口調でだ、芥川は雅にも話した。
「ほんまにな」
「だからですね」
「安心してええ、それで僕等はな」
「暫くでおじゃるな」
　夏目が言ってきた、彼も今は芥川の軍勢にいるのだ。
「対峙するでおじゃるな」
「迂闊には攻めん、若し綾乃ちゃんを攻めたら」
「その瞬間にでおじゃるな」
「向こうには確かな将帥がおらん様になる」
　即ち星の者達がというのだ。
「まさにその瞬間こそがじゃ」
「攻め時でおじゃるな」
「そや、そやからな」
「その瞬間にこそ」
「敵を攻めて一気に江戸に向かうで」
「承知したでおじゃる」
「ただ、江戸の町は傷つけん」
　東国一と言われるあの街はというのだ。
「あの街はそのままそっくり手に入れてや」
「そうしてでおじゃるな」
「その豊かさをそのまま政に活かす」
　そうしたいというのだった。
「東国の他の街も村も港もな」
「そっくりそのままでおじゃるな」
「手に入れてそうしてな」
「東国も栄えさせるでおじゃるか」
「日本全体をな」
　東国を含めてというのだ。
「そうするで」
「そうでおじゃるな」
「何で土地や民を傷付けるねん」
　戦でとだ、芥川は戦はしてもそうしたことについてはただただ害であるとしか思っていない。それがはっきりと出ていた。
「その土地や民を手に入れる為の戦やのにな」
「それはその通りだがや」
　まさにとだ、坂口も同意して応えた。
「戦は何の為にするか、だぎゃ」
「土地や民を手に入れてや」
「勢力を大きくしてだがや」
「やがてこの世界を統一して世界を救う為や」
　それが彼等の戦の目的だというのだ。
「そやったらな」
「戦で民を傷つけるなどだがや」
「アホの極みや」
　それこそとだ、芥川は言い切った。
「そやからや」
「江戸の街もだがや」
「無傷で手に入れる、勿論江戸城も出来る限り攻めん」
　江戸の中心にあるあの城もというのだ。
「出来るだけあの城もな」
「無傷でだがや」
「手に入れる、そうして江戸城は東国統治の拠点や」
　そうするというのだ。
「是非な」
「あの城は確かにです」
「見事な城ですので」
　滝沢と正宗も言ってきた。