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夢幻水滸伝

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第五十三話 東国その十二

「そのせいか」
「ああ、お武家さんは昔からな」
「そうだ、質素倹約を旨としてきた」
「それでか」
「我が家も代々質素に暮らしていてだ」
 それでというのだ。
「私も食事も身の周りのものもな」
「質素にしているんだな」
「その様に心掛けている」
「しかし日毬ちゃんの家は旗本だったんだろ?」
 幸田は眉を顰めさせて彼女の家のことを問うた。
「徳川家が松平家の頃から仕えていて」
「三河時代は小さな村で松平家の下でかろうじて馬に乗られる位だったがな」
「しかし江戸に入ってからは四千石取りだっただろ」
「石高の問題ではない」
 日毬はきっぱりと言い切った。
「そこはな」
「そうなのか」
「そうだ、維新からは警官や軍人を代々出しているが」
「親父さんは都庁にいるんだよな」
「そうだ、そして私は縁あってこの学園に来た」
 そうなったというのだ。
「だが暮らしはな」
「今もか」
「質素を心掛けていてだ」
「寿司もか」
「東京にいた時から殆ど食べていない」
「回転寿司もか?」
「流石にこの世界ではないがそちらもだ」
 起きている世界でもというのだ。
「殆ど食べていない」
「そうなんだな」
「当家は贅沢はしないのだ」
「確か東京のど真ん中に結構な土地持ってたよな」
「四千石の格に相応しい屋敷だった」
「その敷地内にでかいビルがあってな」
「八条自動車東京支社のビルだ」
 日毬の家の敷地内にその企業のビルがあるというのだ。
「その使用料等を貰っているのだがな」
「家の収入は結構だろ」
「それはある、父上も姉上も働いておられて母上も剣道の道場を経営しておられ結構な門弟もいる。尚道場は私が継ぐことになっている」
「裕福だよな」
「収入の問題ではないのだ」
 日毬はサングラスをしたままの顔で幸田に述べた。
「どういった倫理観であるかだ」
「武士の倫理観か」
「それだ、武士の倫理では贅沢は戒めているな」
「それはな」
「それに従ってだ、当家では贅沢をしなくてだ」
「日毬ちゃんも贅沢はしなくてか」
「寿司等は殆ど食べたことがない」
 そうだというのだ。
「回転寿司もな」
「何度聞いても今時珍しい家だな」
「焼き肉等もですね」
 遠藤はこちらの料理を出した。 
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