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夢幻水滸伝

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第五十二話 東国からの使者その十三

「全て無傷で手に入れさらに発展させる」
「潰れたり荒れた場所を手に入れてもだがや」
「復興に時と予算をかけることは」
 政治を行う者としてはというのだ。
「具策です」
「それで、だがや」
「はい、江戸の街にしても」
 東国の中心であるこの街もというのだ。
「やはりです」
「無傷で手に入れてこそだがや」
「それが最善です、勿論東国の他の場所もです」
 江戸以外のというのだ。
「全て手に入れて」
「そこからだがや」
「発展させます、豊かにして」
「国力も備えるだがや」
「これまで以上に。ですから出来るだけ」
 政治家という職業、宰相として関西の政を司る者としてだった。太宰は淡々とだが強い声で話していった。
「戦はしても国土は荒廃させないでいきます」
「領民には一切手を出さへん」
 芥川はこれは絶対とした。
「武器持って向かって来るなら仕方ないけどな」
「その場合は戦でござる」
 北原が芥川の今の言葉に応えた。
「ゲリラだの便衣だの言われる連中でごわす」
「この連中とは戦うしかない」
 ゲリラについてはこう言い切った太宰だった。
「ほんまにな」
「その通りでござるな」
「けど何もせん領民はな」
「一切でごわすな」
「手に入れた土地の領民は守るべき民や」
 そうなるというのだ。
「そやからや」
「一切手を出さずに」
「守ってくで」
「それが正道でごわすな」
「少なくともこっちの世界の大半はそうした考えや」
 敵国の民も占領してしまえば領民だというのだ。
「そやからや」
「攻め取った後はでごわす」
「治めてくで」
 手に入れたその瞬間にというのだ。
「そうしてくで」
「承知したでごわす」
「それでや」
 さらに言う芥川だった。
「東国も手に入れたらもう一億四千万の人口を擁する様になる」
「一億、大きいのう」
 井伏はその数を聞いてしみじみとした口調で述べた。
「やっぱりのう」
「そうや、しかしや」
「その一億四千万でもでごわす」
「他の勢力と比べたら小勢力や」
 太平洋の彼等とは、というのだ。
「ほんまにな」
「そうじゃのう、アメリカに中国に南洋に」
「中南米もや、中南米なんかアフリカと同盟を結んでや」
 そうしてというのだ、彼等は。
「アレンカールが二つの勢力の盟主になる流れになっとるわ」
「ほう、大西洋を挟んでのう」
 南大西洋をとだ、正岡が興味深そうに呟いた。
「アレンカールさんもやるぜよ」
「正直どの勢力も洒落にならん」
 芥川は真顔で言った。
「数、つまり国力がちゃう」
「どの勢力もぜよ」
「桁違いなまでや」
「一億四千万の人口を持ってもぜよ」
「国力は一番小さいんや、日本がな」
「その日本が勝ち残るにはぜよ」
「正直辛いわ、国力だけではな」
 ここで国力を強調して言った芥川だった。
「勝てんわ」
「国力では、ですね」
 織田は芥川に確かな顔で応えた。 
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