獣篇Ⅲ
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30 この世には、自分の3人のそっくりさんがいるらしい。
_「戦争を通して学んだことが二つある。1つ目はァ、このままじゃァこの国はテメェら天人に食い尽くされること。2つ目はァ、己があまりにも無力ってことだァ。…それでも護りてェもんがあんだろうてェ、己が変わるしかねェよォ。オラァ、テメェらに勝つために人間止めたのさァ。ただよォ、他の町ァ知らねェがァ、ここは容易く取れると思うなよォ?」
_「オッホホ)頼みの四天王は死に絶え、貴様のみ。一体何ができる、と?」
_「テメェ、今までこの町で何ィ見てきてきやがったァ?かぶき町ォを、嘗めんなよォ?」
_「何だ貴様らッ…!?」
_「待たせたなァ?顔黒爺ィ。」
よっ、待ってましたwwww
_「待ってたぜェ?銀髪の兄ちゃん。」
_「借り、返しに来たって言いてェところだが、どうやらモタモタしている内に、勝手が変わっちまったようだなァ。」
_「察しが良いじゃねェかァ。」
***
_「春雨の名に懸けて…息の根を止めよォォッ!」
だが、無駄だ。出きるはずがない。
援軍部隊は、私たちなのだから。
いや、正確に言えば私が操る、本物の辰羅族の兵士たち、である。
だが所詮は操り人形。負けるに決まっている。
_「留めを差せェェッ!」
案の定、華蛇側の惨敗。
と言っても、もうすでに華蛇しか生きてはおらぬ。
_「殺りおった…ワシらの精鋭を…!こんな下等な猿どもにィッ…!そんな…そんなァ、…!」
_「あ、あれは…、お登勢ッ!」
高笑い。
_「この汚れた町が、斯様な勇ましき顔も持ち合わせていようとは。…覚えてろォ次郎長ォッ…!この借り、必ずや春雨が返すッ!」
_「ま、待ちやがッ…!」
銀時たちが倒れたのを確認して、あとをつける。
平子に父親の元へ向かうように連絡を入れた。
_「親父ィィィッ…!」
どうやら無事に到着したようなので、私はその場を去ることにした。
***
華蛇のあとをつけると、華蛇はもうすでに復讐の準備を着々と進めていた。だが残念なことに、今彼女の側を固めているのは、全員私の操り人形である。
銀時たちの会話を一通り聞いた後、動き出した華蛇に立ち向かう影がいた。
_「このままでは済まさぬ。見ておれ四天王…」
_「待ってましたよぉ?華蛇様ぁ。」
_「お、お主…!?」
_「悪いけど邪魔しないでもらえますかぁ?ようやく親父のあんな顔、見られるようになったのにぃ。」
_「抜かせェェッ!一番の邪魔者は貴様だというのがまだ分からんかァァッ!」
_「もちろん、分かってますよぉ。邪魔者は消えます。ただし、邪魔者を道連れに…。」
_「消えるのは貴様だけじゃァァァッ!」
後ろから銀時。
_「…私の役目は終わりましたぁ。あとは煮るなり焼くなりなんなりと。」
_「殊勝なこったァ。いいのかィ?親父さんとの決着とやらはァ。」
_「もう着きました。兄貴に全部美味しいところ持ってかれちゃったけど…。親父を救ったのは兄貴です。まさか親父まで護るなんて…いや、兄貴だけじゃない。この町の人たちは、いがみ合いながらも互いに抱えあえる強さを持った、素敵な人たちです。奪うだけじゃない…あたしにも、それができれば…。でも、もういいんです。あたしの会いたかった親父は、あたしとお母さんが待っていた親父は…もう、帰って来たから。…兄貴ィ…皆さん…謝るなんて烏滸がましくてできないけれど、これだけは言わせてください…!最後に、親父に会わせてくれて、ありがとうございましたァッ!親父の娘にも、兄貴の舎弟にもなれなかったけど…ほんのちょっとでも、この町の住人にしてくれたこと…嬉しかったです。…どうぞ、落とし前を…」
_「悪いが、泣いてる女シバくほどドSじゃねェんだ。…もう疲れたしなァ…。そこに書いた場所で待ってろォ。傷が癒えたらキッチリ落とし前付けに行く。それまでに泣き止んどけよ。」
こちら側に晋助の格好をした私。
そして向こう側に本物の晋助。
今のところ、鬼兵隊の隊士たちは私たちが手で止めている。アイコンタクトで動き出しの合図をした。
平子が立っている後ろから私たちが現れる。すると(かのじょ)が口を開いた。なるほど、どうやら最初から我々の存在を知っていたらしい。
_「なんだ、やっぱりいらっしゃるじゃないですか。いたなら参加してくださいよ。高…!?」
そうだろう。そりゃあびっくりするわな、二人もおんなじ人が立ってたら。
_「同じヤツが二人いる、ってか?」
と言って、私が仮面を取った。
_「さて、話は後です。まずは華蛇を捕らえる手伝いをしてくださいませ。」
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