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とある3年4組の卑怯者

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153 面会(かおあわせ)

 
前書き
 藤木を取り巻く四人の少女達について、リリィと笹山さんは2話でクラスメイトになり、みどりちゃんと堀さんは28~31話でお互い友達になり、リリィとみどりちゃんは90~91話で、笹山さんと堀さんは94話で、そしてリリィと堀さんは125話で顔を合わせましたね(どれも「ちびまる子ちゃん」の原作・アニメでは絶対実現できない組み合わせです!)。しかし、みどりちゃんと笹山さんは未だこの作品では面識を持っていませんでしたから、今回で顔を合わせる所を描きたいと思います。しかし、アニメでこの二人って顔を合わせた事あったかな? 

 
 藤木は控室に戻ると、瓜原が出迎えた。
「驚いたで。君の演技。本当にわいを超えるなんて・・・」
「いやあ、まあ、僕にはこのスケート以外取り柄がないからね・・・」
 藤木は照れた。その時、住吉が近寄ってきた。
「ふん、おんどれら、調子に乗りおって!!」
「住吉さん・・・。で、でも住吉さんも今三位じゃないですか!結果次第ではきっと銅賞獲れますよ!」
「そんなんやない!なんでわいはおんどれらより下なんが気に食わんのや!生意気な!!」
「もうやめてください!結果は仕方ありまへん!それにわいらも住吉さんの演技も凄い思うてました!!」
「それ、お世辞か!?」
「お世辞ちゃいます!本心です!!」
「ほう!それだけワイを馬鹿にしとるんやな!」
 住吉は二人に殴りかかろうとした。藤木と瓜原は逃げようと思い控室を飛び出した。住吉が追いかける。その時、一人の女子が住吉を止めようとした。
「ちょっと、何してㇽの!?」
「なんや、ワイはこいつらが上の点やったさかい気に食わんのや!」
「だかㇻってそんな事で追い回すなんてアンタは最低よ!気が小さいわね!!」
「何やて!?お前何様や!?わいは六年生や!!」
「そㇾはこっちの台詞よ!私だって六年よ!!負けなㇻ潔く認めなさい!」
「ふん!クソったれが!!」
 住吉は控室に戻った。藤木と瓜原は自分を庇ってくれたその六年生の女子に礼をした。
「あ、ありがとうございます。僕達を庇ってくれて・・・」
「いいのよ、君達凄い演技だったわ。そㇿそㇿ私も本気出すわ・・・」
「・・・え?」
「私はㇼハーサルではわざと地味な演技をしていたけど、あㇾが本気じゃないのよ。どんなのか後で見ててね。一番最後だかㇻ」
 その女子は控室に戻った。
「あの人一番最後ってゆうたわな・・・」
「うん、女子の最後って確か北海道代表の金賞だったね」
 藤木はその女子を思い出した。彼女は北海道大会の金賞者・有子真羽(ありこまう)。リハーサルの時はこれといった凄い演技がなかった。
(もしかしたら古宮さんや美葡ちゃん、黄花さんよりも凄い演技を見せるかも・・・)
 藤木は有子の存在が女子の部の大会を大きく狂わすのではないかと予想した。

 二人は住吉に近づかないよう用心して控室に戻った。その時、山形県から来た東北大会の金賞者・豆尾亮吾が滑っていた。彼の演技は凄かった。リハーサルで見せていた四回転ルッツや佐野以上の高速スピンを披露していた。そして締めは何と四回転アクセルだった。それも失敗することなく綺麗に決まっていた。
「す、凄い!僕達よりも決まっている・・・」
「ああ、せやな・・・」
 藤木も瓜原もお手上げだった。豆尾が滑り終わり、得点が出された。なんと166.59。藤木や瓜原よりもずっと高かった。
(豆尾って人、凄い・・・!!負けた・・・。でもいいんだ。僕には結果的に銀賞だ。世界大会には行けるんだから・・・)
 藤木は豆尾には負けたものの、己のノルマである世界大会出場を確定させる事ができたので満足していた。

