八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百五十六話 教会の中その十
「帰ってきていてね」
「詰所にもですか」
「会うのよ」
「そうですか」
「というか会いに来るのよ」
千里さんがいる詰所まで来てというのだ。
「それで小さいとか言うし」
「背のことをですか」
「気にしてるのに。ただその小さいのがね」
千里さんが気にしているご自身の背丈のことをというのだ。
「いいっていうの」
「小柄だからですか」
「そう言うの」
「小柄な人が好きとか」
「そうでないでござるか?」
「そうかしら」
友奈さんとマルヤムさんの指摘にだ、千里さんはどうかというお顔で首を傾げさせてそのうえで答えた。
「私にはね」
「そうはですか」
「思えないでござるか」
「ちょっと以上にね」
そうだというのだ。
「あの子を見ていたら、けれどどういう訳か詰所の人達皆その子を応援してる感じなの」
「応援って」
「間違いないでござるな」
友奈さんとマルヤムさんは顔を見合わせて二人で話をした。
「これはでござる」
「そうよね」
「その子はどうやらでござる」
「ええ、絶対にね」
「何かあるの?」
千里さんは自分達だけで会話する二人にここでも首を傾げさせて尋ねた。
「一体」
「ううんと、何というか」
「直接お話出来ないでござる」
「千里さんが気付いてくれれば」
「それでいいでござるよ」
「ただ気付いてくれたらです」
「そこから素晴らしいことになるでござる」
二人は最後笑顔だった、そして僕もだ。
自然と笑顔になってそのうえで千里さんにこう話した。
「きっと千里さんにはいいお引き寄せですよ」
「その子とのことは」
「はい、絶対に」
「私にはそうは思えないけれど」
ここで気付いた、千里さんはどうもこうしたことについては相当に鈍感というか疎い人なのだと。他の人の心のことにはすぐにしかも的確に気付いてくれる人だけれど。
「何か私にばかり言うし」
「決まりよね」
「完璧でござる」
友奈さんとマルヤムさんはここでまた二人で話をした。
「これはでござる」
「どう考えてもね」
「どうやら中村さんでござるな」
「ええ、そうよ」
千里さんはマルヤムさんが姓を言ったところで応えた、そういえばマルヤムさんのお国のマレーシアやイタワッチさんのインドネシアでは苗字は本来なかったらしい。
「私の名前は中村千里よ」
「では中村さんはでござる」
「気付いたらなのね」
「きっと今よりも素晴らしい人生になるでござる」
「私もそう思いますから」
友奈さんはかなり切実に千里さんに言っていた。
「是非気付いて下さいね」
「そうなの」
「はい、本当に」
「何はともあれです」
ここまで話して気付かない千里さんもかなりだと思いつつだ、僕はそれでもあえて千里さんに話をした。
「その人は信心は確かですか?」
「それがいい加減なのにおみちのことはね」
それはというのだ。
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