夢幻水滸伝

「それはな」
「それではだ」
　日毬はその目を鋭くさせて言った。
「狙うは関西の棟梁のだな」
「そうよ、綾乃ちゃんを狙うのよ」
「総大将を狙うか」
「そうして綾乃ちゃんを倒して捕虜にしてな」
「そこで一気に勝つか」
「それで流れを変えてな」
　そうしてというのだ。
「こっちが攻めに移るのよ」
「そうしていくか」
「総大将倒したら首を取らんまでもな」
「うむ、捕虜にしたならばな」
「相手の士気は極限まで落ちる」
　それこそ戦意喪失の域までだ、このことはこの世界でも同じだ。幸田達が起きている世界でも国家元首がそうなってしまえばその国の士気は相当に落ちるだろう。
「それから一気によ」
「関西の勢力を攻めていってか」
「都を奪い取ってやる、そしてな」
「そこで降伏勧告か」
「そうしてやるのよ」
　幸田は日毬に笑みを浮かべて話した。
「最初に乾坤一滴の勝負になるが」
「そこでだな」
「決める、どうだ」
「まさに乾坤一擲だ」
　幸田の言う通りにとだ、日毬は彼に返した。
「敵の棟梁を我々の星の者全員で狙うのだからな」
「そうですよね、吉君らしい戦い方だけれど」
　麻友も日毬に顔を向けて言う。
「まさに乾坤一擲のね」
「賭けに近いな」
「そうした策よね」
「全くだ、紫殿は越後から来るな」
　このことはもう東国側も把握している、関西の星の者の誰が何処にいるのかはもうわかっているのだ。
「では上野での戦いとなるが」
「甲斐、駿河からも敵軍は来ますね」
　麻友は考える顔になり述べた。
「駿河は箱根を越えたり海から相模を狙うから時間がかかるけれど」
「問題は甲斐から来る軍勢だ」
　日毬が問題視しているのは彼等だった。
「芥川殿が率いているが」
「芥川先輩も神星でしかも」
「そうだ、四智星の一人でしかも戦える」
　日毬は芥川のことも話した。
「強い」
「甲斐から武蔵はすぐだから」
　江戸、東国の本拠地であるこの街のあるだ。
「江戸をどうするかですよね」
「江戸は守りの兵を置くのよ」
　幸田は日毬と麻友に絶対の自信を以て答えた。
「江戸の街を守る様にしてな」
「そうしてか」
「守りの兵を置いてなの」
「おいら達は一気にな」
　兵達に江戸を守らせてというのだ。
「九人で綾乃ちゃんを攻める、そうして勝つのよ」
「大胆ね、けれどね」
　武者小路は幸田のその話を聞いて笑った、そしてだった。
　出されている茶を飲んでだ、そのうえで言ったのだった。
「面白い策ね」
「しかも効果がありますね」
　遠藤は武者小路に続いて幸田に顔を向けて言った。
「九人で一人を狙うとなると」
「ああ、相手が神星でもな」
「流石にです」
「勝てるな」
「そう思います、では」
「ああ、これでいっていいな」
　幸田は自分の下にいる八人に問うた。