 笹山は病院で怪我の検査を受診していた。深かった足の傷は治る傾向にはあったが、まだ歩行は杖がないと上手くできなかった。鋸で切られた傷はみるみる塞がれてはいった。足の傷はとりわけ酷かったため退院後も検査でしばらくは通院することになる見込みだった。自分がまた歩けるようになるのは時間がかかるのは気がかりだが、彼女にとっては藤木が世界大会に行けるかが気になっていた。診察が終わり、笹山は看護師に支えられながら病室に戻った。そして再びベッドで横になる。
(藤木君、頑張ってるかな・・・?あの夢、どうか夢のままでいて・・・)
 笹山は夜中に藤木が大会で失敗に終わり、謝りながら自分から離れて行ってしまう悪夢を見ており、藤木が余計に心配になっていた。その時、ドアがノックされた。
「どうぞ」
 入ってきたのは、笹山が以前藤木を不幸の手紙で嫌っていた時、彼と仲良くしていたあの美少女だった。
「あ、貴方は・・・」
「あの、笹山さん、久しぶりね。堀こずえよ。そしてこの人は私の学校の友達・吉川みどりさんよ」
「初めまして。吉川みどりと申します。 まる子さんや藤木さんのお友達です」
 みどりは笹山の姿を見て美人だと思った。
(この人が藤木さんのお友達・・・。もしかして、藤木さんはこの方と・・・)
 みどりはまさかと考えた。
「さくらさんとも知り合いなの?」
「はい、私のおじいさんがまる子さんのお爺様とお知り合いですから・・・」
「そうなの。私は笹山かず子。宜しくね。ところで二人はどうしたの?」
「藤木君から貴方の学校でテロがあって大怪我をしたっていうから心配になったのよ」
「はい、藤木さんのお友達ならお見舞いにいかなければならないと思ったんです!」
 みどりは張り切って言った。
「ありがとう・・・」
 笹山は礼を言った。
「そうだ、笹山さんの為にケーキ買って来たの」
「ありがとう、堀さん。そうだ、あの時は藤木君にも貴方にも怒ってごめんね・・・」
「ううん、もういいのよ。藤木君と仲直りしてくれたなら私も安心だわ。藤木君のスケート、応援してる?」
「ええ、今盛岡で頑張ってるんじゃないかしら」
「私もよ。藤木君がスケート頑張ってくれてたら私も嬉しくなるわ・・・」
「え?」
「実はその・・・」
 その時、みどりが話に入った。
「辛いお気持ちのなったのは藤木さんや笹山さんだけではありません!堀さんは学校でいじめを受けていたんです!」
「ええ、そうなの!?」
「はい、私だって堀さんと会う前は学校ではずっと友達がいなくて辛かったんです。ですから時々まる子さんの家に遊びに行っていました」
(吉川さん・・・)
「私も笹山さんのご回復をお祈りいたします!」
「え?うん、ありがとう、吉川さん・・・。藤木君も私が入院して凄く悲しんでいたわ。私のために大会に出るのを辞退するって言った事があるのよ」
「そんな!!」
 みどりは悲嘆な声を挙げた。
「でも私藤木君に辞めたらもっと嫌って言ったわ。私やっぱり藤木君にスケートで頑張って欲しい思ってるの」
「わかります。藤木さんのスケートする姿、かっこいいですもんね・・・」
 みどりは勇気を出して続きの台詞を言うことにした。
「私、恥ずかしいんですけど、藤木さんが好きなんです!!」
 みどりは告白した。
「え!!?」
 笹山は驚いた。藤木が自分とリリィに恋している事は知ってはいたが、藤木を好きになっている人がいるとは思いもしなかったのだ。さらに不幸の手紙事件の時は堀に心変わりしているのではと考えた事もあった。
(藤木君を好きになっている人がいたなんて・・・。藤木君はこの吉川みどりさんって人をどう思っているのかしら?)
 堀もみどりの急な告白に動揺した。
(どうしよう・・・。吉川さんが言ってしまった。笹山さんももしそうなら、藤木君に対してどう思うのかしら?)
 堀はどうすればいいのか分からなくなった。それにこれは隠している事だが、自分も藤木が好きだ。藤木との関係が混沌になっている事に笹山も堀も気持ちが複雑になっていた。
「そ、そっか、藤木君、モテるのね・・・」
 笹山は取り合えず笑った。
「そ、そうよ。私も藤木君のスケートする姿、カッコいいと思うわ。地区大会で応援に行った時も凄かったし、ね?吉川さん」
「はい、そうですね!藤木さんが帰ってきたらまた御一緒にスケートしに行きたいですね!」
「そうか、二人は地区大会で見てたのね。私も中部大会で見たわ」
「そうなんですか!?も、もしかして笹山さんも藤木さんが好きなんですか!?」
「え!?あ、その・・・」
 笹山は答える事ができなかった。
「私は藤木君を応援してるだけよ。藤木君にはスケートで世界一になるって目標があるからね」
「私も藤木君ならきっとその目標叶えられると思うわ。それじゃ吉川さん、私達は失礼しようか」
「はい、それでは笹山さん、さようなら」
 みどりと堀は去ろうとする。笹山は堀を呼び止めた。
「あ、堀さん」
「え?」
「いじめを受けていたって?」
「ええ・・・」
「堀さんも負けないで・・・」
「笹山さん・・・。うん、ありがとう。笹山さんも早く怪我治るといいわね。藤木君も頑張ってるから私達も負けないで頑張んなきゃね」
「うん・・・」
 みどりと堀は去った。笹山はその後、みどりが藤木を好きと言う言葉が頭から離れなかった。
(あの子は藤木君が好き・・・。藤木君はどう思ってるのかしら?でも今は藤木君の応援をしよう。ごめんね、答えられなくて。本当は私・・・) 
 

 
後書き
次回:「雪辱(リベンジ)
 スケート大会の女子の部が始まった。様々な出場者が滑る中、黄花の番が来る。黄花は関東大会での美葡への雪辱を目的にリハーサルで見せた三つの技を試みる・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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